表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/31

美しい夜

色んな不安を抱え、眠りにつけなかった私は、特に用もなく夜の街を歩いていた。


アルデンの夜はとても平和で、街灯の下で踊りを披露する踊り子の姿や、噴水のベンチでキスを交わしている恋人、力比べと言わんばかりの腕相撲をしている人など。


沢山とはいえないが、様々な人の姿が見えた。


私はアルデンの中心に位置する時計塔の下まで来た。ここは、カイルと2人で来た思い出の場所だった。


その思い出に浸るようにして、私は時計塔を登り始めた。


時計塔の中は、あの時よりも少し古くなっていて、時間が経っていることを、より深く感じた。


時計塔の頂上へ繋がる階段を登り、頂上に出た時、そこから広がった景色は、あの時とは全く違うものだった。


「あの時とは違う、」


確かに年月が過ぎているのだから、景色は変わっているだろう。しかし、そういう意味ではなかった。


アルデンの街は、相変わらず美しい。


だが、違う。


あの時、私が見たのはもっとーー



「綺麗な夜だな」


私が時計塔の上で夜景を眺めていると、背後から声をかけられた。


誰かと思い、後ろを振り向けば、そこには、私がチョイスした黒色の服の上から紺色のジャケットを羽織った、アルラさんの姿があった。


「どうしてここに?」

「眠れなくてさ、それで街を歩いてたらここに辿り着いた」


真顔で答えるアルラさんに対し、自分と全く同じ辿り着き方だと知り、そういう雰囲気でもないのに笑ってしまった。


「なんで笑ってんだよ」

「だって、ここまでの辿り着き方が全く一緒なんだもん」


それを聞いたアルラさんは、「はぁ」と軽いため息をつくと、呆れながら私の隣まで来た。


「アルデンの街は美しいな」

「そうよね」


アルラさんが、隣でそう呟いた。


しばらく2人で夜景を眺めていると、なんだか自然と気恥ずかしい気持ちになり、私は何か話そうと口を開こうとしたが、先に口を開いたのはアルラさんの方だった。


「この1ヶ月、色んなことがあったな。あの時出会ってからここまで来るのに、辛いこともや悲しいこと、失ったものも沢山あった」


そう語るアルラさんの目には、やはりミラ姐の姿が映っていた気がした。だがそのことは口には出さず、私は静かに頷いた。


アルラさんは私の方を向くと、その真っ直ぐな瞳で私のことを見つめた。


「でもーー」


私の方を向き、いつものような軽い笑顔で、こう言った。


「俺はアリアと出会えてよかったよ」


月明かりに照らされ、澄み通るような青い瞳は、より一層美しく輝いていた。


その時私は、アルラさんの姿に見惚れていた。単純にカッコいいからとかではなく、アルラさんの何かに惚れていたんだと思う。


口にするつもりはなかったのに、気がつけば自然と、その言葉は口から溢れていた。


「私もアルラさんと出会えて本当に良かった」


私の顔には自然と笑顔が浮かんでいた。そして、私の冷えていた心が温められていくのを感じていた。


もしかしたら、この時点で私はアルラさんに惚れてしまっていたのかもしれない。カイルではなく、アルラさんといる方が幸せなのかもしれない。


私は心の中でそう感じてしまっていることを、「そうではない」と押し隠してしまった。


何故なら私は、カイルと過ごしてきた10年間を裏切れないし、カイルも私を愛してくれているからだ。


それでもやはりーー


そんなことを考えてしまい、頭に靄が残る状態で私は、アルラさんと夜景を眺めていたのだった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


宿屋の3階のとある一室で、2人の少年と少女がいちゃついていた。少年の方は少々困っている様子だったが、竜人の少女の方はとても楽しそうだった。


「………もっとライルのこと聞かせて」

「まだ聞くのか!もう散々話しただろっ」


昼は、レイシアが竜人であることを隠すための特殊なコートを身にまとい、ライルとアルデンの街でデートをしていた。


夕方は2人で食事を食べ、夜はライルの昔話をレイシアに話していた。しかし、話し始めてから3時間が経過していたため、ネタがもう底をつきかけていた。


そんな時だった。


コンコン


扉をノックする音が聞こえたのだ。


こんな夜中に訪ねてくるものは、只者じゃないことを分かっていたため、ライルは目の色を変え、念のためのナイフを手に持ち、扉を勢いよく開けた。


「ライル、話がある。ついてこい」

「フリードさん!?」


扉の向こう側にいたのは、いつもより少し険しい表情のフリードさんだった。


何事かと思い、ライルは速攻で武器を腰にしまい、敬礼をした。フリードさんは、その敬礼は見事にスルーして、歩き出してしまった。


「あっ、待ってくださいよぉ!」


ライルは駆け足でフリードさんを追いかけた。




フリードさんは人気のない裏路地まで来ると、立ち止まった。ライルは不審に思いながら、辺りを見回す。


当然ながら誰もいなかった。


「なんでこんなとこに呼び出したんすか?」

「それを今から話す」


そして、フリードさんは語り出した。


ライルは、フリードさんから放たれる言葉を信じられなかった。いつもなら反論していただろう。しかし、今回ばかりは反論したくても、出来なかった。


「わかったな」


様々な疑問が残る中で、ライルは頷くことしか出来なかった。


そして、事態は大きく動き出す。


私の運命の分岐点は、すぐそこまで迫っていた。あの日、あの時まで残りーー1日

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ