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ep13.幽霊騒ぎ1

――あの日、わたしは夜中に不意に目が覚めました。

 なんだか寝苦しいような、別段そんな不快感があったようにも思えませんでしたが、目覚めてしまったんです。深夜のまさに草木も眠るなどと言われる時間帯ですから、精々風がふく程度の音しかない静かな夜でした。



 どうにもそのまま寝られそうもなかったわたしは、小用を足して落ち着いてから……と厠に向かっていました。コツンコツンとわたしの足音だけがやけに響くような気がするのは、きっと夜中だから、そう思っていたら……わずかに漂う臭気に気が付いたんです。



 まるで獣のような生臭いにおいがあたり一面に漂っているかと思えば、なにやら生暖かい空気がゆっくりと体を包み込むようにまとわりついてきました。



(なんか嫌な雰囲気ですね……)



 その時でした。いつもとは何かが違う、そんな違和感に身構えながら進むわたしの耳に、なんとも耳障りで奇怪な吐息がきこえてきました。



『ひゅーっ ひゅーーっ』



 かすれてまともに出なくなった声を無理にでも出そうとしているかのような、苦しくも身の毛もよだつその声が、薄暗く月明りだけが頼りの石造りの屋内にひとり佇むわたしの耳へと届いていました。



「ひっ」



 思わず悲鳴のように漏れ出た声。そしてその声が、わたしに襲い掛かるさらなる恐怖への引き金となったのでしょう。わたしの背後でそれまでは気配だけだった獣を感じさせるなにか得体のしれないものが、急速にその存在を大きく膨らませたかのようなおぞましい気配を放ちながら、わたしに近づいてきたのです。わたしは堪らなくなって振り向くとそこにはこの世には居てはいけないナニカが居たのです。



「ひ、ひぃぃぃぃいいいいイイイイイ!!」



 白、そう意識できたのは白いナニカがそこには居ました。モヤモヤと形をかえながら、ゾワゾワと毛羽立つおぞましい気配を撒き散らしていました。

 驚きのあまりわたしが叫ぶと、そのモヤはすぅーっとまるで何事も無かったかのように消えていったのです。



「ギャー!」



 わたしは一目散にみんなが眠る宿舎棟へと逃げ帰りました……。





◇◆◇◆◇◆




「って事があったんですよ助けてマスター!!」



 コアルームの隣を私室にしていたら、突然ロキシアが駆け込んでくるから何事かと思えば、ふるふると身を震わせながら恐怖体験を語るロキシアに、優雅な深夜のティータイムが破壊されてしまったことはまあいい。



 ロキシアがバンパイアハーフだからアンデットって限りなく眷属なんじゃないの?というツッコミも

、季節限定の風物詩(?)だと思えばなんという事はない。人間だってモンスターだって怖いものは怖いんだ。




「……でもジード、君が怖がってるのは解せない」



「幽霊は切れぬ、俺は怖いです。マスター何とかしてください!」



 あらそう……と返し、ぶるぶると震える二人を眺めながら、やれやれと飲みかけの紅茶をテーブルにもどす。蛮族のような粗暴な風貌から一転、まるで街の好青年のような清潔感漂う衣服に見を包み、腰にロングソードを携えているジードにしてみても、いつもの頼りがいのあるいい男はどこへやら。戦士としてもまだまだ未熟だから安かったんだろうか?なんて邪推もしつつ、むしろこれまでなんの問題もなかったことが珍しかっただけなのでは?と考えを改めた。




 ともあれ、幽霊騒ぎの解決をはかるべく、ワタシは恐怖を圧し殺し、震える足に活を入れて恐る恐る立ち上がるのだった。





 いやフツー怖いでしょうよ。

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