第八話
おまたせしました第八話です。
どうぞ。
最初に飛び込んだのは他ならぬ俺だった。
「おらぁぁぁ!」
100万ボルトの高圧電流が発生している右手で、顔面めがけて掌打を繰り出す。
「ほう」
だが、それを団長に難なく避けられた俺は、今度は左手で拳を作り再び団長の顔面めがけて突き出した。
「あらよっと」
しかしそれも団長は難なく交わしてのける。
「おいおい?そんなんじゃいつまでたっても当たらないよ?」
「こんの!」
フック、ブロー、アッパー。
何度も何度も放った俺の拳はいずれもが空を切る。
そして7度目か8度目の一撃。団長はそれを手で受け止めた。
「(ハッ、かかった!受け止めやがったな!?)」
団長の体には、俺の体内で魔力から電撃魔法として変換された100万ボルトの高圧電流が流れ―――
「ん?どうした?」
「なっ!?」
信じられないことに、俺の電撃はすべて消滅していた。確かに俺の魔力は電撃に変換されていたはずだ。
本来なら団長の全身に高圧電流が流れるはずなのだ。
「何で……何で電撃が効かないんだ!?」
「にしても、ありがとよ。」
その言葉にハッとした俺は団長を見る。
団長は、俺の拳を手で受け止めたまま、もう片方の手で拳を作っていた。
「いきなり俺の間合いに入ってきてくれるとはな。歓迎するぜ。」
拳を掴まれたままではこの一撃をかわす事はできない。そう判断した俺は右手に拳を作り、力を込めた。
「挨拶代わりだ。取っておきな新入生その1!!」
俺と団長の拳が同時に動き―――団長の拳だけが俺の左頬を直撃した。
その凄まじい破壊力に、俺の体は10メートルほど飛ばされ、背中から地面に激突した。
「(何つーパンチだ・・・重すぎるだろオイ!)」
「おおっ、あんの金髪真っ先に飛び込んだぞ!」
「なかなか根性あるじゃん。」
「いや、あのバカがだらしない格好してたから舐められたんじゃねえの?」
副団長と尊が、誠の行動を素直に評価する横で、茜が昇のダメっぷりを推測する。
「……ダメ、動きが単調すぎる。」
冷静な思考で秋穂が目の前の戦いを指摘する。
確かに誠が繰り出している攻撃は単調なものが多く、いとも簡単にかわされている。
「もったいないな。あの金髪、魔法技術は一流と思われるんだが。」
副団長は、誠の両手に発生している火花を見て言う。
彼の見立てでは、誠の両手に発生している高圧電流は100万ボルトはくだらないはずだ。
独学で得た魔法技術で、これだけの出力を出すことができる彼は中級魔術師の中では最高位に匹敵する程のセンスを持ち合わせているはずだ。
しかし、動きに無駄がありすぎるため、いとも簡単に攻撃をかわされる。これでは宝の持ち腐れだ。
「……青山くんが攻撃を受け止めた。」
眼下に目をやると、誠が振るった8度目の打撃を昇が素手で受け止めていた。
「金髪くん、何故!?みたいな顔してるね~」
「そりゃ「魔術相殺」なんて学校じゃ習わないだろうしな。」
茜が言った「魔術相殺」とは上級魔術師になった時に最初に教わる技法で、その名の通り「魔術によって発現した事象」を打ち消す効果を持つ。
方法としては、「魔術によって発現した事象」に対して同等、またはそれ以上の魔力をぶつけることで消滅させると言うものだ。
「あ、昇の野郎ついに新人をぶん殴りやがった!」
見ると確かに昇が拳を振り抜いており、誠はかなりの距離を吹き飛ばされている。
「お兄ちゃん容赦ないな……。」
桜花が地面に背中から叩きつけられる誠を見ながら言った。
「さて、新人君たちはどうする?」
彼らの戦いは中々に面白みがあり、副団長は自動販売機で購入した缶コーヒーを片手に笑みを浮かべた。
「よそ見してていいんですか?」
昇が振り返ると、新入生その2―――多村信司の炎を纏った剣が襲い掛かった。
「おっと!」
幸い、昇にとっては大した速度ではなかったので難なく交わすことが出来た。
「まだまだ!」
さらに二回、三回と剣を振る多村信司だが、いずれもが空を切るばかり。
だが、彼の太刀筋がダメなわけじゃない。昇が優秀すぎるのだ。
「そんな剣速じゃいつまで経っても俺には当たらないぞ~?」
だが、そんな時。粉砕用の金槌で殴られたような衝撃が、背後から昇の後頭部を襲った。
「!?」
痛みと驚きで一瞬だけ混乱する思考回路をすぐに整え背後を見ると、氷のグローブをつけた新入生その3―――野上悠斗がいた。
昇はこれまでの事実から即座に思考を回転させ、一瞬で新入生達の手の内を見破る。
「(なるほど、その1を特攻させて俺の注意を引き、その内にその2その3を左右に展開。2人で前後からの波状攻撃を仕掛ける。そして―――)」
100m先で「M16」を構えた新入生その4―――新井健太を見ながら思考を続ける。
「(2人が離脱した後に、その4が構える「M16」から放たれた5.56mm弾が、俺を襲うと。まぁ、初めてにしちゃ上出来だ。だがな―――)」
内心で新入生に評価を付けながら、昇は叫んだ。
「バレバレだぞ新入生共ぉ!!」
昇は目の前にいる信司の顔面に右の拳を。背後にいる悠斗の顔面には左の肘をそれぞれ叩き付け、怯ませる。
その後、左手で信司の頭を掴むと、そのまま力任せにブン投げた。
投げた先にいるのは―――M16を構えた健太で、対応が遅れた健太は飛んできた信司と激突してしまう。
そして肘打ちで怯ませた悠斗に向き直ると、鳩尾に左の拳を抉り込ませ、さらに怯んだ所に右拳で顎を打ち抜いた。
悠斗の体が2メートルほど上に飛び、3メートル先に落下する。
「ぐ…ぅ……。」
意識はあるようだが中々立ち上がれずにいる悠斗。
「オイオイそんなモンか?そんなんじゃ俺は―――」
倒せないぜ?と続くはずだった言葉は、
「おおおおおおおおおおおおっ!!」
突如響いた怒声によって遮られる。不屈の精神で起き上がった誠のものだ。
声の向きに振り返った昇に襲いかかったのは誠のドロップキックだった。
「ぐあっ!」
思わず後方へ吹き飛ぶ昇に、誠が叫ぶ。
「勝手に俺の存在無視してんじゃねえよ!!」
右手から電撃を放つ。
その電撃は寸分の狂いもなく、昇へと命中し―――
激しい爆発音と共に、黒い爆煙を発生させた。
「お、あの剣持った奴が後ろに!」
「……おそらく金髪の攻撃で青山くんの注意を引いている内に、背後に回ったんでしょう。」
実況と解説のように言う副団長と秋穂の言葉を聞きつつ、雫は眼下の戦いに意識を集中した。
新人たちの戦法としては、まず誠を特攻させ、注意を引く間に信司、悠斗の2人を展開。
可能な限りダメージを与えた後、後方でスタンバイしている健太が弾丸を撃ち込む。と言ったものだ。
しかし相手の戦術が分からない以上、この作戦は有効ではない。
誘うように牽制をしつつ、相手の出方を伺うのが定石のはずだ。
「(戦術面じゃまだまだね。)」
かつてロシアへ赴き、そこで地獄のような戦いを生き残った雫にとって、戦術とは水よりも大切なものだ。一つ小さなのミスが、敗北―――死に繋がる。
「……パッとしない戦いぶりね。」
冷たい目で、目の前の戦いを見下ろす桜花。
「後先考えず突っ込むだけ。あれじゃ死に急いでるだけじゃない。どんな奴が来るのかと思ってたけど、案外大した事ないのね。」
「そうね。あの子達には悪いけど、確かに今の彼らじゃ、初陣で戦死しちゃうでしょうね。」
桜花の呆れたような発言に、楓も同意する。
「さて、これからどうなるかな。」
副団長が興味津々といった風に呟く。
戦いはまだ終わらない。
「……昼食を掛けた天川先輩にとっては致命的ですね。」
「ごめん秋穂ちゃん。今それについては触れないで。」
次回の投稿予定日は10月7日か8日です
お楽しみに




