双子の繋がり?
ラルセル目線です。
『ちょっと不味いことになった』
セドリック兄さんがそう言って俺の部屋に迎えに来た。
何の事かと問うたが見ればわかると、一緒に城の奥に向かう。
最奥は王族の居住区で、その更に最奥に隠し扉のある秘密の部屋がある。
そこに、とりあえず塔から連れ出した子供を寝かせてある。
父上は暇さえあれば、ここに来て嬉しげに笑って子供の頭を撫でていた。
時には冷酷と評される父上も自分の家族には穏やかな笑みを浮かべもするし、溺愛もしている。
いや、溺愛しすぎる。
滅多なことで俺たちを叱ることは無いが、だからこそ怒らせてしまった時は夢に見るほど恐ろしい。
この部屋は本来、王族が何かあった時の為に避難するための部屋だ。
幽閉に使われたとも言われているが、公式な記録は無い。
「ラスティ?」
中に入れば下の弟のラスティが縫いぐるみに抱き着くようにして黒髪の男の子に抱き着いて寝ていた。
「何故ここにいる?」
父上がラスティを起こして聞く。
いつもより語気が強い。
「……何か城の奥が気になって探検してたらみつけたの……」
まだ、眠いのだろう。
しきりに目を擦っている。
「そしたらこの子が寝ていて、誰だろう?って見ていたら目を覚まして笑ってくれたから、一緒にお昼寝してたんだ」
「目を覚ましたのか?」
「うん。金色の目がとても綺麗だったんだ」
ラスティはしっかり目を覚ましたらしく、キラキラした笑顔で嬉しそうに話した。
黒髪に金色の目
間違いなく伝承どうりだ
「この子といると何だか嬉しくて安心する」
末に生まれた双子を可愛がるように頭を撫でる。
そういえば、外見だけで見れば双子達と年齢が近く見える。
「この子も僕の弟?」
コテンと首を傾げて、どこか期待に満ちた目で父上を見上げた。
「……陛下の許しがないと話せない」
父上は苦笑を浮かべた。
ラスティはしばらく考えてから
「じゃ、僕の従兄弟なのかな?それとも王太子様の子供?」
可愛く首を傾げてセドリック兄さんを見上げる。
父上の苦笑が更に深まる。
セドリック兄さんの顔にも苦笑が浮かんだ。
「とにかく、変な誤解が外に拡がらない内に父上に聞いてくるとしよう」
自ら伝令役を買ってでたセドリック兄さんが部屋を出ていった。
彼なら妃殿下に不審がられず陛下に伝えてくれるだろう。
というか、母上に知られてもややこしい。
この子は母上の子でもあるが死産だったと告げられている。
父上の隠し子だと勘違いする可能性は否定出来ない。
母上は男勝りなところがあるが、父上に関しては女心全開であるので、嫉妬深い所がある。
とりあえず、陛下の返事がくるまでラスティが部屋の外に出ないようにしないとな。
「ラスティはその子のこと好き?」
ベッドに腰掛けラスティの頭を撫でる。
「うん!」
「何か話したの?」
「だあれ?って聞いたらウィルだって」
ラスティはニコニコ笑って見上げてくる。
「どうしてここにいるの?って聞いたら、そーてーがい?だって」
想定外の意味が分からず不思議そうな顔をしている。
「兄上、そーてーがいって何?」
「事前に予想してたことと違うって意味だけど、簡単に言うと『思っていたのと違う』かな?」
ラスティに分かるように噛み砕いてみる。
「それって良いこと?悪いこと?」
「どっちなのか起きたら聞いてみようか」
「うん」
ラスティは無邪気に抱きついて擦り寄ってきた。
無責任な事を言っているかもしれないが、恐らく陛下はラスティが知ることに反対はしないだろう。
どこまで理解できるか分からないし、子供ゆえに誰かに吐露してしまう可能性もあるから、制限された知識か、ある程度制約をつけるかもしれないが……。
それにしても、双子は通じ合うものがあると聞いたことがあるが、ラスティとウィルもそうなのだろうか?
30分ぐらいして、陛下とセドリック兄さんが戻ってきた。
話しても良いとの許しを得て、父上が5歳児にも分かるように必死に説明していた。
この頃は『何故?どうして?』が増えてきていたので、時々脱線している。
全部理解したのかは分からないが、漸く説明を終えた父上は疲れてテーブルに突っ伏した。
その後はやはり5歳児ということもあり、誓約の魔術を施されることとなった。
絶対にこの場にはいる人間にウィルのことを話せなくなるという誓約を魔術によって結ぶのだ。
言葉だけ聞くと簡単そうだが、なかなか複雑な魔術を駆使しなくてはならないらしい。
この誓約はどの属性の魔法でも可能であるが容易に破られないように3つ以上の属性を複合させてかけないと効果が小さいらしい。
属性が3つ以上を持つ人間は多く無い。
その場合は相性の良い人間との魔術を融合させればいいのだが、案外相手をみつけるのが難しい。
相性が良いとの思っているのが一方通行である場合があるからだ。
人間は色んな仮面をつけて生きているものだ。
時々被る人、常に被る人
腹の探り合い。ましてや王族と貴族ばかりの人間関係では被ったことが無い人間の方が少ない。
今回は陛下と父上が融合して行うようだ。
父上は炎と風
陛下は土と水
誓約の期限は本来話を聞く年齢である15歳の誕生日を迎えるまで。
それ以降は自己責任か口が軽い性格になっているならば制約が無期限に延長される。
魔術が施された後は、ずっとウィルが起きるのを待っていたが、その日は目覚めることは無かった。
俺の夏休み中に起きてほしいな。




