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2話‐3

「この度は、我が社の新製品発表会へ足を運んでいただき、ありがとうございます」


 黒鉄工業の企業ブースへ辿り着くと同時に、新製品の発表が始まる。

 壇上には何度か見かけた事のある黒鉄工業の社長が立っており、その隣には平均的な成人男性より少し大きい位の、布がかけられた箱状の何かが置いてある。

 ……文の姿は見当たらない。

 さすがに狙われているとわかっている人間を表に出さないようで、少し安心した。

 ……それにしても、凄い人だかりだな。

 周囲の企業に比べて、三倍ほどの大きさの人だかりができている。


「そんなに凄いのか? 新商品」


「文ちゃんに聞いても結局教えてくれなかったもんね」


 文に新商品が何なのか聞いても守秘義務があるの一点張りで教えてくれず、颯花と共にどんな物なのか、情報も無しに無意味な想像をするしかなかった。

 ……仕方ない事ではあるのはわかるが、助けを求めてきておいてそれは無いだろうという気持ちも少しはある。


「噂だと、軍事関係の製品らしいよ。まあ、真相は知らないけどね」


 結局俺達に付いてきた白金が新商品についての噂話を吹き込んでくる。

 ……こいつ、そんな噂話に興味があるのか?

 そんな事を考えている内に社長が箱にかけられている布を掴む。


「それではご覧ください。これが我が社の新製品。強化装甲服BM‐1です!」


 そう言うと共に、箱を覆い包んでいた布が剥がされ、その中身が露わになる。

 透明なケースに入れられた、頭頂部からつま先まで全身を覆う装甲服がその姿を衆目に現した。


「……パワードスーツ? ウチで作っている物とそんなに変わらないように見えるけど、何か特別な機能が――いてっ」


「望夫様、喋りすぎです。黙って拝聴しましょう」


 装甲服を呟く独り言を白金だったが、お目付け役が何かをしたらしくそれきり黙りこくる。


「BM‐1は優れた防弾性と機動力を両立した装甲服です。勿論、様々なニーズに対応できる拡張性も有しており、テロだけではなく工事現場や災害対応にも――」


「そういうありきたりな話は後でも良いだろう? それより皆さんが気になっているのは、このスーツにどんな機能が搭載されているかだ」


 強化服の説明を行っている社長に割り込んで女の子の声が響く。


「文君!? 何で君が――」


「自分が開発した技術なんだから、自分が説明したほうが良いと思ったんだ。という訳で新製品発表お疲れ様です、社長。後はボクが説明を引き継ごう」


 文が社長を押しのけ壇上に上がり、強化服の横に立つ。

 後で社長さんに謝らないとな……いや、そうじゃない。


「何やってるの、文ちゃん。狙われているのに自分から出てくるなんて……」


 颯花が唖然とした表情で呟きながら、答えを求めるように俺の方を見てくる。

 ……いや、俺を見るな。

 文が何を考えているかなんて、俺にわかる訳がない。

 こちらに気付いた文は、一瞬俺達の方を見てニヤリと不敵に笑った後で口を開く。


「このBM-1はJDFと共同で開発した物。既に配備が決まっているこの新型装甲服には当然、先程社長の説明したようなありきたりな仕様だけじゃない画期的な新機能が搭載されている! その新機能を、今ここでお見せしよう!」


 文はそう言って白衣のポケットから何かを取り出したその直後、会場内に轟音が響き渡り、悲鳴が聞こえ始める。


「逃げろ! 機械人形が暴走している!」


 誰が叫んだのかはわからないが、その瞬間に周囲の人達が慌てふためき、出口に向かって逃げ出し始める。


「ぼ、僕達も早く逃げよう!」

 

 ……白金の言う通りにするのが本当は正しいのだろうけど、今の俺達はそうもいかない。


「……どうする、颯花?」


「一先ず、暴走している機械人形の制圧に行ってくる。白金君達は早くここから離れて」


 俺の問いかけに颯花はそう答えると、着ていたスーツを脱ぎ始める。


「か、風見君!? いきなり何を、うごォ!?」


 口ではそう言いつつも、颯花から目を離そうとしない白金の腹部にお目付け役の良いパンチが入るのを横目で見ながら、鞄からスタジャンを取り出して颯花に投げ渡す。

 颯花がスーツの下に着込んでいたヒーローのコスチュームに加えて、俺から受け取ったスタジャンを羽織る事で、その姿は『ストームガール』として活動しているものになる。


「一成、文ちゃんをよろしく」


 そう言って俺の返事を聞かずに颯花は、機械人形が暴れている方向へと飛び立つ。

 ……俺に頼まれても、何にもできないんだけどな。

 そう思いつつ文の立っていた壇上へと視線を向けると、文の姿はそこには無い。

 何かあったのではないかと慌てて文の姿を探すと、壇上から少し離れた所で社長と共に警官に護衛されながら、この場を離れていく後ろ姿を捉える事ができた。

 護衛がいるなら俺は必要ないんじゃないか?

 ……とりあえず、追いかけるか。

 遠ざかる文の後ろ姿を、二人で追いかけ始める……二人?


「……あの、何でついて来るんですか?」


 足を止めずに、背後から俺を追いかけてくる白金のお目付け役へと問いかける。

 お目付け役の小脇には先ほどの一撃で気絶した白金が抱えられている。


「狙われている妹さんの元へ向かうのですよね? お手伝いしますよ」


「ちょっと待て。何でその事を知ってるんだ?」


 ……俺も颯花もボロは出していなかったはずだ。


「……只の警備員ではなく警察が妹さんを守るように動いていたので、そう予想しました。決め手として は、貴方の反応ですが」


 普通、たったそれだけの情報でそこまでわかるものなのだろうか?

 いや、それよりも気になる事がある。


「……君、なんていう名前だっけ?」


「……月日。月日(つきび) (とう)()


「月日さんか。なんで俺の手助けをしてくれる? 君や、白金には一切関係ない話だ。関わるだけ危険だよ」


 助けてくれるのはありがたいが、その理由がわからない為に気味の悪さが勝ってしまう。

 いったいどんな理由があって、俺の手助けをしてくれるというのだろう?


「望夫様はご友人が危ない目にあっていると知ったら助けに行く御方です。そして私は望夫様に付いていくだけですので」


 月日さんはそう言うと脇に抱えている白金を一瞥する。


「……流石、灯夜。僕の事がよくわかっているじゃないか。……後は、宜しく……」

 

 向けられた視線に呼応するように目覚めた白金は、月日さんに後を託すと頭を垂れて再び気絶する。

 ……コイツ、本当に気絶してるのか?


「話はわかった。……今の話だと、白金が俺の事を友人だと思っているみたいだな」


「私から見たら、仲は良さそうだと思いますよ。……これからも、望夫様と仲良くしてください」


 俺と白金のやり取りが仲良さそうに見えるのか?

 ……まあいいか、それで助けてくれるのなら。

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