アルデン王国へ
『ついたぞい、アルデン地方じゃ』
ミルターナは降りる場所を探すために、アルデン地方をグルッと回った。
降り立つのに最適だと判断した場所、アルデン王国から少し西行ったところにある崖にミルターナは降り立った。
ミルターナの背から全員が降りると、レイシアは、巨大な竜の姿のミルターナの顔に近づき、そっとその大きな頰に触れた。
「………今までありがとう、お父様」
『なに、礼には及ばんのじゃ。レイシアよ、元気でな。お主の本当の父に、いつか会えると良いのう』
「………うん。元気でね」
レイシアは、いつもより感情のこもった声でミルターナに別れを告げた。その瞳には、薄っすらと雫が溢れていた。
ミルターナはレイシアとの別れを告げると、今度はライルに視線を向けた。
『うむ。そしてライルよ、我が愛しき娘を頼んだのじゃ』
「任せてください」
ライルはいつになく真面目な表情で、そう答えた。
ミルターナもその返答に満足したようで、大きな首を1つ頷かせると、その大翼を羽ばたかせた。
『では、さらばじゃ。未来永劫ある者たちよ、我が愛しき娘、レイシアを頼んだぞ!』
ミルターナは1つ大きな雄叫びを上げると、アルミナ地方へと飛んでいった。
皆が余韻に浸っている中、フリードさんは、崖の上から望遠鏡で何かを覗いた後、私たちにこう指示した。
「アルデン王国からこっちに小隊が向かっているようだ。接触して面倒な事になる前に、アルデン王国に向かうぞ」
「え?でもアルデン王国の小隊なんでしょ。小隊に私のことを話さないの?」
アルデン王国のカイルの派遣した小隊なら、いままでのことを話せば匿ってくれるはず。私はそう考えた。
しかし、その考えは甘かった。
「もしもだ。カイル王の派遣したかもしれない小隊に、お前を陥れたレイラ・アークウェスの息のかかった者がいたらどうなる」
簡単なことだった。私がアルデン王国に戻ってきたことをレイラが知れば、真っ先に私を暗殺しに来るだろう。
故にカイルと直接繋がりがあって、私の見方をしてくれる人物に協力を頼んで私のことをカイルに直接知らせなければならなかった。
「まずはレイラに悟られないよう、王家中枢の協力者を探す。お前のことを見知っていて、信頼できる人物、そしてカイル王と面会が可能な者だ。心当たりはありそうか?」
私は考える。信頼できてカイルと直接、話ができる人。色んな人がいるが、カイルと面会出来る人で信頼できる人はいなかった。ーー1人を除いて。
「………ある。一番信用できて、カイルとも面識のある人を知ってる」
できれば、彼女をこの事に巻き込みたくはなかった。しかし、背に腹は変えられないため、覚悟を決めた。
彼女は、王家直属の子守り係を担当していた。もちろん、カイルや私もお世話になった人だ。今はもう退役しているが、街の図書館で小さい子たちに本を読み聞かせている。
「王家直属の子守り係、婆さまって呼ばれる人よ。カイルや私がお世話になった、話せばきっと分かってくれる」
「なら大丈夫そうだ。………ハッキリ言ってお前の人間関係は、俺らには分からん。協力してくれそうな者、裏切りそうな者はお前が判断しろ。いいな」
「もちろん」
それだけ話すと、私たちはアルデンの小隊に見つからないよう、気をつけて崖を降りた。




