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第13話 ぷるぷるスライム

 

 優しい兄さんとお姉さんとお婆ちゃんが僕の家族。

 この世界にきて、あったかい気持ちって、こういうことなんだなって、眠りにつくとき思う。

 前世でよく見た異世界転生の物語は、チートでハーレムな物語だったけど、異世界転生を体験した今の僕の環境は、そういうのじゃ全然ないんだけど、これはこれでいいかなって思ってる。

 子供らしいことをしても、怒られない。両親はいなくても、血のつながらない家族が、いつも僕を気にかけてくれる。

 大きい犬――ボスも僕の傍にいつもいてくれる。

 怒られるときは、僕が危ないことをしそうになった時ぐらい。

 ただ、みんな、僕を抱っこしようとするのは勘弁して……。


 今日もダンジョンに行くよ。

 日中はユジン兄さんのお仕事の人がたくさん出入りするようになったし、乳製品加工の工場から、うちのミルクをぜひ使いたいっていう会社の偉い人とかもやってきて、ウィル兄さんとアーサー兄さんは牛の世話をしながら、その対応に追われているので、小さな僕はお邪魔虫なんだと思うから、ボスと一緒にダンジョンに潜る。

 そして今日は虫のモンスターとは違うモンスターを発見。


 スライムだ。


 でも、このスライム、虫モンスターに囲まれていた。

 一生懸命逃げてるけど、端っこに追い詰められて、小さく丸まってる。

 僕の認識ではスライムって結構、強い。

 前世で見たスライムのお話を知ってるからかもだけど。

 なんでも溶解するイメージなのに、追い詰められてるスライムは僕がやっつけられる虫に囲まれぷるぷるしてる。

 え~どうする~?

 僕が虫モンスターをやっつけた後に襲われたら……。

 襲われたら……やるだけでしょ。やるしかないでしょ。


「ボス、げじげじ虫三体先に倒すよ!」


 僕の声を聞いて、ボスは「ワンワン」と吠えた。

 まるで了解!って言ってるみたいに。

 虫モンスターはボスにまたがった僕が素早くヨキを振り回してやっつけた。

 ついこの間、アーサー兄さんと潜って、げじげじ虫をやっつけるところを見てもらったんだけど、手放しでほめてくれたんだよね。


 ――ジャックとボスはすごいなあ、ボスの敏捷はさることながら、ジャックはヒットさせるのが上手い!


 そうなんだ。ダンジョン潜って、げじげじ虫モンスター退治を何度もした成果がでたのか、僕はげじげじ虫ならヨキでワンキルできるようになっていた。

 ボスの動きもいい。

 ヒットアンドウェイでげじげじ虫の攻撃をよけることができる。

 難なくげじげじ虫三体をやっつけたら、ドロップアイテムから、謎の食玩パーツが!

 これで、両足が揃った――!

 やった―!! わーい!!


 そして残るモンスターは隅っこでぷるぷるしてるスライム……。

 どうする?

 小さくてもスライムはスライムだし。


 バウバウ! ワンワンワン!!


 ボスがスライムに吠える。

 お前、俺達に害をなすなら、やっちまうぞとでも言うように。

 そしてスライムはその体積をさらに小さくさせてぷるぷるしてる。

 だいたいうちのダンジョンに入ってくる時点で、このサザランディア大陸モンスター最弱ランクレベルと言ってもいい。

 害虫と差がそんなにない。

 害虫っていうよりも、どっちかっていったら益虫かも。

 スライムって結構いろいろ役に立ってるんだよね。

 下水処理浄化とか、染料にもなったり、冒険者の装備とかあとは、馬車の車輪部分にゴムタイヤみたいにしてる人もいるらしい。

 これはウィル兄さんに聞いた。

 あと、ここの地域は馬車だけじゃなくて、オオトカゲみいたいなモンスターに荷台を牽かせててたりするし。牛とかもロバとかでも荷台牽いてたりするんだって。


 僕はよしよしとボスの首を撫でる。


「見逃してあげるけど、僕達に近づかないでね。きっと間違って倒しちゃうかもしれないから」


 僕はスライムそう言う。

 スライムはぷるぷるしたままその場から動かない。


「いいよボス。奥に行こう。つなげる食玩アイテムの腕部分か胴体部分がもしかしたら今回ゲットできるかもしれないし」


 僕はボスにそういって促すけれど、ボスはスライムに「いいか、わかったか!?」と念を押すようにスライムに向かってワンワンと吠え、それに満足したのか僕を乗せたまま僕のいうようにダンジョンの奥へと進んでいく。

 小さなダンジョン三階層に到着すると、芋虫モンスターが出現。

 畑の野菜の葉を食べる虫を大きくしたモンスターだ。

 きっとこれ、進化したら蛾とかになるやつだ。

 ボスはすでに臨戦態勢。

 グルルルと芋虫モンスターに向かって低く唸る。


「よし、今日は、虫モンスター多いね。気を引き締めてがんばろうね、ボス……GO!」


 僕はボスから振り落とされないようにボスの首輪を握って、ボスに突進の合図をした。

 ヨキを振り回して、芋虫モンスターをやっつけると、ドロップアイテム、食玩パーツ胴体をゲットできた。


「胴体だ! ねえ、今日はすごいね! ここのところ、牛の餌とか畑の肥料が続いてて、それはそれでよかったけど、やっぱり謎アイテムが揃うのはなんかわくわくするよね? ボス」


 僕がボスにそう語りかけると、そうだねというように「ワン」とボスは吠える。


「ジャーック!!」


 奥の方でウィル兄さんの声がする。ウィル兄さんの声を耳にしたボスが「ここにいるよー」って知らせるようにワンワンワンと吠えた。

 そしたら、なんかウィル兄さんの姿が見えたら、ウィル兄さんの横を小さなゴムまりみたいなのがコロコロコロって、横切って、僕とボスの後ろで止まる。


「……さっきのスライム?」


 僕とボスは後ろに隠れてプルプルしてるスライムを見る。

 ウィル兄さんが


「今横切ったのはスライムだよな?」

「うん……さっき、げじげじに囲まれてて、ぷるぷるしてて、ボスにもプルプルしてて、なんかかわいそうだから見逃したの」

「小さいけどスライムだからな……」


 スラッとウィル兄さんが剣を抜く、小さいスライムはさらに小刻みにぷるぷるしてる。


「ウィル兄さん、なんかこのスライムかわいそうだから、このまんまにしておこ」

「……見逃すのか」

「さっき言ったの。もう出てこないでねって、でも、きっとウィル兄さんにびっくりしてぼくのところまできたと思うの」


 ウィル兄さんは剣を鞘に納める。

 そして僕とスライムを見比べて、ボスの首をよしよしと撫でる。


「ジャック、もし、このスライムが襲ってきたら――」

「うん。わかってる」


 僕はヨキを握る。ためらわずにやるよって声にしなかったけどウィル兄さんには伝わったみたい。


「ならいいんだ。昼飯だってさ。三階層まで潜ってたのか……何かあったか?」

「つなげるアイテムが今日はとれたの!」


 ウィル兄さんはへんなモンスターはいなかったかって尋ねたかったんだと思うけど、僕はパーツが集まったことを嬉しそうに報告した。




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