ルームシェア
私は友人とルームシェアをしている
他の誰よりも1番歴の長い友人だ
そう誰よりも
彼は急に仕事を辞めたそうだ
県外から地元の私の所に帰ってきた時には
昔の面影があまりなかった
実家に急に帰ると両親に心配をかけるので
両親には仕事を辞めた事だけ伝え
少し落ち着いたら帰るとの事
「久しぶりだね」
「久しぶり」
それが十数年ぶりの会話だった
久しぶりの電波の声でなく
彼の口から出る彼の声
「今日から少しの間お世話になります」
「何だよ急に改まって」
少し気まずそうにする彼に私は言う
1番付き合いの長い友人に使われる敬語は
気持ち悪いものがあった
「家のものは好きに使ってくれていいから」
「ありがとう」
昔から彼と私は似ていた
好きな物も好きな色も好きな食べ物でさえ
本当によく似ていた
「やっぱり落ち着くよここは」
「それはよかった」
そんな彼とルームシェアが今日から始まる
最後に会ってから何年経っただろうか
長年会っていなかったが
昔と同じテンポでの会話ができるのは
私も嬉しい事ではある
「変に気を使わなくていいから」
私は自分の煙草に火をつけ大きく吸い込む
メンソールの煙草は
頭がクリアになる気がする
そんな気持ちだけで何年も吸っている
これに依存しているのも事実であり
何かを区切る度に吸っている
ヘビースモーカーと言うのだろう
「助かるよありがとう」
彼もソファーに座りながら
煙草を吸っていた
吸い方が昔より様になっていると思う
彼も煙草を吸いながら
物事や言葉を区切る癖がある
「銘柄もお互いずっと変わらないのな」
彼は笑いながら言う
昔から彼とは煙草の銘柄まで一緒だった
落ち着く味まで同じなのだ
「ある程度落ち着いたらあいつが会いたいって」
「あいつ結婚して子供もいるんだろ?」
「凄いよね」
そんな他愛ない会話をしながら
私は簡単な仕事の準備をする
「私は仕事に行ってくる」
「分かった行ってらっしゃい」
これがルームシェアを開始した
初めの日の出来事だ




