二十三話
お待たせしました。第二十三話です!
今回はちょっと短めです。どうぞ!
業魔には、様々な種類の個体が存在するが、それらは大きく分けて3つの分類に分けられる。
まず一つ目は猿、鳥と言った自然動物型。
これが現時点で最も多く存在が確認されている個体の系統だ。
個々としての戦闘力は微々たるモノだが、個体数が圧倒的なのが特徴である。
次に二つ目、伝説上動物型。
これは、各国の神話やおとぎ話に出てくるような「実在しない動物」を具現化したかのようなの形状の個体の事を総じて伝説上動物系統と呼ぶ。
個体数は少ないが、個々としての戦闘力はかなり高く、注意が必要である。
そして三つ目が、大規模災害型である。
個体数は限りなく少なく、滅多に出現することはない。
現に、その存在が確認されたのは2012年の業魔復活の際に姿を現した個体が最初で、2016年現在まで存在は確認されていない。
しかし、その戦闘力は圧倒的で、万が一民間人のいる居住区や街に進行した場合、大地震や竜巻といった大規模自然災害に匹敵するほどの被害をもたらすことから、その名がついた。
仮に存在が確認された場合、その個体がいる場所の30キロ圏内が立入禁止区域に指定され、さらに100キロ圏内の街や居住区に避難勧告が出される。
そして現在、青山昇のいる会議場では、三つ目の大規模災害型についての議論が白熱していた。
初めて大規模災害型が確認されたのは、2012年5月13日。
業魔復活の際に、日本に出現した。
ヤマタノオロチ型と名付けられたその個体は、かつて日本神話に登場したヘビ型の怪物である「ヤマタノオロチ」を具現化したような形状をしていた。
神話に出てくるそれは、8つの頭と8本の尾を持ち、目はホオズキのように真っ赤で、背中には苔や木が生え、腹は血でただれ、8つの谷、8つの峰にまたがるほど巨大とされているが、背中の苔や木など以外はそれとほぼ合致するような外見で、島根県北部に突然姿を現したという。
日本の国土で暴虐の限りを尽くしたヤマタノオロチ型は、その後日本海を渡ったのか、アジアなどで存在が確認され、甚大な被害をもたらした。
これに耐え兼ねた魔術連合国家群は、第10、11魔術師団と第9独立魔術師団で編成された討伐連合軍を結成。
30万人規模の包囲網までをも形成し、ついに2014年8月24日。ヤマタノオロチ型討伐作戦を展開した。
しかし、ヤマタノオロチ型の圧倒的な戦闘力を前に、死傷者が続出。
30万人規模だっはずの討伐連合軍は壊滅寸前にまで追い込まれた。
と、このように、大規模災害型は、存在そのものが天災と言われており、出現しただけでどれだけ危険な存在かというのが良く分かると思う。
議論の最中、ある人物がこんなことを言った。
「今回の業魔の大量出現は、大規模災害型の予兆なのではないでしょうか?」
理にはかなっているかもしれない意見だった。
今現在、誠たちが戦っている業魔の数は約4万。一度の出現数に関しては、近年では類を見ない程の数だ。
どんな自然災害にも、なにかしらの予兆はあるものだ。
たとえば地震なら、地震雲が出現したり、いち早く危機を察知した鳥たちが一斉に飛び立ったりといった具合にだ。
一方でこんな意見もある。
「何をバカな。大規模災害型など、そうそう現れるはずもない。」
前途の通り、万が一大規模災害型の存在が確認されてしまった場合、30キロ圏内が立入禁止区域に、100キロ圏内の街や居住区に避難勧告が出されるのだ。
そんなにちょくちょく何回も出てこられたら今頃人類は全滅していただろう。
さらにはこんな意見も。
「しかし、以前出現した時は、魔術師団が一つ壊滅したそうじゃないか。そうやって割り切ってしまうにはリスクが大きすぎるんじゃないのか?」
宣告説明したヤマタノオロチ型討伐作戦で、特に被害を受けた第11魔術師団は、その時を以て事実上壊滅。
ヤマタノオロチ型が出現してから4年が経った今でも、部隊の再編には、目処も経っていない状況だ。
この事実を加味すれば、無視してはいけない問題であろうことが容易に想像
できる。
と、言った具合で、現在、会議場は大いに盛り上がっている。
これを「長所」とするのならば、この場における「短所」とは、おそらく「意見が多すぎて収拾がつかず、無駄な論議が繰り広げられている」と言う事であろう。
それを察した議長が、マイクで「静粛に」と一旦呼びかけた。
静まり返った会議室に、議長の口から放たれた言葉が、マイクを通じて会議場に響き渡る。
『このままでは時間が勿体無いです。そこで提案なのですが、その「大規模災害型」の戦闘力が、どれほどのものかを聞こうじゃありませんか。』
数秒間の沈黙が、その場を支配し、やがて一人の代表が口を開いた。
「何を仰るかと思えば……大規模災害型の戦闘力などわかるはずがないでしょう!」
それを引き金に、周囲から非難の声が上がる。
「そもそも、誰に聞くというんですか!今ここに大規模災害型と実際に戦ったことのある兵士を呼んでこれると言うんですか?」
「適当なこと言って茶々入れないでくださいよ!あなたそれでも議長ですか!」
完全に頭に血が上っている代表たちのブーイングは収まることを知らない。
しかし、議長は呆れたようにため息を吐くと、代表達にこう言った。
『あなたたちこそ、何を言っているのですか?その大規模災害型と戦った人間が、この場にい一人いるでしょう?』
何かしらの反論が訪れる前に、議長は言った。
『そう、青い髪をした一人の青年がね』
瞬間、代表たちは全てを悟った。
彼らは忘れていた。とある伝説を。
諸君らは前途の「ヤマタノオロチ型」についてのエピソードの中に疑問を感じただろうか?
くどいようだが、大規模災害型の戦闘力は圧倒的で、討伐連合軍は壊滅寸前にまでなった。
事実、第11魔術師団は壊滅し、再編には目処も立っていない。
では、何故同じく討伐連合軍にいた第10魔術師団は、今、ウズベキスタンで業魔と戦っているのか?
あの流れなら、第10、そして第9独立魔術師団も壊滅していたはずだ。
それが何故、壊滅を免れているのか。
答えは単純明快。「ヤマタノオロチ型」が撃破されたからだ。
しかしここで再び疑問が生じる。
なら「ヤマタノオロチ型」は誰に撃破されたのか?
討伐連合軍が壊滅寸前から持ち返して倒した訳ではもちろんない。むしろ、そんなことが可能な奥の手があるなら、最初から使えばいいのだ。
かといって、上層部が増援を派遣したわけでも無い。彼らは増援を送るという選択肢より、核兵器の使用を検討していたからだ。
なら誰が?その答えは―――
「女神……」
代表の誰かが言った言葉に、議長は大きく頷いた。
『そうです。ヤマタノオロチ型を討ち滅ぼしたのは、二人の女神だったではありませんか。』
「二人の女神」伝説は、ヤマタノオロチ型を語るにはなくてはならない存在だ。
一人は禍々しい色をした二本の刃を携え、もう一人は灼熱の炎を自在に操る技術を持った、そんな二人の女戦士の伝説。
その華麗かつ、豪快な戦いぶりは、見るものに希望を振りまき、そして受けるもの―――業魔に絶望を撒き散らした。
こうして、討伐連合軍をさんざん苦しめた「ヤマタノオロチ型」は手も足も出ないまま駆逐された。
絶望の中降り立った、二人の女神。
命からがら生き残った兵士たちは、涙を流しながら彼女たちをこう呼んだ。
「勝利をもたらす戦の女神、ヴァルキュリア」と。
その英雄がこの場に一人いる。
そんな誰もが知っている「伝説」を忘れていた代表たちは一斉にある方向に目を向ける。
目を向けた先には、かつて大規模災害型から人類を守り、全世界にその名を轟かす英雄が鎮座しているのだ。
誰よりも大規模災害型の恐ろしさを知っている、そんな英雄がいるはずのその席には―――
「ぐー……ぐー……」
一人の青年が、堂々といびきをかきながら寝ていた。しかも机に突っ伏してよだれまで垂らしながらだ。
実は、彼らはもう二つ、忘れていた事柄があった。
一つはその英雄の片割れが、第12独立魔術師団総団長、青山昇であること。
そしてもう一つは、その青山昇がまともに会議に出席するなんてことがあるはずがないと言う事だった。
次回からは通常通りに戻ります!
従って投稿予定日は12月13か14日です。お楽しみに!




