脳出血に至るまで
或る男が脳出血に至るまでの記録
これはあるサラリーマンが脳出血で倒れ、社会復帰するまでの記録である。
それでは脳出血に至るまでの経緯を彼の経歴と共に少し語ろうと思う。
仮に彼のことを狸氏と呼称しよう、別に狸の置物ように体の一部が大きいと言うわけではないが…
彼は平凡な中産階級の家庭に生を受け某理系私大を卒業するまでは特に語るべきこともない平々凡々な人生を歩んでいた、折しも就職難が叫ばれる時勢であり彼の周囲でも様々な悲哀に満ちた物語が繰り広げられたのだがここでは割愛する。
そんな中、狸氏は人生の安定を求め公務員試験をあらかた受けてみるという博打に打って出た。
無論就職難の時勢公務員への道も決して楽ではないのだが…
あまたの不合格通知が突きつけられるなか、一件の合格通知届く、陸上自衛隊である。
さしたる考えもなく自衛官となった狸氏は4年後の除隊時には立派な筋肉狸となり体育会的思考の申し子になっていた、力こそパワーをモットーに某セキュリティ系企業に再就職を果たした狸氏は営業、人材管理、教育とキャリアを積み上げて10年後には若手管理職として業務に邁進していた。
風向きが変わり始めたのは2024年度の末ごろであった、営業部のなかである噂がささやかれ始めたのである。
付き合いで出した某取引先への相見積の案件が先方都合で通る可能性があるというものであった、大型案件で受注すれば大規模な人員投入は必須で、別の大型案件に注力するために相場の倍の値段で見積を提出し暗に断った案件ではあるが、先方によると受注したはずの某社が対応できないので受注を白紙にしたいという信じられないようなことを言い出し、急遽他の受注可能な企業を当たっている状態だというのだ。
見積金額的に弊社に声がかかることはないと営業と経営陣は判断していたが先方経営陣の電撃訪問により
その目論みは儚くも潰えた、先方からの泣き落とし、天井知らずの見積認可により逃げ場は完全に奪われた。
そこから約1年部署の人数は半減し戦時下のような忙しさのなか狸氏は奮闘した、補充したそばから消える新人、ことなかれ主義の上司、新規案件に引き抜かれて以来音沙汰不明の部下たち…
そんな折り年末の定期検診で血圧の上昇を指摘され、年明けに精密検査を受ける予定を立てようとした矢先運命の日が訪れる…




