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雷の戦女神(ヴァルキュリア)(凍結)  作者: yutaso
第二章 初陣、ウズベキスタン基地攻防戦
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二十一話

おまたせしました。第21話です。どうぞ

ナヴァーイー州、タムディ地区。

かつてそう呼ばれていたそこは、2012年の業魔復活の際に廃墟と化し、現在はそこに第10魔術師団に所属するウズベキスタン基地が設立されている。

が、荒廃したままの周辺地域は復興作業が停止しているため、原型を留めているものの、いつ倒壊するかわからない建物や、枯れ果てた木々などがあちこちで見られる。

ここが、北条誠ら4名の新兵が初陣を飾る戦場である。




―――軍用輸送機「C-1」(浜崎中隊所属)内部。

黒縁メガネ―――今はゴーグルだが―――の少年、新井健太はリュックサックのようなものを背中と体前部に装着し、緊張した面持ちで構えている。

彼の周囲にいる屈強な男達も同様の装備を軍服の上から取り付けている。

このリュックサックもどきは落下傘。いわばパラシュートだ。

背中に背負ったのは主傘で、降下中に何の問題もなければそれを使う。

そして万が一主傘に問題が発生した場合に使う、予備傘を体前部に取り付けている。

なぜこんなものを彼らは付けているのかは、いちいち説明する必要もないだろう。

機内に、ハリのある女の声が響いた。

「さぁ、野郎ども!お待ちかねのパーティーの時間だ!受付時間に遅れんじゃないよ!?」

声の主は赤い髪を肩にかからない程度の長さに切った女性だった。

瞳は鮮やかなクリアレッドで、黙っていればかなりの美人だ。そう、黙っていれば。

彼女の名は浜崎茜はまさきあかね。泣く子も黙る浜崎中隊の隊長を務める女性だ。

そんな浜崎隊長が右手を上げて合図をした。

この様子がコックピットに伝わり、コックピットである操作が行われた。

ガゴン、という音と共に輸送機の後部ハッチが開いていく。

上空との気圧差の影響で、機内が暴風で溢れたが、機内のものは何一つ飛び出すことはなかった。

「まぁ、十中八九歓迎はされないだろうが、せっかくの晴れ舞台だ!思う存分暴れてきな!」

「「「「「はっ!」」」」」

男達に混じり、健太が返す。

しかし、男たちと健太には決定的な違いがあった。

周囲の男たちが表情ひとつ動かさないのに対し、健太はと言うと先程から動悸が収まらず、目はあちこちに泳ぎ、顔は真っ青になっている。

理由は簡単。実は彼、かなりの高所恐怖症だったりする。

「各員!降下開始!」

そんな健太のことなどお構いなしに、今の言葉を合図に遊撃部隊の隊員たちが次々と機体から飛び降りていく。

約2秒の間隔をあけて一人、また一人と機内から消える。

そして10秒後。

「っ!」

意を決した健太が床を蹴る。

彼の体が宙に浮き、そのまま空へと吸い込まれた。

夕日が沈もうとしている空の下、一人の少年の絶叫が響き渡る。

「うわあああああああああああああああああ!!」




ウズベキスタン上空1000m。

そこに誠はいた。

これ以上ないほどの暴風が彼の全身をくまなく叩く。

輸送機の中からパラシュートもなしに放り出された時は心臓が止まるかもと思った彼だったが、自分にはこのままの勢いで墜落死することを避ける手立てがいくつかあるのを思い出して、先ほど落ち着きを取り戻したところだ。

「(スカイダイビングってこんな感じなのか・・・)」

どうやら思考もできるほどの余裕を取り戻したようだ。

と、その時。誠の耳に聞きなれない悲鳴が聞こえた。

「ん?」

声の方を見てみると、一人の少年が空中をくるくる回りながら恐怖の悲鳴を360度全方位に展開していた。

「(そういやアイツ高所恐怖症だったっけ……)」

今現在、パニックでおかしくなっているであろう友人に目線でエールを送ってから、彼は眼下に目をやり―――直後に凍りついた。

「……なんだこりゃあ」

そこにあったのは山や川などが広がる大自然でもなければ、一面何もない更地でもない。


戦場。


彼の視界の先に広がっていたのは、人間と業魔の熾烈な争いがあった。

視界の中央に捉えたのがウズベキスタン基地。その右側から黒い点が集団を作って塊となって迫っている。これが業魔だ。

それと対をなすように基地周辺に展開している無数の点。おそらくこれが基地に所属している魔術師だろう。

無数の点たちは、集団で固まったり、あるいはバラバラに動いたりと、変幻自在に動き回っており、黒い塊と点の集団の間で、魔法の光が瞬いている。

だが、それをものともせずに基地へと進撃を続ける黒い塊。数はほとんど減っていない。

対して無数の点たちは、迎撃や後退を繰り返していく過程でどんどん数が減っていく。

今の戦況は、圧倒的といっていいほど業魔が優勢なのがよく理解できた。

「……」

上空800m地点に差し掛かかったところで、誠は左手に魔力を込める。

その後、すぐに頭の中で術式を組み上げる。

この2つで、誠の左手首から先に、100万ボルトの高圧電流が発生した。

「俺が……」

左手を垂直に上げ、

「業魔を……」

ようやく誠たちの存在に気づき、上を見上げた業魔の内の一体をに狙いを絞る。そして、

「討つ!」

放たれた電撃は、音が地上に伝わる前に黒い影の内の一つを直撃。一瞬で全ての細胞を死滅させ、絶命させた。

「よっしゃ!まずは一匹!」

そうしてガッツポーズを決めた誠を敵と判断した黒い影が複数、誠がいる高度へと上昇を開始する。

黒い影の正体は、鷹や鷲と言った猛禽類を彷彿とさせる鳥だった。ただし、どれも全長は2メートル以上ありそうな怪鳥だったが。

羽毛をはじめとした全身の色はカラスのような黒。鋭い爪は血のような赤。

目から朱色とも橙色ともつかない光を放っているそれこそが、人類の天敵「業魔」である。

鳥型と呼ばれる、空中での活動を主とする業魔だ。

「上等だぁ……人間さまの力をなめんなよ!!」

手に再び電撃を発生させ、臨戦態勢を取る。

今、誠の戦いが始まる。




誠たちが戦闘を開始した頃。

「(あー眠い……)」

青山昇は、イギリス某所にある会議場で行われている会議に、眠そうな顔をしながら出席していた。

彼と補給部隊の頑獣郎のはトルコにある「エリア12」でヘリからジェット機に乗り換え、そのジェット機がロンドンの空港に着いたのが1時間前。

そこからバスなどの交通機関を利用し、会議場にたどり着いたのが会議の始まる数分前。

ギリギリで会議に出席したのはいいものの、なかなか自分が発言する機会もなく、やる気が萎えてきていた昇。

今現在は、ほどよく温度が調整された部屋の影響で襲ってきた睡魔と格闘中である。

「(俺もおやっさんみたいに観光とかしてーな……)」

なお、頑獣郎は会議が終わったら呼ぶように昇に告げた後に姿を消した。おそらくどこぞの店で酒でも買い込んでいるのだろう。

と、そんな時に。

『では次、第12独立魔術師団長、青山昇大佐。報告をお願いします。』

スピーカーから響いた声は会議場を取り仕切る役目を持つ議長のものだった。

確かに会議場の中央にいる議長が、何やらマイクを持っているのがわかる。

と、ここで解説しておこう。

ここでの会議は基本的に英語で進んでいく。英語が世界で最もポピュラーな言語だからだ。

故に、ここに出席する各魔術師団の代表たちは、基本的に英語をある程度話せるようにしてある。

だが昇はそう言ったスキルに関しては全くの門外漢で、英語など全く話せない。

もちろん発せられた言語は英語で、昇には理解ができなかったが、数字の「12」を指す「twelve」の発音を聞いて自分が呼ばれていることを察した昇は、慌てて手元の資料を見る。

「あ、はい!えーと……」

マイクで一応の応答をしたはいいが、英語が話せないためゴニョゴニョと口を動かすだけになってしまう。

なかなか言葉を切り出せない昇に、周囲の目が冷たく突き刺さる。

「(やっべ、今まで日本語でなんとか通じてたのにここ英語共通かよ!話聞いてなかったから全然気づかなかった……)」

大概こいつも馬鹿である。

「(どうする?英語なんて全く話せねーぞ?)」

と、昇が追い詰められた時だった。


―――あーもうじれったいわね!ちょっと代わりなさい!


脳内に響いた声に反論する暇は与えられなかった。

昇がなにか言い返そうとする前には、既に全身が赤い光に包まれていた。

赤い光の中で昇の人格と肉体が、もう一人の自分である焔のものと入れ替わる。

数秒後、赤い光が粒子となって消滅し、先程まで昇がいた場所には凛とした態度の焔が佇んでいた。

瞬間、会議場内に僅かな驚きが走る。

『あ、青山大佐!?』

議長も驚愕に目を見開いている。まぁ、さっきまでいた人間がいなくなって代わりに謎の美女が現れたのだから驚くのも無理はない。

冷たく向けられていた目線がなくなり、代わりに別の用途を持った視線が|(主に男性から)彼女に向けられる。

「(あー、男どもの視線がウザったい。だからあまりこういう場で活躍したくないのよね。)」

という愚痴を内心でこぼしつつ、彼女は完璧な発音で議長に言う。

『ご心配には及びません。議長。』

『そ、そうか。君は確か魔女化能力者だったな』

咳払いしながら言う彼の言葉には明らかに動揺の色が混じっている。

「(資料では読んでたけど実際見るのは初めてだった…って事かしらね。)」

と、適当に結論づけてから手元の資料に書かれた日本語の文を英語のものに変換しながら口にした。

今期入ったばかりの新兵などについて。

テスト二週間前が近くなってきました。これからは更新が一時的にストップすると思います。

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