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第7話 勉強会の決め手はおやつですか?

 6月上旬の四季宮女学園は、中間試験の真っ最中。1週間前から、勉強のため、部活動も全て休みになるほど、皆が真剣だ。

 そして、結果発表の日。

「英語科の夏海さんの点数見た?英語を除いてほぼ満点だったよ!」

「そうなの!?すごいじゃん!って『英語を除いて』……?」

「うん」

「ちょっと待って、あの子英語科でハーフなのに?英語がダメなの?」

「何言ってんの?」

「だってあんたが『英語を除いて』って言ったから……」

「違うよ、英語は100点満点で、他がそれに近かったからそう言ったんだよ!」

「何だよ!紛らわしいな!さてはその語彙力、国語の点数が芳しくなかったな?」

「やめてよ!痛いとこ突かないで!」

「図星かい!日本人なのに!」

 こんな会話が飛び交う中、暗い顔の少女が1人。竜子である。

「はあ……」

 返された答案用紙を見ながら、ため息をつく。そこへ、1人の人影が覗き込む。

「どうかされましたか、竜子さん?」

「ひゃあっ!?」

 不意打ちに驚き、飛び上がる竜子。

「その紙は、中間試験の解答用紙ですか?」

「ひひひ向日葵ちゃん!?」

「驚かせて申し訳ありません。しかし、顔色がよろしくないように思えますが……」

「ななな何でもないよ!何でも……」

「もし悩み事があれば、わたくしが相談に乗りますわ」

「向日葵ちゃん、ありがとう。実は……」


「全教科で赤点を取った!?」

「ちょ、ちょっと!声が大きいよ向日葵ちゃん……」

「それは本当なのですか?」

「うん、だから来週は追試を受けないといけないんだ……」

「それは大変ですわね。わたくしにできることはありませんか?」

「向日葵ちゃんは赤点取ってないの?」

「わたくしは夏海財閥の令嬢ですわ!日頃から勉学を怠ることなどありませんわ!ご覧なさい!この答案用紙を!」

 向日葵は竜子に自分の答案用紙を突きつける。

「す、すごい!ほとんどが高得点だ……!英語は100点だし……!」

「どうです、わたくしの学力は?」

「恐れ入りました!向日葵ちゃんお願い、あたしの追試に向けた勉強を手伝って!」

「……勉強を手伝えばいいのですか?」

「うん、一生のお願い!」

「そこまで言うなら仕方ありませんわね。付き合って差し上げますわ」

「本当?ありがとう!」

 かくして、向日葵と竜子の勉強会が始まった。


「いやー、まさか向日葵ちゃんのリムジンに乗れる日が来るなんてねえ」

「わたくしも、竜子さんのロードバイクをこのリムジンの上に乗せて運ぶ日が来るとは思いませんでしたわ」

 ガールズトークに花を咲かせる2人。そんな会話を笑顔で聞きながら、爺やは微笑んでいた。


 約10分後、リムジンは夏海家に着いた。

 リムジンが門の前に来ると、金属音を立てながら門が開き、リムジンもそれに伴い進んだ。そして、家の扉の前で停まり、リムジンのドアが開いた。

 向日葵に手を引かれ、緊張した面持ちの竜子だが、無理もない。これから自分ちの何倍も大きな豪邸に入るのだから。

 扉の前には、メイドがそれぞれ両側に1人づつ待機しており、2人を確認すると扉をガチャリと開けた。

「さあ、ようこそ我が夏海家へ!」

「お、お邪魔します」

 家の中はとても広く、そして豪華な装飾に彩られており、家具や雑貨も高そうなものばかりだ。

 そんな屋敷内を向日葵の後からついて行くと、やがて1つの部屋に着いた。

「ここがわたくしの部屋ですわ」

 扉を開けると、綺麗な勉強机に天蓋付きの大きなベッド、とても広いウォーキングクローゼットが目に飛び込んできた。

「すごい……この部屋だけであたしの家より広いなんて……とんでもない友達を持ったなあ……」

「竜子さん、どうかされましたか?」

 呆然とする竜子に声をかける向日葵。

「う、ううん!何でもないよ。ちょっとびっくりしただけ」

 慌てて平静を装う竜子。

「それでは、勉強会を始めましょう」


 30分後。

「竜子さん?聞いてますか?」

「だめだー!集中が続かない……」

「まだ30分しか経ってませんわ、それも1教科目ですわよ?」

「私の頭はもうパンク寸前だよー……」

「お嬢様、失礼します」

 そこへ、3回ノックして、婆やが部屋に入ってきた。

「婆や!わたくしたちは勉強の最中ですわよ!邪魔をしないで!」

「申し訳ありません、お嬢様。おやつを持ってきたのですが……」

「えっ、おやつ!?」

 その単語に、声が明るくなる竜子。

「はい、今日はマカロンを作りました」

「食べるー!」

 一気に目を輝かせて婆やに近寄る竜子。そのままピンク色のマカロンを1つパクリ。

「ん〜美味しい!」

 竜子は婆やに向かって親指を立てる。

「お褒めに預かり光栄です。お嬢様も召し上がりませんか?」

「いただきますわ!」

 やけくそで向日葵も焦げ茶色のマカロンを食す。

「お口には合いますでしょうか?」

「……美味ですわ」

「こっちの緑色のも美味しいよ!」

「そちらはマスカット味でございます。先ほどのは苺味で、お嬢様が食べたのはチョコレート味です」

「すごーい!いろんな種類があるんだね!ずっと憧れだったんだ、マカロン」

「……そうですか」

 2人がマカロンを全部食べ終えると、婆やは部屋を後にした。

「すみません、うちの者が粗相を……」

「さ、勉強再開しよ!」

「……えっ!?」

「マカロン食べたらやる気と元気が出てきた!燃料は満タンだよ!」

「そうなのですね、婆やは役に立ったのですね。後で詫びと礼を言っておきませんと。では、勉強会を続けましょう」

「うん!」


 こうして、2人の勉強会は追試の前日まで続き、いよいよ当日。

「ううう……緊張するなあ……」

「大丈夫ですわ、学んだことを活かすだけですから」

「そうだね……よし、行ってくる!」


 そして、追試が終わり、結果が返ってきた。

「どうでしたか、竜子さん?」

「た、大変なことになっちゃった……」

「どうされましたの、竜子さん!」

 わなわな震える竜子を、心配そうに見る向日葵。

「もしや、また赤点を……?」

「……逆」

「へ……?」

「全教科……満点だった」

「えええええっ!?」

「どうしよう……あたし、あたしが怖い……」

「素晴らしいではありませんか!わたくしでさえ成し得なかったことを!」

「あたし、今日死ぬのかな……?」

「竜子さん!しっかりなさい!そして素直に喜びなさいな!」

 この茶番を、周りの生徒たちは奇異な眼差しで見ていた。

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