7.
私は別に吸血鬼でもなんでもない。
ただ、血が傷口からあふれるのが怖くて、拭ってしまいたくなるだけだ。飲んでしまいたくなるだけだ。
もう、中村さんの意識はなくなって、私に噛み千切られた手首からも、
赤いものは出なくなった。
「私ね、中村さんに会えてよかったよ。私もいつか中村さんみたいになれるかな? ねえ、中村さん」
何が悪いのかを、少し考えた。
何回考えても、私の今していることこそが、一番悪いように思う。
でも、素直にごめんなさい。と言えない。
「殺すことしかテキパキできないなんて、私ってやっぱりグズなのかな。ねえ、中村さん」
ぱき、と枝を踏む音がした。振り返ると、尻餅をついた上原先生がいた。
「こんばんは、先生。もしかして尾行……とかですか?」
「お、お前たちが、山に入ってくから」
「先生も、やっぱり私が中村さんにいじめられているって思ったんですね」
「なかなか降りてこないからもしやと思ったんだが、中村……どうしたんだ? なんで、寝てるんだ、いや、おい、まさか、その子……」
「先生のこと苦手な理由がわかりました。私、心配されるのに慣れてなくて、どう応えたらいいのかわからなかったんです。ごめんなさい」
「やっぱりいじめられてたのか……。いや、おかしいよな。この場所でそれは、その子……死んでる、のか?」
「先生。それでも私悔しいです。私のことに気付いてくれたなら、どうして中村さんのことも気付いてあげてくれなかったんですか?」
私が立ち上がろうとしたら、悲鳴をあげる上原先生。
きっと先生から見れば、私は大八木さんと同じことをしているのだろう。
「な、何をしたんだ!」
先生の叫び声に、私は答えられない。
自分でも、何をしてるのかよくわからなかった。
終