私は精霊に騙されてもよいと思い始めていた。
樹海には何があるか。
”道なき道を選ぶか、誰かの通った道を選ぶか。
力量のない魔法使いは道なき道を選べ。”
古い言い伝えだ。
精霊少女の手を引き歩を進める。
森の奥では男女は手を離して2度と会うことは出来ない。
これも言い伝え。手を離したくらいで2度と会うことは出来ない等あるものか、けれどそういう事が本当になりかねないのが大魔境という場所だ。
魔力により上空と実際の目2か所の情報をもとに進む
上から見る自分と実際の自分にずれが生じている。失敗する魔法使いは混乱を避けるためここで上空からの情報を切るのだ。
私は構わず、二つの違う視覚情報を受け入れ続ける。
恐怖をもたらす者、恐怖に鈍感になる者この2種の精霊が多数待ち構える。
私は道を変えるがすでに囲まれていた。
「休憩にしようか。」
魔法により簡易的な小屋を作り一休みをする。
錬金術師は何も荷物を持たずともこの程度のことはできる。どうせ進めないなら待つしかあるまい。
小屋は安全地帯でありここでは2人は手をはなす。
安全地帯と思い込まされているのでなければ大丈夫なはずだ。
「私が退治しましょうか?」
だます者がそう尋ねる。
だます者の両手にはやりと盾が生えている。
私はそれを止めて、飲み物をすすめるとだます者は席に着きそれを飲み始める。
精霊に飲み物は必要なのだろうか。
ふと頭によぎる。
案の定、席が水浸しになるだけだった。
「水をこぼす者・・・」
私がそうつぶやくと、真っ赤になっただます者が怒る。
「こぼしたわけじゃない!」
だます者言葉に私は笑った。すると小屋の外の2種の精霊は姿をくらませていた。
小一時間ほど二人で休む。
だます者は今度は普通に飲み物を飲む。
呪い、使用者のいない魔法についてさらに話す。
世界には誰も使わなくとも魔法が満ちており、その濃度の差が呪いになる。
錬金術の分野ではない。
それでも私の師匠は呪いを研究し、生命誕生の素を手に入れた。
師匠が生命誕生の素を手に入れてからだろう。
世界でも数人しかいない師匠の不老不死の肉体が年を取り始めたそうだ。
そうして生まれたのが私だ。
私を生み出した事で師匠は死んだのだ。
私はミラやその父にあわす顔などもともと持ち合わせていなかった。
ミラの父は最後に師匠にあったが、ミラとは結局あっていない。
私は少しでも代わりをしようとしたが彼女を危険にさらすだけだった。
「君は自分の誕生した時の記憶はあるかい」
私はそう尋ねる。
「君?ちょっと前まで精霊様といってなかった?」
精霊少女はそういって笑う。
全身青色なのに笑っているとわかる。
「かわいらしい姿につい気持ちが緩んだのですよ」
気が付くと精霊様は仁王像のようになっていた。
なんとなくだます者にだまされた人たちの気持ちがわかる。
だまされてもいいと思い始めている。
危険な兆候だが止められない。




