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まだ見ぬ未来へ駆け抜けて!【改稿版】  作者: 小林汐希
エピローグ 夕焼けに染まる制服
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【エピローグ・1】一生の親友ができたよ




「はぁー、恥ずかしかったですよぉ! 先生も千景ちゃんも悪ノリしすぎ!」


 まだ思い出すだけでも顔が赤くなっちゃう。みんなの凄まじい絶叫のおかげで他のクラスからも見物人がいっぱい集まったんだもの。


 卒業謝恩会のはずが、なし崩しで私と先生の結婚披露宴になってしまった。


 しかもまたドレスを着て、みんなの前でキスまですることになったなんて……。あれは千景ちゃんにあとで何かおごってもらわなくちゃ!


「でも、花菜だって結局バッチリやったじゃない。まんざらでもなさそうだったけど?」


「あそこまで騒がれて拒否できないでしょ!? はぁ、これで私もバカップルの仲間入りかぁ……」


 教室で先生とキスする生徒なんて、それ以上なんと呼ばれても仕方ない。


「まぁまぁ、文句は教室の中でラブシーンをやらせた校長に言ってくれ」


「ブーケトスはやったの?」


「教室じゃ天井低いから、リボンをつけて希望する子に引っ張ってもらうブーケプルズをしてもらったよ」


 もちろん、みんな初めての本物という経験だったから、女子全員参加だったっけ。


「当たらなかったのは悔しかったけど、あれは花菜が言うこと聞かなかったしね」


「だって、千景ちゃんは私たちのことをネタにして楽しかったでしょ? ブーケは公平にくじ引き」


 神様って、そういうものはちゃんと見ているんだよね。いざ引いてみると、クラスの中でも私と同じように普段は目立たない女の子、唯衣(ゆい)ちゃんに当たったの。


「花菜ちゃん……。ありがとう。大事にするからね」


 唯衣ちゃんは目を真っ赤にして両手で大事そうに受け取ってくれた。


「結婚式、1年越しで2回目をやるとは思わなかったですよぅ」


 実は昨年のゴールデンウィーク、先生と一緒に教会に行って二人だけの挙式をして写真を撮ってもらっていた。


 その時もドレスはレンタルだったけれど、またそれを着せてもらえたなんて。今日の計画の後ろ側にはどれだけの人が動いていたんだろう。


 ドレスのレンタルだって、こんな先の話はしてなかったから私たちの予算外だ。申し訳ない思いが半分、間違いなくスポンサーになった校長先生や計画の入れ知恵をした千景ちゃんたちが面白がって進めたんだろうなという諦めが半分と言うところ。


「もぉ、恥ずかしくてお嫁に行けません!」


「これ以上どこかにお嫁に行かれても困る」


 思わずぷっと吹き出してしまった。そうだよね。私はもう長谷川の家に嫁いだんだもん。


「あの声はすごかったねぇ。でもまだいいじゃない。私なんてみんなにお腹触られちゃったんだからね」


 さっきから中島さんも笑っている。みんなに触られたり声をかけてもらって、お腹の赤ちゃんもご機嫌だったらしく、よく動いてみんなを驚かせていたみたい。


 やっぱりここにも校長先生が登場したそうだ。もう筋金入りのイベント好きなのね……。6組はそんなみんなの前で婚姻届を書かされたって。うわぁ……、それよりはまだいいかぁ……。みんな知らないだろうけど、あれを書くのは緊張するんだぞぉ。



 教室のお開きのあとで、国語準備室には私と先生、千景ちゃんと加藤くん、中島さんと篠崎くんが集まっていた。


 そうそう。篠崎くんは校長先生や茜音先生、結花先生の計らいで、私が以前勤めていた図書館に年明けからアルバイトとして勤めている。4月からは正規職員になるのと並行して、司書の資格を取るために通信制の大学で勉強を続けることになったんだって。


 ちゃんと篠崎くんが生計を立てると分かって、最後まで反対していた中島さんのお母さんも応援してくれることになったと教えてくれた。


 ここにいるのは、私が一生の友達でいたいと思っている人たち。高校に入学したときには、出来ることはないと思っていた『親友』と胸を張って呼べる仲間たちだよ。


「花菜、また珠実園でお弁当屋さんのお手伝いするね」


「うん、またお願いね」


「知子ちゃん、赤ちゃん産まれる時は家事とかお手伝いするから遠慮なく言ってね」


「その時はお願いするよ」


 私はもちろん、みんなそのうちに名字も変わってしまうと笑い合って、今ではすっかり名前呼びの仲良しになっている。


「じゃあ、花菜またね」


「花菜ちゃん、お疲れさま」


 みんなが帰って、部屋の中はまた二人きりになった。


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