入れ替わり〜梅ポテチとダーマさん〜
頭を空っぽにしてお読みください
『ダーマさん、ポテチ美味しい?』
『うぼあ゛ぁあ』
『そうか、そうか。美味しいか。ダーマさんは素直で可愛いなあ』
私はダメ夫が生み出したダークマターにダーマさんと名付け可愛がる。ダーマさんはポテチしか食べない。見た目はグロテスクなスライムだが、名付けてしまえば可愛くみえてくる不思議なマジックだ。
「番……そろそろ本当の名を教えてくれ」
『ゔぅ……あ゛ぁ』
『どうしたの、ダーマさん。梅ポテチが食べたいの?』
『あ゛ぁぁあ』
「あの……番……聞いてるか?」
『食べ過ぎは注意だよ、ダーマさん。今日はここまでだよ』
ふにふにとダーマさんを突き、ガラスケースの中に入れる。もぞもぞ、ずるずると動く姿がキモ愛らしい。尻尾をふりふりしながらダーマさんを観察する。最近ではダーマさん絵日記を書き始めた。
その絵日記をダメ夫は執務が終わった後必ず見ている。ピカソも裸足で逃げ出す私の絵はダメ夫の中では国宝らしい。ダーマさん、あなたいつの間にか国宝になってるよ。
ふんふんと鼻唄を歌いがらクレヨンでダーマさんを描く。ダメ夫は何やら悲しそうにケースのダーマさんを突いていた。だが、ダーマさんは触手を伸ばしてダメ夫の指をベジベジと叩いていた。
「番……そろそろ名前を……」
『あー?あー……コイケヤ』
「絶対嘘だろう」
『あ、バレた?今はまだ教えたくない。許してないし。それに、この体はエディスなんだよ?エディス以外の名前で呼ぶのおかしくない?』
「それはそうだが……私に番と呼ばれ続けるのは嫌ではないか?」
「確かに……んじゃ、エディスって呼べばいいじゃん」
私は紫色のクレヨンでダーマさんの色を塗っていく。黒と紫のコラボレーションが素敵だ。
「愛する番を違う女性の名前で呼びたくないのだ……」
最近、ダメ夫のショボーンとした姿が心の恋人であった抱き枕のショボーンさんに見える。だが、ここで私が折れてしまったら、このダメ夫は絶対に調子に乗る。ここは適当にスルーするのがベストだ。
『そのうち教えてあげるけど、今はやだ』
「分かった、それまで待とう」
ダーマさんの絵を描き終わり、汚れたプリティな手をダメ夫がハンカチで拭いてくる。私は綺麗になった手で梅ポテチを悶えながら食べる。酸っぱくてコロコロと床に転がる。
私が開発したポテチは今では国中に浸透し、愛されている。そのおかげで私の懐はほかほかだ。まさかここまで人気になるとは思わなかった。
ダメ夫は梅ポテチをポリポリと食べながら、酸っぱさに耐えるように眉間を寄せる。
「これはこれで癖になるな」
『偶に食べたくなるんだよね。梅ポテチのこの酸っぱさがたまらない。見てるだけで涎でるんだもん』
「だが、私はピザポテチの方が好きだ」
そう言って、ダメ夫はダーマさんをじっと見つめる。ちょっとまって。絶対ダークマターより梅ポテチの方がいいから。だからダーマさんを食の対象に見ないで。
『ダーマさん食べたら王宮ぶっ壊すからね』
「食べるつもりは無いぞ?」
ダーマさんはぷるぷると震えながら断末魔を上げている。ダーマさんは私達の会話を理解しているようだ。なんて賢い子なのだろう。
『……ん?なんか香水の匂いがする……』
梅ポテチを食べているダメ夫から微かに女物の香水が香ってくる。くんくんとダメ夫に近づくとはっきり分かる。歯がカチカチとなり自然と唸り声が出る。
「落ち着いてくれ、番!!これは母上の香水だ!!」
『ふーーん』
「本当だ!!なんなら母上の匂いを直接嗅いでもらってもいい!!」
不機嫌に小さな尻尾をびたんびたんと叩きつけ駄目夫を見る。何を言っているのだ。駄目夫ならともかく、普通に考えて匂いを嗅がせてくださいなどと言えるわけないだろう。
私はまた梅ポテチを食べ、その酸っぱさにコロコロと転がる。その様子を食い入るように見る駄目夫。そうだろう、そうだろう。この私のチビ竜の姿は女性達をも虜にするプリティボディなのだから。それを真似する様にダーマさんもガラスケースの中でコロコロ転がっている。
ああ、今日も素晴らしきかなダーマさん
ダーマさん尊い、、、