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EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season1 ― 原点 ―  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season1― 原点 ―
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第7章 カフェのシステム障害事件― 信頼のはじまり ―

はじまりは小さなトラブルでも、そこから生まれる信頼は大きな力になります。


この章では、アークシステムズのチームが初めて“ひとつ”になる瞬間が描かれます。

それぞれの得意分野が支え合い、想いが重なっていく時間。


失敗を恐れず、互いを信じて動く――

そんな前向きな空気を感じながら、ゆっくりとお読みください。

午前10時。

アークシステムズのオフィスに、軽快なキーボードの音が響いていた。


たまきは書類整理を終え、画面のチェックリストに目を通していた。

なぎはコーヒー片手にモニターの前で軽く唇を尖らせ、

しゅうはホワイトボードの前でプロジェクトの進行表を確認している。


「今日も平和ですね〜」

凪が椅子をくるくる回しながら言う。


「そう言ってる時ほど、何か起きるんだよ。」

柊が淡々と答え、コーヒーを一口。


「えぇ〜、縁起でもないこと言わないでくださいよ、柊先輩〜」


環は小さく笑いながらファイルを閉じた。

「でも……柊先輩の言葉、よく当たりますよね。

 この前も『そろそろサーバー重くなる』って言ってた翌日、本当に……」


「でしょ?」

柊が少し笑う。

「環はいつも観察が鋭いな。」


「えへへ、見てるの好きなんです。いろんな人とか、動きとか。」


そんな穏やかな会話が続いたその時――


ピコン、と凪のPCに警告音が鳴った。

画面には「通信エラー」の文字。


「……あれ? ネットワーク落ちてる?」

凪の表情が一瞬で変わる。

軽口を叩いていた彼が、SEの顔に戻った。


「柊先輩、これカフェチェーンのPOSサーバーです。

 通信断、原因不明。ログが止まってます。」


「タイムスタンプは?」

「今、10:03。3分前から通信応答なし。」


「環、依頼元の担当者に連絡を取って。

 状況と再現手順を確認してくれ。」


「了解です。」

環はすぐに電話を取り、丁寧な口調で相手に対応を始めた。

その声は、普段の柔らかさから一転して、キビキビとしたリズムに変わっていた。


「……はい、現在ログが止まっており、復旧作業を進めています。

 端末側でエラーメッセージの内容、確認可能でしょうか?

 ……“Code 403 – Access Denied”、ありがとうございます。」


通話を切ると、すぐに柊へ報告する。

「アクセス拒否です。端末は正常稼働しているとのことです。」


「ってことは、VPNトンネル側の認証障害だな。」

凪がすぐに返す。

柊が頷きながら言う。

「凪、ルート証明書の期限を確認。こっちで再発行準備。」

「了解。SSL再署名、5分で上げます。」


凪の指が高速でキーボードを打ち始める。

さっきまで“仔犬”のようだった彼の目が、鋭く光る。


「……やっぱり、凪くんかっこいいですね。」

環がぽつりと呟くと、柊が笑いをこらえながら小声で言った。

「だろ? アイツ、仕事モード入ると別人なんだよ。」


「はい、ギャップすごいです。」

「環もな。さっきまでほんわかしてたのに、電話の時の声、完全にプロだったぞ。」

「え、そうでした? やだ、ちょっと恥ずかしいです。」

「いや、いい意味で。」


2人のそんなやり取りをしている間にも、凪の手は止まらない。


「再署名完了。接続テスト……オーケー。通信復旧確認。」

「早いな。」

「そりゃもう、柊先輩の教育の賜物ですから!」


ちょうどその時、背後のドアが開き、穏やかな声が響いた。


「お、動いたみたいだな。」

柊真とうまだった。


「柊真さん、おはようございます。」

環が立ち上がり挨拶する。

「おはよう、環。落ち着いた対応だったね。」


「ありがとうございます。」

少し照れながら頭を下げる環。


柊真はオフィスを一望し、満足そうに頷いた。

「うん、いいチームだ。

 凪は集中してる時が一番かっこいいし、柊は安定感がある。

 ……そして環がいると、全体がやわらかくなるな。」


凪が笑って「ほら、褒められてますよ、環さん!」と軽口を叩くと、

柊が「凪、調子に乗るな」と軽く肩を叩く。


「ははっ、痛っ! でもほんと、いい感じですよね、このチーム!」

「うん。俺もそう思う。」

柊真が静かに笑った。


その瞬間、オフィスの空気が少し変わった。

温かくて、やさしくて、でも確かに“プロの現場”の空気。


環はモニターのログを見つめながら、

心の奥でそっとつぶやいた。


――ここに来てよかった。

この人たちとなら、どんなトラブルも怖くない。

ご読了ありがとうございました。


チームとしての最初の試練を乗り越えた環たち。

そこには、誰かを信じ、任せることで生まれる“新しい強さ”がありました。


柊の冷静さ、凪の瞬発力、そして環の丁寧な支え。

三人の調和が、確かな信頼の形になり始めています。


次章では、仕事の中に潜む“もうひとつの感情”が、

ゆっくりと環の心を揺らしていきます。

どうぞ、温かい目で見守ってください。

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