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第12話 プレミアムミルク


 マリアお姉さんからダンジョン探索のOKをもらった僕は、毎日の畑と牛の水やりをすると、ボスと一緒にダンジョンに潜ることになった。

 もちろんボスも一緒だよ。

 ボスと一緒にダンジョンに行く時は放牧の時間で、牛達がボスのこと羨ましそうに見てる……気がする。

 気のせいかもしれないけれど。


 ダンジョンは一人で潜っても、モンスターの出現率は低い。

 そしてモンスターはだいたい大きな虫だから、ヨキでガツーンってやっつける。

 身体が小さいから力もなくて、ワンキルはできないけど、ボスの背に乗って、素早く移動することができるんだ。

 モンスターからドロップされるのはミスリル製の食玩ゴーレムのパーツだけじゃなくて、不思議なのがある。


「畑の肥料」

「牛の餌」


 っていうのがドロップされるんだよね。

 これはありがたく持ち帰って、牛にあげたり畑にまいたりしてるんだ。

 やっぱりあのミスリル製の食玩ゴーレムはレアなのかもしれないな……。

 そうやって僕がうちの敷地のちいさなダンジョンに一人で潜るようになって二週間経過したある日のこと。


 僕がダンジョンから戻ってきたら、なんか組合の人がうちにやってきて、おうちの玄関先で、ウィル兄さんとアーサー兄さんが話あってる。


「うちは爺さんが亡くなって、婆さんが心配だから俺達が戻ってきたけど、兼業だし、これ以上は作れない」


 ウィル兄さんのきっぱりした物言いに組合の人はがっくりと肩を落としてる。


「そうか……そうだよな……ウィルもアーサーもBランク冒険者だもんな……ヴェルター爺さんが亡くなったから、この牧場からの牛乳が組合に入らなくなることもあったんだし……それを思えば……でもなあ、人気なんだよ~最近ここの牛乳が~」


 組合のおじさんがごにょごにょ言ってる。


「じゃあ、値上げだ」

「は!?」

「希少価値を売りに出す。うちの牛乳がそんなに人気なら値上げする。いままでどおりの納入だが、値段を上げる。これ以上量は増やせねえからな」

「そんな~」

「大量生産に持ち込めないんだから仕方ないだろ? 悪いけどよ、そっちの方向でやってみてくれ、値段はとりあえず二倍」

「ううん」

「その計算で加工品にも回してくれねえかな?」

「うーん……チーズやバターなら価格上げても購入してもらえそうなんだが……」

「全部を加工に回した方がいいんじゃねえかな……でも、基本うちの牧場主は婆さんなんで、婆さんの意向を聞かないと」

「だな、俺達は実働でやってるけど、牧場主は婆ちゃんだから」


 アーサー兄さんも組合の人にそういって、組合の人は納得したようで帰っていった。


「ただいま……」

「お~ジャック、今日は謎アイテムは見つかったか?」

「見つからなかった。畑の肥料だった……なにかあったの?」


 ウィル兄さんとアーサー兄さんはアイコンタクトをしてる。


「まあ、悪いことじゃないんだ。多分」

「いいことだとは思う」


 そう言いながら、僕を抱っこするのはやめてほしいよ。

 記憶うっすらだけど、大人の記憶もあるから、恥ずかしいの。

 で、結局、夕食の時に、みんながそろったところで、ウィル兄さんとアーサー兄さんが夕方、組合の人とお話していた内容をみんなにお知らせした。

 ここの牧場主はもともとはお爺さんとお婆ちゃんだから、お婆ちゃんとみんなに、報告をするつもりだったらしい。

 ちゃんと牧場主をお婆ちゃんとしてたてているウィル兄さんらしい。

 内容はね。

 うちの牧場のミルクがとーっても市場で人気がでたらしい。

 ダンジョンのお水を飲ませてから、うちで飲んでるミルク美味しいねって、兄さん達もお姉さん達も、お婆ちゃんもこの牧場にいるみんな満場一致のご意見だったんだけど、どうやら、市場でもそんな雰囲気なんだって。

 なるほど。

 だから組合の人に値上げとか言ってたのか。


「婆ちゃん、それで一応値上げの方向で進めてみたらどうかって話して帰ってもらったんだよ、どうする? このままにしておくか?」


 アーサー兄さんの言葉にお婆ちゃん静かに頷く。


「値上げだね」

「わかった。加工品に回すのと、牛乳として売り出す比率は?」

「今のままでいいだろう」


 お婆ちゃんは即決だった。

 なんかカッコイイ。


「ジャックが持ってきたダンジョンのお水のおかげだね」


 お婆ちゃんが僕を見てニコニコ笑う。


「ぼくも、そう思ってた。お婆ちゃんもそう思う?」

「うん。思うよ」


 お爺ちゃんとお婆ちゃんだけだったけど、ウィル兄さんもアーサー兄さんもユジン兄さんもデイジーお姉さんもマリアお姉さんもここに住むから、みんなが美味しいミルクとか飲めるといいな。


 ……後日、ぼくのうちの小さな牧場が出荷するミルクは、市場ではプレミアムミルクとか言われるようになった。

 おうちの改装とか増築だけじゃなくて、牛舎のほうも、改装とか増築してもらえるぐらいに、儲けがでたんだって。

 あとね。

 ミルクで作られるバターやチーズも、プレミアムミルクのバターとかプレミアムミルクのチーズとか、やっぱり高値で取引されるようになったみたい。

 これでアルバイトの人を雇えるみたいで、僕は、ちょっぴり安心した。

 ウィル兄さんやアーサー兄さんが牧場のことをお任せしてダンジョンに潜れるようになるもんね。



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