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異世界日本  作者: F-3
19/52

第19話 エールスラント連邦



2037.4.21

日本国 首都東京

総理官邸 会議室

10:22 JST


「ではNSC国家安全保障会議を始めよう。まず防衛大臣から報告を。」


 内閣総理大臣は転移時と変わらず吉田総理である。転移後の初選挙で国民の支持を得て再選したのである。


「はい、分かりました。現在レムリア共和国の部隊の増強が確認されています。8個師団の12万人が現在前線に配備されています。」


 レムリア共和国軍の動向は全て日本国の観測衛星により全て監視されている。転移により全ての衛星が遮断され転移2年後には10基程度の衛星が打ち上げられていた。


「なるほど、空軍の方はどうなのだ?」


「数ヶ所の基地に初代ジェット戦闘機やレシプロ爆撃機を確認できました、しかし対空ミサイルは確認出来ませんでした。」


「いや、もしかして確認出来ていなだけかもしれん、ある前提で対策しておいてくれ。」


「了解しました。」


 おそらく対空ミサイルはレムリア共和国は保有していないだろう。しかしもしあったとしても自衛隊の保有する戦闘機なら問題無く交せるのだが、念の為である。


「続いて海軍です、レムリア共和国は5つの海軍基地と4つの艦隊が確認出来ました。空母は保有していません。戦艦長門クラスの戦艦が4隻確認出来、ロシア艦みたいな艦外に発射装置を取り付けた初期の対艦ミサイルを確認しました。かなり大きいので海自の対艦ミサイルを射程で上回る可能性があります。」


「なるほど、アウトレンジ戦法をとってくるか、NMRANA各国にも敵兵器の予想スペックのデータを送ってくれ。」


 基本日本より技術的に大分遅れているので兵器の予想スペックは大体分かるのである。


「了解しました。吉田総理、ノルマーク王国にFA-8戦闘機12機が配備されました。更にノルマーク共和国にはジェット機対応の飛行場が完成し、いつでも航空自衛隊の運用が可能な状態です。」


「ふむ、ノルマーク共和国には感謝しないとな、防衛省はレムリア共和国軍の侵攻はいつだと考えている?」


「そうですね、大体1ヶ月〜2ヶ月は最低でもかかるかと、」


「自衛隊の派遣準備をしておいてくれ、流石に野党も国民も危機感を募らせているしな、この前はエールスラント連邦大統領との会談だったからな、まさかエールスラント連邦が電力インフラを日本に任せると言うと思わなかったよ。」



 数ヶ月前に転移してきたエールスラント連邦は1960年代の技術力を保有しており日本を除いてレムリア共和国の次に技術力がある国家であった。4つの諸島で構成されている為、自然的に海軍力重視である。

人口は5300万人であり、兵力は40万人と自衛隊とほぼ同じである。戦艦は保有しておらず駆逐艦や巡洋艦が主力である。エールスラント連邦は日本と同じ資源が少ない国家であった為国交開設時に日本がNMRANAに招待して加盟したおかげで転移直後の資源不足から脱出できた為、対日友好度はすこぶる良かったのである。



「エールスラント連邦が我が国日本を信用している証拠ですね、最近はエールスラント連邦からの訪日観光客も増えましたしね。」



エールスラント連邦と日本との距離は最短で800kmと近く日本に沢山のエールスラント連邦の人々が観光に来ていたのである。

エールスラント連邦の人々からしてみれば日本は未来的であり自然が豊かである。エールスラント連邦は諸島なので自然は豊かだが山地が少なく日本のように山脈も無いのである。

エールスラント連邦の主力産業は漁業と観光業であるが自国消費分の工業品はなんとか自給していたのである。しかし島国な為食料自給率は漁業に関しては100%を超えているのだがその他は殆ど輸入に頼っていた為現在他のNMRANA各国から輸入している。



「しかしまさかあんな火力発電所で電力インフラを支えているとは思わなかったよ。前の世界のどっかの国みたいに偏西風に乗って日本に流れてこなくて良かった。」



しかしそんなエールスラント連邦にも1つ大問題があった、それは電力である。この国は殆ど山地がない為水力発電が出来ず火力発電に頼っていたのである。しかし火力発電所は大気汚染が激しくエールスラント連邦ではしょっちゅう停電が発生したのである。

電力は国が運営していたのだが2ヶ月前日本に相談にやってきてその場で日本の企業連合に電力インフラを任せます、と言ってきたのである。電力インフラは国家の重要なインフラでありそれを他国に任せる事など日本は考えられなかったのだ。

しかしエールスラント連邦は自国を助けてくれた日本を信用しており日本の技術力なら停電の問題も解決してくれると踏んだのである。そして1ヶ月前日本の視察団がエールスラント連邦に行き現存の発電所を全て取り壊し新しくする事にした。もちろんその金はエールスラント連邦政府が支払うのである。エールスラント連邦の火力発電所は日本からしてみれば古く効率も悪く汚染物質も大量に排出すると最悪だったのだ。



「しかしエールスラント連邦の火力発電所は効率が悪いな、1960年代の我が国もあそこまで悪くなかったぞ。」



エールスラント連邦の電力使用量は1200万キロワットであり北海道の2倍である。それなのに日本が1200万キロワットを火力で発電する6倍もの燃料を消費しており発電所の数も46ヶ所ととてつもなく効率から悪かったのである。

実際に日本の火力発電所を視察したエールスラント連邦政府関係者もこれが火力発電所か!?ととても驚いていた。彼らの火力発電所は煙突から煙がもくもくと出ているのが普通なのである。しかしエールスラント連邦も考えており風下に建設して、海側に流れるようになっているのである。その為火力発電所による公害は驚くほど少ない。



「まぁ、日本じゃあ火力発電所は予備ですからね、本当は取り壊したいのですが、もしもの時困りますからね。何しろ東北沖海底水力発電地帯のみで4800万キロワットを発電していますから。」



実は日本の電力発電量は2037年現在で2億6700万キロワットなのだがその内火力は僅か3700万キロワットなのである。水力は6800万キロワット、原子力は0、太陽光が5100万キロワット、風力が3400万キロワット、海底水力発電が9100万キロワットなのである。その為火力は予備の意味合いが強く日本全国に24ヶ所の火力発電所があるが3日に1回の割合程度にしか稼働していないのである。ちなみに最大発電量は3億6500万キロワットである。しかしエールスラント連邦は風はそこまで強くない。しかし沖縄と同緯度に位置している為日光が強く太陽光発電が向いていると考え各諸島に1ヶ所づつの計4ヶ所建設した。



「まぁ海底水力発電は自ずと設置場所が限られますからね。闇雲にはいかないんですよ。その分火力は楽でしたね。燃料や大気汚染の問題がありますがね。」



「昔に比べたら大分マシになったぞ。日本全ての発電所の有害排出物よりエールスラント連邦の火力発電所の有害排出物の方が断然多いくらいだからな。」


「しかしエールスラント連邦政府は電力インフラ設備だけではなく管理も日本に?」



実はNAMRANA加盟国で日本を除く5ヶ国は日本より技術レベルが低い為、効率の良い日本の発電所のみを建設してもらおうと考えていたのだが、配電システムまで差がありすぎて日本に運用してもらった方が効率が良い為日本にまかているのである。

その為日本が手掛けた国は電気料金が安くなり、停電も無くなったのである。そして日本はその電力インフラの輸出と維持で莫大な利益を得ているのである。



「新しく独立行政法人をエールスラント連邦政府の下に作らせて日本は技術などを提供したらいいと思うが。」


「そうですね、今度エールスラント連邦政府に提案しておきます。」


「頼んだよ。それでは防衛省はレムリア共和国に対する対策を頼んだ、」



そして吉田内閣総理大臣の一言で会議が終了した、転移から2年経ってもまだ落ち着かないようであった。





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