表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪魔兄妹は、契約する相手を間違えたようです  作者: 龍造寺 塞梅
第3章 ざわめき、そして沈黙。
35/49

第9話 月経周期とポルターガイスト

 新菜に確認を取ってから、彼方は無舵に電話をかけた。


 無舵のプライベートの携帯番号は、彼方と傍多くらいしか知らない。仕事用の携帯番号は別にあるが、無舵は午後4時までしか、その番号の電話は取らないのだった。メッセージを残しても、かけ直してくる時とかけ直さない時がある。

 だから、彼方は、プライベート番号の方に電話をかけたのだった。


『彼方か。どうだ?何かわかったのか?』

 そう、無舵に言われ、彼方は一呼吸置いた。

「新菜さんの下着を洗濯していて、思いついたんです。もしかして、新菜さんの『現象』は、女性の体の周期……つまり、月経に関連するんじゃないかって」


 無舵は、電話の向こうで沈黙した。おそらく、無舵も考えあぐねているのだろう。

『ふうん。新菜ちゃんの生理周期か……。男目線じゃあ、考えつかなかったかもなあ。だが、新菜ちゃんは数日前にポルターガイストが起こり始めたって言ってたぜ?新菜ちゃん、もう高校生だろ?それならもっと早くポルターガイストが起きていたっておかしくねーだろ?』

「それが……新菜さんに確認したら、今月だけ、生理が大幅に遅れていたんです。今までほぼ周期通りに来ていたので、不安になってお医者さんにも診てもらおうと思っていたので、生理が来て良かったと」

『つまり、生理周期が乱れると、ポルターガイストが起こる可能性があるってことか』


 彼方は、「ええ」と答えて、無舵の反応を待った。

 無舵は、煙草でも吸っているのか、呼吸を置いている。

『で、新菜ちゃんの生理は、いつから始まったんだ?あ、今月のやつな』

「はい。今月は、昨日の夕方、始まったと言っていました」

『昨日の夕方?じゃあ、ポルターガイストが起こったのと日数が合わねえじゃねーか。確か、ポルターガイストが始まったのが数日前って聞いてるが』


 彼方は、「んん」と喉を整える。

「そこなんですけど、おそらく新菜さんは、PMS持ちです」

『PMS……聞いたことはあるな。月経前なんちゃらか』

「そう、月経前症候群ですね。新菜さんにも確認したのですが、新菜さんは元々生理が重くて、今も市販の鎮痛剤を飲んで寝ています。今日も、朝食を取って、僕が無道に行った後はずっと眠っていたそうです」

『女は半数くらいがそんな感じだって聞くな。ということは、数日前のポルターガイストも、その月経前症候群が関わってる可能性があるってことか』


 彼方は、新菜が眠っているであろう両親の部屋の方を、ちらりと見る。

「しかし、昼間はあのポルターガイスト現象が起きないようです。おそらく、夜間にだけ、ポルターガイストが起こるのだろうと思います」

『体内時計も関係してるのかもしんねーな。つまり、だ。月経が終われば、ポルターガイストは起きねえのかもってことだな』

「そういうことです。ちょっと調べてみたのですが、月経前症候群は、生理になる1週間ほど前から症状が現れることもあると。そして、月経前3日間ほどが症状のピークになるそうです」

『月経前3日間……それと、一番生理が重い始まりの3日間ってことだな。ふむ。確かに、そう考えると、一番ポルターガイストが酷くなった時期と重なるな』


 無舵は、やはり煙草を吸っているようで、ふー……と息を細く吐き出す。

『ってことは、あと1日、耐えきれば、ポルターガイストは起きなくなるってことだ。……ああ、でも、今後も生理不順になった場合にまた起きることもあるってことか。どうしたもんかな』

「それで、思い出したんですけど、柏木さんって、仕事上低容量ピルを飲んでますよね?あれで、生理をコントロールできるんじゃないかって思ったんですけど、どうでしょう?」

『お、そうか、その手があったか。俺はいまいちよくわからんから、柏木にその辺のところを聞いた方が良いかもな。確か、生理をなくす薬ってことで良いのか?』

「体の中を常に妊娠状態にするってざっくりとした話は聞いたことありますが。まあ、僕ら男がやいやい言ってもしょうがないので、柏木さんから新菜さんに説明して貰った方が良いと思います」



 話がついた後、彼方は通話を切った。

 無舵は、仕事上がりで仕事の話をされるのを嫌う。だが、彼方と傍多のことは、何かと面倒を見てくれているのも事実なので、あえて今、仕事の相談をしたのだった。

 甘えていると言われればそれまでだが、無舵のことは、彼方にとって父親のような存在でもあった。最も、無舵は「こんなでかい子供を持つ年じゃねえ」と嫌がるだろうが。


「さあて……ご飯の準備をしようかな。新菜さん、冷える物は厳禁だろうし、今日はお鍋にでもしようか」

 彼方は、そう独りごちて、冷蔵庫を開けて、野菜と肉を取り出した。


 あと1日。

 あと1日、ポルターガイストを耐えきれば、新菜もこれ以上苦しまなくて済む。今夜だけ耐えて、明日、柏木に婦人科を紹介して貰おう。

 

 あと1日が、勝負の時だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ