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最終話
あれから空田さんは電車に一度も乗ってきていない。
私は高校三年生になった。
空田さんの近況は、重美ちゃんからミキ経由で伝わってくる。
フリースクールはやめてしまったようだ。
籍だけ置いていた高校も退学した。
高卒認定の資格を既に持っている空田さんは大学を受験して合格した。
私は高校三年生。空田さんは大学一年生。
学校は違うけど、前は同じ高校の同学年だった。
でも、今はもう違う。
あの事件から、電車の中はずっとひとりだった。
学校に行けば友達がいる、ミキがいる。
でも、電車の中のたった十五分が、私にはとても寂しかった。
あとひと駅で目的地だ。
私は全然頭に入らなかった参考書を閉じる。
受験生なんだから、頑張らないと。空田さんに笑われてしまう。
ドアが開き男の人が乗り込んできた。
縦じまのシャツを着ている。
思わず顔を見てしまった。
空田さんだ。
空田さんが私の前に立ち止まった。
「となり、いいですか?」
私は、「はい」と言った。
声が少し裏返ったけど、そんなことは気にしない。
ガラガラの電車の中、空田さんが私の隣に座っている。
「お帰りなさい」
「ただいま」
電車の中の会話じゃないと二人で笑った。




