表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒き魂を持つ者たち  作者: ルーラー
序章 少年はまだユメの中
28/32

【???? 混濁する意識の中で】

 ――僕のことを、好きだと言ってくれた人がいた。

 いつも僕の隣にいて、僕に笑顔をくれていた少女。

 でも、僕が判断を間違えたせいで。

 彼女の命は、この世から永遠に失われてしまった――。




 僕が、殺したのだ。

 僕の手が血にれたわけじゃないけど、それでも、僕が彼女を殺したのだ。


 『違う』と言ってくれる人は、きっといるに違いない。

 お前が悪いわけじゃないと、そう言ってくれる人は、たくさんいるに違いない。


 でも、責められないからこそ、辛かった。

 恨まれないからこそ、苦しかった。

 あれは一種の事故なのだと、お前が彼女を死に追いやったわけじゃないと、そう言ってもらうたびに。

 自分のみにくさ、浅ましさを、突きつけられているようで。


 だって、本当は望んでいるから。

 その言葉を。

 かばってくれる人を。

 なぐさめてくれる人の存在を。

 僕は、我知らず望んでしまっているから。


 僕は、結局。

 僕にとっての優しい『否定』の言葉を。

 自分で自分をおとしめることで。

 周囲の人間から、引きずり出そうとしているのだ。


 それを自覚するのが、嫌だった。

 その言葉に心が安らいでしまうのが、嫌だった。

 そんな優しい人たちに囲まれているという事実が、嫌だった。




 失った少女の名は、秋葉といった。

 彼女を殺した人間ぼくの名は、和樹といった。

 でもそれは、果たして本当にそうなのだろうか……?




 ――違う……。




 ――それは、違う……。




 ……秋葉?




 ……和樹?




 ……誰だ?




 それは、誰だ……?




 だって『僕』は、『和樹』なんて名前の人間じゃあない。




 僕は……、『僕』の、名前は――


「――ド。早く起きないと朝食の時間に間にあわなくなるわよ? ルアルド」


 『僕』の名前を呼ぶ声が聞こえる。

 綺麗で穏やかなその声が、僕の耳を優しくくすぐる。


 そう、『僕』は『ルアルド』。

 ルアルド・デベロップだ。

 大切なひとを死に追いやった、ルアルド・デベロップという名の人間だ。


 ここは船の船室せんしつ

 僕と彼女が乗った、定期船ていきせんにある一室。

 そう、僕と彼女は、旅に出ていた。


 僕は、周囲の優しさから――いや、初恋の人と兄貴から、逃げるように。

 彼女は、亡き父親を生き返らせる方法を見つけだすために。


「ルアルド? もう、先に行っちゃうわよ?」


「ん、う……」


 もぞり、と動く。


「ほら、いい加減に起きなさい?」


 どこか笑みを含んだ声。

 それに僕は短く返した。


「……起きてる」


「それなら、ほら、目を開けなさい。身体も起こして、シーツもたたんで」


「朝の弱い僕に、なんて難易度の高い任務を……」


 そうつぶやきながら、目を開いた。

 そうして彼女――イリスの姿を直視する。


 彼女は、僕と同じ十代後半の少女だ。

 金色のポニーテールに、身体の線がよくわかるピッチリとした黒いワンピース。

 赤い瞳は宝石ルビーのようで、彼女の『可愛い』と『綺麗』が見事に同居した顔を鮮やかにいろどっている。


「……ぐう」


 と、そこまで思考を進めたところで、僕は襲いくる眠気に再び目を閉じた。

 駄目だ。もう、眠くて眠くて仕方がない……。


「も、もう。ルアルドったら……」


 ――ごめん、もうちょっとしたらちゃんと起きて、食堂に顔出すからさ。

 イリスは先に行って、食べててよ。


 そう、口を動かさずに思いながら。

 僕は、もう一度まどろみの中へと落ちていったのだった――。

物語もひと段落して、あとがき復活です。

今回はやたら短かったですが、いかがでしたでしょうか?

この回は『序章』終了後の『序章外伝』に関わってくるので、『序章』には直接関係なかったのですが、なんとしてもここで入れておきたかったのですよね。


あと、今回は『スペリオル外伝~酒場にて 彼女の始まりの物語~』とリンクしているのですが、危うく矛盾が起きそうになって冷や汗タラリ(笑)。

ともあれ、『序章』ではもうしばらく『今後のためのエピソード』をいくつかやっていく予定でいますが、それにも引き続きお付き合いいただけると幸いです。

では、また次回。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ