0-23:「一緒に頑張ろう」
【0-23:「一緒に頑張ろう」】
「んで、ここでオレがドーンてしたらバーンてなって、そんでドカーンてやっつけたんだぞ!」
「すごいすごい! ゴウにいちゃん、ゆーしゃみたいだ!」
「おれにも出来る!? ドーンって敵をやっつけたい!」
きらきらと瞳を輝かせたトールたちは、全く詳細の分からない説明を聞いて興奮している。彼らには擬音語で語られる情景が、鮮明に脳内に浮かんでいるのだろう。得意げに語っていたゴウは、更に何事かを熱く解説していて、子供たちも真剣な表情で頷いていた。
「……何であれで分かるのかな。事前に聞いていても俺にはさっぱりなんだが」
「私にも分かんないなぁ。でも楽しそうだから、良いんじゃないかな」
少し離れた所に座るフィリオンとアイリスは、その様子を微笑ましく見守っていた。ただしフィリオンの顔には「着いて行けない」と書かれている。
遺跡での戦いから三日。戦士たちは未だツヴァイの町に滞在し、周辺の探索を続けていた。待機組と探索組に分かれるのはアインの町と同じだ。ゴウたち三人は町の散策も兼ねて、北区までトールたちの様子を見に来ていた。あれから命を狙われることもなく、普段通りに生活していたようだ。子供らしい元気さは相変わらずで、三人が家を訪ねると大喜びで招き入れられた。特に全力で構ってくれるゴウにはすっかり懐いたようで、彼の大雑把な冒険譚を飽きもせずに聞いていた。
「トール君たちがもう狙われずにすんで、本当に良かった。初日に居なかった野盗は、フィリオンたちが捕まえたんでしょう? 隊を分けておいて正解だったね」
トールたちを襲った野盗は、情報にあった人数の半分しか居なかった。残党はその日のうちには見つけられず、翌日戦士たちが遺跡で二手に分かれた直後、報復と言って姿を現したのだった。結果は当然の如く戦士たちの圧勝で、地下に進んだ者たちが戻って来る頃には、すでにフィリオンが転移魔法で自警団の所まで送り届けていた。
これでトールたちは安心だとアイリスは満面の笑みで話したが、一方のフィリオンは遠い目をしていた。どこか哀愁も漂っている。
「ああ。……うん、アイリスは居なくて正解だったよ。とても見せられたもんじゃなかったから、地上の戦いは……」
「えっ、どういうこと? 適当に懲らしめたってジャンは言ってたよ?」
「合ってるけどさ。合ってるけど……。自警団に送った時、俺ものすごく感謝されたよ、野盗から」
「???」
繋がりの分からない話に、アイリスは首を傾げる。支離滅裂だとフィリオンも気づいてはいたが、彼女へ詳細を話す気にはなれなかった。思い出したくもないと言うように、頭を抱え溜息を吐く。あの時、大暴れする仲間たちを見て、彼は地上に残ったことを後悔したぐらいだった。
(正義感の強い人たちで良かった。……本当に、味方で良かったなぁ)
敵に回したくないと一つ身震いした彼に、アイリスはますます首を捻るばかりであった。
セドナの調査――びっしりと書き込まれた紙の山を連日積み上げる、彼女の執念は凄まじいものがあった――の結果、結界装置は楔石で作られていることが判明した。楔石の性質を利用して、膨大な魔力と数々の魔法を劣化させることなく、長い年月に渡り維持していたのだと言う。
そして石同士が低確率ではあるが共鳴する現象に目を付け、これから結界装置の捜索には、楔石を探知機代わりにすることとなった。今回の一件でようやく一つ目を発見し、更に次への展望も見えてきた。しかし希望と同時に新たな問題も生まれてしまっている。
敵がなぜ結界装置を先に見つけていたのか。彼らはそこにあると知った上で、遺跡に来たように思われる。戦士たちの一歩先を行っているのなら、以降も同じ様に戦いになるだろう。今回のベルゼルビュートも深手を負わせたが、滅する寸前のところで逃げられたようだ。
(何度来ても倒すだけだけど、トドメ刺せなかったのは悔しいなー。……もっと頑張れってことかな)
未だ残る脅威を思い、ゴウは決意を新たにする。力の制御もそうだが、剣や魔法の技術もまだ修行が足りない。幸い今の彼の周りには、様々な経験を積んできた仲間がいる。一人で悩む必要は無いのだ。助けを求める声に手を差し伸べるのは、彼だけではない。
「ぼくね、ゴウにいちゃんみたいにがんばるよ。大きくなったら、とおさんとにいちゃんだけじゃなくてね、ゴウにいちゃんたちのことも助けに行くよ」
「ああ、期待してるぞ! オレもテオに負けねーように、頑張るからな」
楽しそうに宣言するテオの小さな頭を撫でながら、彼もまた眩しいぐらいに笑ってみせる。
子供たちはこれからも進む。悩みながら、それでも笑顔で、目指すべき姿を思い描いて。傍らを歩む者たちに「一緒に頑張ろう」と、自らも足を進めるのだろう。
【Die fantastische Geschichte 0-23 Ende】
風の封印編終了。




