第六話「高周波振動の唸り」
おはようございます、皆さん!! 今回の話も楽しんでいただけたら嬉しいです!!!
何もかもから遠く離れた場所。文明から離れすぎていて、誰の耳にも届かない倉庫。
フクロウとクマは追い詰められていた。目の前に三体の鬼神――その後ろには、よれよれの背広を着た四体目が、退屈な演劇でも見るようにぼんやり立っている。
ハンターなら、近くにいる誰かに周波数で救援を呼べる。だがここには誰もいない。いるのは二人だけ――そしてキシンたちだ。
クマは冷静だった。フクロウも同じだった。何度も追い詰められたことのある者の、眠そうな目。いつもの一日だ。
問題はいつも同じ。血の巡りが遅い。脈を上げなければ周波数は出ない。力も使えない。
「フクロウ、四体は無理だ。お前の力が要る」
「任せろ。俺はピエロの三体、お前はネクタイ野郎だ」――フクロウはため息をついた。「悪いが血の調子が悪くてな。……起爆剤が要る」
クマは言葉で返さなかった。よれよれのシャツの襟を掴み――不用意に締まったネクタイが喉に食い込むのも構わず――キシンたちの真ん中へ投げた。
ドンッ。
その体は倉庫を横切り、二体に深々とぶつかり、そのまま壁まで叩きつけられた。フクロウはすぐに立ち上がり、一体ずつ蹴り飛ばした。強いが背が低い――彼よりも小さい。投げられる。
「頭おかしいだろクソが! 殺す気か!」
「贅沢言うな。その遅い血を起こすためだ。ほら、もう周波数が出るだろう」
クマは二メートル先のネクタイ野郎に向き直った。二本の指先を喉の急所に当て、胸へ、両手首の脈へと滑らせる。血が熱くなった。
そして世界が締まった。
半径三キロ。心臓のある者なら感じたはずだ。無音の咆哮。音ではなく、身体に直接響くもの。キシンたちには内側からの大地震のように感じられた――皮膚が剥がれ始め、心臓が拍子を外れて打つ。
フクロウには何も起きなかった。己の周波数を彼女のそれから外したからだ。体は平常。だが血は、ようやく沸いていた。
二本の指を脈に。刃へと滑らせる。刀が再び削岩機のように唸り出した。
構えは整った。右足をわずかに前に、刀は腰の線に沿わせる。声を出さず句を放った――唇だけが動き、顔は静かで鋭い。周囲の空気が、中に風が流れ込んだかのように鋭くなり、壁がフクロウの周波数の根から震えた。
「高周波振動――」
音は乾いて爆ぜた。耳のすぐそばで何かが破裂したようだった。足先は痺れ、柄を握る手は硬直――刀身が今にも手の中で爆ぜそうに震えている。
彼は最も近いキシンに躍りかかった。刃が奴の胸を裂く寸前――近い、近すぎる――
キシンは銃を抜いた。
避けもせず、退がりもせず。フクロウが次の一歩を踏み出す、まさにその瞬間に、奴は足元を撃った。体の軸が崩れ、フクロウは顔から地面に叩きつけられた。
向こう側では、クマがネクタイ野郎を見据えていた。彼女はフクロウのように速くなかった。その代わり――遅く、そして致命的だった。キシン相手には速さだけでは足りない。奴らはハンターの一歩ごとの周期を読む。
だから彼女は逆をやった。自身の周波数を、奴の読みから消えるまで下げる。――波動分散。周波数を落とすぶんだけ、力が増す。
二人は互いを見ないままの同期で回り続けた。一方は相手の一歩を読み、一方は拍子を外すふりをする。動きにはすべて代償がある。彼女の心拍は刻一刻と落ちていき、力と速さの両立がどんどん難しくなった。
クマは仕掛けた。左足を奴の背骨の左側へと蹴り上げた――奴がそれを読んだ瞬間、彼女は軸を入れ替えた。倒れ込み、下をくぐり抜け、両手首に手を掛けて上から体重で押さえ、腕を床に縫い止める。そして再び、奴の感覚から姿を消した。
死角へ回り込んだ。狙いは首――
そのとき奴は彼女を捉えた。一瞬、彼女が周波数の締め付けを緩めたからだ。
ネクタイ野郎は自らの体から、手首の血管を引き抜いた。刃を抜くような仕草で。
(キシンの体は簡単には砕けない。仕留めるには正しい周波数で打ち込むしかない。拳でも刃でも。そして奴らは、自らの体の一部を引きちぎって防御に回す。代償はある。だが、効く。)
奴はクマの両拳を絡め取り、フクロウめがけて投げつけた。倒れていたフクロウには、覆いかぶさってくる影が見えた――だがクマは空中で体勢を立て直し、彼の隣にきっちり着地した。
「仕留めにくいか?」
「正確には違う。奴は俺の次の一歩を読む。一つ見せた上で、逆を撃つしかない」
二体のキシンが宙高く跳んだ。地上に残った銃持ちが二度引き金を引いた――弾は跳躍の途中の自らの仲間を貫き、そのままフクロウとクマの頭の間を縫い飛び、煙幕が立ち込めた。
二つの体は、地に着く前に死んでいた。
囮――否、遮蔽だ。キシンにとって、仲間とは使い捨ての盾でしかない。二人は同時にそれを悟った。
口に血を滲ませながら、フクロウは残りの血を喉へと押し上げた。
「音響キャビテーション――」
唸りが倉庫を端から端まで、全員の耳を貫き――弾を弾き返した。一発は銃持ちのキシンへ真っ直ぐ。もう一発は、クマの歩を読んでいた奴の方へ。
「当たったぁ! いくぞ!」
周波数は二体の血に、誤った歯車のように食い込んだ。体は固まり、もはや何ひとつ動かない。
喉に昇らせた最後の血で、フクロウは一体目の背骨を横から断ち、その体を投げ飛ばした。
「クマァ! 受け取れェ!!」
クマは跳び、空中でその体を掴み、膝をついて硬直しているもう一体めがけて叩きつけた。残った周波数と血のすべてを左の拳に注ぎ込む――その手は現実から外れ、行きつ戻りつしながら、生きた削岩機と化した。
「共鳴振動――」
彼女は倉庫の天井へ跳び――ビルが崩れるような勢いで落ちた。左の手を胸の傍らに掲げたまま、解放の瞬間を狙って。
ドォォォォンッ。
力が硬直した体を貫いた。震えが毛先の一本一本まで駆け抜け、どのキシンの心臓も同時に止まった。床が陥没し――倉庫の果てに巨大な穴、火口のような窪みが開いた。
フクロウはその光景を見た。
そして、気を失った。喉を動かし続けるための血まで使い切っていた。電源の切れた体に、力を入れる場所などない。
静寂が戻った頃、四体はすべて死んでいた――うち二体は、身内の弾に倒れたものだ。
クマは壊れかけの体を、ゆっくりゆっくり起こした。血はすべて腕へ流れていた。腕は真っ赤に脈打ち、今にも爆ぜそうなほど速く打っている。顔から血を滴らせ、服は裂け、足を震わせながら、彼女はフクロウのもとまで歩き、気を失った体を肩に担ぎ上げ、街道を下り始めた。
王都のすぐ近くで、闇の中から一台の車が警笛を鳴らした。彼女は道の真ん中に足を踏ん張り、無理やり停めさせた。運転席の窓に近寄る。
「俺たちを診療所まで運べ。断るなんて考えるなよ。行くぞ」
運転手は震え、叫びそうになった――が、気を取り直した。
「わ、わかった……乗ってくれ」
クマはフクロウを後部座席に放り込み、自分も続けて乗った。
「闇医者のジイさんの診療所だ。地区の近く、王都を出る街道沿いにある」
ほどなくして、診療所に着いた。ジイさんは別のハンターを診察している最中だった。クマは戸口から怒鳴った。
「帰れ、小僧。俺たちのほうが急患だ」
そのハンターは彼女を睨みつけ、その巨体を値踏みし――治療費も払わずに出ていった。
「見てみろ、お前がしたことを! 客を追い払いおって、この乱暴者! 娘の学費をどうしろっていうんだ?」
「安心しろ、金は払う。だがその前に、そいつをなんとかしろ。俺よりボロボロだ」
クマはフクロウを診察台に放り出した。ジイさんはため息まじりの顔で見下ろした。
「どこから来たんだ、お前らは。こいつを見ろ! もう少しで『埋めてくれ』と頼まれるところだったぞ。手当てはしてやる――お前もな。だが礼金は一刻も早く貰うからな」
「ああ、分かった分かった。ちょっと待ってろ。金を取ってくる。それまでは、そいつを頼む」
第6話をお読みいただき、本当にありがとうございます! 今回はバトルシーンをたっぷり入れてみました。楽しんでいただけましたか? よろしければ、クマとフクロウの戦闘シーンの感想をコメントで教えてください! 評価の☆もぜひぜひお願いします!! ではでは、また金曜日に会いましょう!!!




