6月9日
六月九日 晴れ
ギリシア――ピレウス寄港。
長期停泊の予定なので、クルーも数多く休暇を取っているようだ。どこから出したのかわからないが、マイ自転車を抱えている強者もいた。一方、船壁では甲板部が、修繕に精を出している。きっと、部門によって大きく違うのだろう。明日になれば立場が逆転してるかもしれないし。
昨日の夜、船内のイベントで、ギリシア悲劇をやっていたのだとライラに聞いた。しまったと頭を抱えた。ちょっと楽しみにしてたのに、完全に忘れてた。
悔やんでも仕方ないので、気持ちを切り替えて地中海の街並みを楽しむ。なんせ、今日の私は、体調がすこぶる良い。慣れないことは考えないように過ごそう。
ギリシアの海の玄関口ピレウス。その一番大きな港グレートハーバー。
街中の市場がアジアっぽく、活気があった。地中海という気候柄、のんびりと日々を過ごすイメージがあったのだが。
それにしても、青い空に白い建物が映える。
アテネはやはり思ったよりも近代的だった。ビルが立ち並んでおり、人々は思い思いの服を着て闊歩している。どこも見通しが良く、犬すら我がもの顔で歩き、ベストポジションを探している。
目指すパルテノン神殿は、どこからでも見える街の中心地。ちょっとした山の上。
街中と違って、神殿への道幅は狭かった。というか、裏路地風だった。私の地図の見方が悪かったのか、みんな同じような道か、わからないけど私はそうだった。
到着した時の圧巻さは見事だった。
計算しつくされた建築様式は、美の極致。当時はカラフルだったと聞いたことがあるが、これは白い方がいいと思う。改修工事のための金属感が残念ではあるが、うっとりしてしまった。
「もっと前に一度来ておくべきだったか」
ちょっと後悔。当時の風も優しく穏やかなものだったのだろうか。
今日の宿になるホテルは、近代的で豪華なものだった。これも、船と同じように部屋が決まっており、一人なのに豪華なデラックス。窓からはパルテノン神殿がライトアップされているのが見える。
「うーん、ちょっと……。これは寂しいかも」
そんな考えが深くなる前に、食事へ行くことにした。それだって、一人には変わりないけど。
アテネの街は明るい。電気の灯りでなく、人々の声が。地中海ならではの陽気さは、昼より夜の方がわかりやすい。
そして私は、その明るさを横目に、タベルナにて地中海料理を堪能した。




