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捨てられ令嬢は、静かに幸せを取り返す  作者: ぷく


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12/15

崩れる王都、触れ合う想い

王都では、アドリアンの屋敷が差し押さえられた。


不正な税の操作。

商人との癒着。

さらに、エリスの功績を横取りしようとした証拠まで見つかる。


「俺は貴族だぞ! こんな扱い――」


「黙れ」


調査官は冷たかった。


「あなたは地位を利用し、婚約者を切り捨て、

功績を奪おうとしました」


「……あの女が、勝手に」


「“あの女”?」


書類が投げ出される。


「あなたが無能と嘲笑した令嬢が、

今や王国で最も成功した領主です」


アドリアンは言葉を失った。


さらに追い打ち。


隣にいた元恋人も、別件で拘束された。

賄賂を受け取り、噂を流し、エリスを貶めた張本人だった。


「私は悪くないわ! 全部あの女が――」


「黙りなさい」


二人は別々に連れて行かれた。


誰も助けない。

誰もかばわない。


それが、彼らの築いた人間関係の結果だった。



辺境の夜。


月明かりの下、見張りの交代を終えたレオンとエリスは、城壁の上に並んで立っていた。


「……静かですね」


「ええ」


風が、髪を揺らす。


「さっき、王都から報告が届きました」


エリスは小さく言った。


「元婚約者は、爵位を失うそうです」


「……そうですか」


レオンは、それ以上言わなかった。


「……不思議なんです」


エリスは夜空を見上げる。


「昔は、あの人に嫌われるのが怖くて……

ずっと、顔色をうかがっていました」


「今は?」


「今は――」


言葉が途切れる。


「今は、怖くありません。

ここに、守ってくれる人がいるから」


レオンの指が、わずかに動いた。


「……それは、私のことですか」


「……はい」


沈黙。


近い。


思ったよりも。


「エリス様」


「……エリスで」


彼女はそう言って、視線を落とした。


「エリス」


その名前を呼ばれただけで、胸が跳ねる。


「あなたは、強い」


「強くありません」


「いいえ」


彼は静かに言う。


「誰かに傷つけられても、

誰かを傷つけ返さなかった」


エリスは驚いたように彼を見る。


「……そんなの」


「それが、一番難しい」


レオンは、一歩近づいた。


風の音が消えたように感じる距離。


「……近いです」


「嫌なら、離れます」


「……嫌じゃ、ありません」


声が震える。


レオンは、そっと彼女の頬に手を伸ばした。


触れるか、触れないかの距離。


「……許してください」


「……何を?」


「騎士として、ではなく」


一瞬のためらい。


そして――


軽く、唇が触れた。


ほんの一瞬。

確かめるような、優しいキス。


エリスの目が見開かれる。


「……っ」


「……すみません」


「……謝らないでください」


彼女は、胸を押さえながら言った。


「心臓が……うるさいだけです」


レオンの耳も赤かった。


「……私もです」


二人は、同時に小さく笑った。



その頃、王都の牢獄で。


アドリアンは、暗い部屋で座り込んでいた。


(なぜ……こうなった)


思い出すのは、辺境で微笑むエリスの姿。


(俺が、捨てた……)


誰も、来ない。

誰も、手を差し伸べない。


それが、彼の“結末”だった。



月明かりの下。


エリスとレオンは、並んで歩いていた。


「……また、明日も忙しいですね」


「ええ。でも」


レオンは、そっと彼女の手を取った。


「一人ではありません」


指先が絡む。


今度は、離れなかった。

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