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五月十九日 午後四時十二分

 私は瀬川を訪ねた。


 執事長室。


 祖父の代から使われている部屋だ。


 重厚な机。


 古い柱時計。


 壁には歴代当主の写真が並んでいる。


「相談があります」


 私が言うと、瀬川は眼鏡を外した。


「珍しいですな」


 私は匿名電話の話をした。


 整備工場。


 石灯籠。


 修繕記録。


 全て。


 瀬川は静かに聞いていた。


 そして言った。


「確かに妙ですな」


「でしょう?」


「ただ、一つ気になることがあります」


「何です?」


 瀬川はしばらく考えてから口を開いた。


「旦那様――つまり先代様は、生前かなりの額の修繕費を匿名で支払っておられました」


「祖父が?」


「ええ」


 私は眉をひそめた。


「どういう意味です?」


「私にも分かりません」


 瀬川は首を振った。


「ですが十年ほど前から急に増えたのです」


 十年前。


 父が死んだ年だ。

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