6.愛の告白
顔を上げて、中村さん。
「うん」
あのね、中村さん、私ね。
「うん」
私ね。今からね、中村さんを殺すと思うんだ。
「……え?」
えっとね、上手く説明できるかわからないけれど、中村さんには教えてあげるね。三年前に私の家族を殺した人。大八木さん、って名前なんだけどね。
私が大八木さんを殺したの。
「……何? どうしたって?」
殺したの。その人はお父さんとお母さんと妹を殺して、その血を抜いて棄てたんだって。吸血鬼って言われてたけど血を飲んだのは私のだけ。
私が、「血を飲むの?」と訊いたから、試しに飲んでみたんだと思う。美味しそうに私の血を飲んでたから、なんだか気になっちゃって、どんな味なのかな、と思って帰ろうとした大八木さんを追いかけて……
「な、何言ってんのよ、そんなはずないじゃない。だってあんたが見つかったとき本当は出血多量で死に掛けてたって……」
うん、確かに血をいっぱい出しちゃった。でも死ななかったの。それでこの山の中までついてきて手首に噛み付いて、一口血を飲んだら何でかな、元気になっちゃって、だからもう一口飲んで、もう一口飲んでってしていたら、大八木さん……死んじゃった。
「な、なんで殺人鬼が自分の血を死ぬまで飲ませるのよ」
うん。不思議なんだけどね。大八木さん私を見て、怖くて動けなくなったみたいなの。私が大八木さんを見て動けなくなったみたいに。そんなに私が怖かったのかな……。ねえ、中村さんから見て私ってどう見えるのかな? 動けなくなるほど、怖い?
「な……何を、言ってるのよ……」
うん。やっぱり怖いみたいだね。……それでね、どうしたらいいのかわかんなくて、とりあえずお家に帰って、お腹がいっぱいになったからかな? 玄関で、眠くなって……。
目が覚めたら、私は人を殺して血を飲むようになっちゃってたの。
「う、嘘よ」
本当だよ。だって、人はいなくなってるでしょ?
「じゃあ、行方、不明者って」
……きっとね、昔からいるんだと思う。
どうでもよくなって人を殺しちゃう人って。
そして、そんな人を見てどうでもよくなっちゃう人もきっといて、私みたいに、人を殺すことさえ、どうでもよくなっちゃう人もいる。
よくわかんないけれど、こういうの、模倣犯って言うのかな? 違う?
「じゃあ、……吸血鬼っていうのは」
私ね、自分が嫌いだった。……本当に、本当に人殺しなんてしたくないし、きっとわたしは悪い奴なんだ、ってわかってる。でも、どうでもいいの。
「い、いや。なに、放して。ちょっと、何笑ってんのよ。」
どうしようもないの。
もう、どうでもいいの。人を殺してでもいないと、人生をやっていられないの。
「な……、あ、あんた。私のこと恨んでるんでしょ、だ、だったらそう言いなさいよ」
ううん、私、中村さんに会えて本当によかった。だって、中村さんって優しくてかわいくて頭がよくって友達がいっぱいいて……。中村さんのおかげで、死にたくない。生きたいって、思えるようになったんだよ? ……でもわかったよ。今の中村さんがすごく悲しい、なくなってしまいたい、そう思ってるのがよくわかったよ。私にはこれくらいしか出来ないから。せめて、
殺してあげるね。
「なに? いじめの仕返し? こんなことしていいと思ってんの、や、いや、やめて。なんで私の手を掴んでるのよ!」
中村さんの手って、あたたかいね。
「いや、いやああああああああ」




