↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪魔兄妹は、契約する相手を間違えたようです  作者: 龍造寺 塞梅
第4章 それでも貴女に恋をする
48/49

第11話 別れても続く関係

「……わかったわ、傍多」


 クロエは、ようやく、その一言を絞り出す。傍多は、涙を拭きながら、顔を上げた。


「ごめんなさい、クロエ。あなたには、寂しい思い、辛い思いを沢山させてしまった」

「わかったから。でも、『悪魔の契約』は5年経たないと解除できないのよ。だけど、貴女は今後、誰と付き合っても良いし、私も誰と付き合って良い。それは、お互い自由よ。ただ」


 そう、クロエは、言葉を切った。


「ただ、契約は絶対。あなたに呼ばれれば、私はいつでも駆けつけるし、あなたのためなら何でもするわ。それは、恋人として別れても、5年間続くことだから。でもね……私は、宮島……雪のことが、本当に好きなのか、今はわからない。でも、今は、あの子の想いに応えたいって思ったのよ」


 クロエは、そう言って、深呼吸する。

 傍多は、それを見て、ぽつりと言った。


「宮島には、あなたの正体のことを告げているの?」

「まだよ。でも、いつか言わなきゃって思うわ。ミッションスクールに通ってるくらいだし、もしかしたら拒絶されるかもしれないけど……あの子と関係を続けていく限り、いつかきっと、言うわ」


 それを聞いて、傍多は、顔のこわばりを解いた。おそらく、傍多は、恐れているのだ。クロエが自分の元を去って行ってしまうより、クロエが、宮島に拒絶されることを。


「もし、拒絶されたら、私が宮島のことを一発殴ってやるわよ」

「あははっ。まあ、うん、そのときはよろしくね」


 クロエはようやく笑顔を見せる。そこで、傍多も、うっすらと笑みをたたえた。


「……さむっ!そろそろ中に入らない?コートの中、パジャマだから風が通るわ!」

 クロエが、そう言うと、傍多も「そうね」と同意した。


――しかし、そのとき。


「私とっ!付き合ってくださーーーい!!」

 

 そんな、女子生徒の大声が聞こえてきた。傍多とクロエは顔を見合わせて、それから、いたずらな笑みを二人で浮かべると、中庭のオオツツジの茂みに隠れた。


「えっ……えっ……!?あ、あの……」

 告白されたであろう、茶色のウエーブした髪の女子生徒が、恥ずかしそうに顔を伏せる。


「……あれ、カンナと理奈じゃない……」

「ん?うん?そうなの?」


 よくわかっていないらしい傍多に、クロエは呆れて振り返った。

「傍多、あなた、クラスメイトの顔も覚えてないの……?」

「私、人の顔は覚えられないのよ」


 そんな風に胸を張ってみせる傍多を、じとっーっと見つめたクロエだったが、そっと、オオツツジの茂みから顔を出す。


「ばあああああ!!めっちゃ恥ずかしい!!で、理奈は!?返事!!返事はどうなの!?」

「か、カンナ……声が大きいわ……」


 理奈は、もじもじと体を揺らしていたが、そのうち、決意を固めたようにカンナを見据えた。


「よ、よろしくお願いします……」


 そう言って、カンナから差し出された右手に、手を重ねて、きゅっと握る。


「理奈……!?ホント!?本当に!?」

「ええ、本当よ。私も……この修学旅行中に、告白できたらなって思ってたの。カンナには先を越されちゃったわね」


 カンナは、握り拳をそのまま上に突き出す。


「やったあああああああ!!」

「声が大きいって言ってるでしょ……恥ずかしいわ……」


 クロエが、夜目の効く瞳で上を見上げると、カンナの大声で、女子生徒たちが上からクスクス笑いながら二人を見守っていた。


「……カンナが叫ぶから、皆、ベランダに出てるみたいね。早く戻った方が良いわ」


 クロエが、苦々しげに言う。傍多は、「そうね」とクロエに合わせて、そこから二人で息を殺しつつ、立ち去った。



――

「私たちが別れたって知ったら、皆、もっと傍多に群がるわね」


 脱いだコートをベッドに放り投げて、クロエが言った。


「クロエ、コートは掛けときなさいよ」

「あら、傍多は別れた魚に餌はやらないタイプ?そういうのって嫌われるわよ」

「……いつまでも引きずる方が、今の大切な人に失礼だと思うけどね。それに、『釣った魚に餌はやらない』のことよね、それ。間違ってるわよ」

「あっ、そう」


 クロエは、渋々という感じで、ハンガーを手に取り、自分の脱いだコートを掛けた。

 傍多は、それを見ながら、ぼそりと呟く。


「……宮島が、そういう所を許してくれるとは限らないんだから。今度から自分のことは自分でしないとね」

「なーんだ、傍多ったら、心配してくれてるのね!」


 クロエは、カラカラと笑う。傍多も、口元だけで笑ってみせた。

 ようやく、傍多とクロエの2人の仲も、元に戻ってきたように見えた。


「でも、雪は別のクラスだし、当分はご指導ご鞭撻、よろしくお願いします、傍多さん」

 クロエは、ベッドの上に正座すると、ぺこりと頭を下げた。

「宮島の家は、1代で財を成した製粉会社よ。多分、旧家よりもプライドとかはないと思うけど……でも、礼儀作法を覚えておいて損はないわね。頑張るのよ、クロエ」


 そう言い合って、傍多とクロエは、がっちりと手を握り合った。今までのおままごとのような関係よりも、現在の関係の方が、絆が強まった、そんな気がしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。