さくほろチーズクッキーにチョコチップクッキー
だいぶお腹も溜まってきたところで小皿に取り出したのは二種類のクッキー。
小さめのそれは、おやつというよりもおつまみ用の甘さ控えめなクッキーだ。
余力があるときはデザートもパフェなど張り切ることもあるが……今日は色々あってお疲れ気味なので市販品でございます。
さくさくほろほろした食感のクッキーで、チーズ味は特にワインと合います!
甘いのが食べたくなったらチョコチップを、しょっぱいのが欲しくなったらチーズをとエンドレスリピートできちゃう。
ちょこっと摘まみながら飲むのにもお勧めです。
……若干一部は満腹なんて微塵も感じさせずに飲み食いを続けてらっしゃいますが。
鬼の胃袋はブラックホール説が綾の中で濃厚になった。
「……ねぇ、これもう一杯ちょうだい」
「カシスオレンジ、気に入りました?」
「べ、別に……」
プイっと顔を逸らすものの、おかわり五杯目。
どう考えても気に入っている。
「若ちゃんはね、素直になれないお年頃なんだってー」
カシオレと同じ色味のジュースをくぴくぴしつつ、蒼があっけらかんと口にした言葉に若葉が噛みつく。
「ちょっと!誰が素直になれない年頃なのよっ?!」
「誰って若ちゃん」
「はぁ?!」
ヒートアップする若葉に、なんとか話題を逸らそうと綾は蒼に会話を振った。
「蒼くんは若葉さんのこと若ちゃんって呼んでるんだ。可愛い呼び名だね」
「うん。だっておばさんっていうと若ちゃん怒るもん」
ぴしり、と女性一同が固まった。
若葉の外見は十五、六歳と店内の女性陣の誰より若い。
見た目だけでなく性格から見ても実際に彼女は若そうだ。
その若葉が“おばさん”。
なかなかのパワーワードだった。
「お、おばさん……」
綾ちゃんたちどうかした?と不思議そうな蒼と地味にショックを受ける綾たちに、杯の中身を吞みほした羅刹がちろりと蒼を横目で示して告げる。
若干呆れた表情だった。
「ただの関係性だ」
「え?」
「兄貴がそう紹介したんだろ。若葉はこいつの父親の妹だからな、“叔母”だろう?」
「な、成程!」
一同ものすごく納得した。
そして同時に安堵した。
年齢的なあれでのおばさんじゃなくて良かった。
何故なら自分がそう呼ばれたらすごくショックだから。
そして…………それは良かったんだけど。
羅刹さんが言葉を発する度に若葉さんたちが「統領(お兄様)が会話してるっ!?」って感じでものすごく吃驚した表情を向けてくるんですけど……。
鬼の方々の間でもどれだけ孤高の存在と思われてるんですか……?
綾としては内心そこを突っ込みたい。
だって妖力が高い故に他のあやかしが気後れするのはともかくとして、若葉に至っては身内だ。
もっとも、蒼の父親である羅刹の兄と彼は腹違いの異母兄弟らしいから、若葉とも母親は違うのだろうが……それにしたって兄妹だ。
嫌っているどころか、敬愛してるのは確実だし。
やっぱ妖力やらカリスマやらで近寄り難い存在なのだろうか。
羅刹さん、優しいのになぁ。
妖力による威圧感などまるでわからない綾は不思議な気持ちでクッキーを齧った。
「良かったらまた来てくださいね」
綾の言葉に鬼の一団さんたちの目が輝いた。
どうやらお酒もお料理もお気に召してもらえたようだ。
「あ、でも頻繁には厳しいです。人数も調整していただけると助かります」
ブラックホール胃袋を持つ鬼さんに連日団体で来られたらお店がまわらない。
そしてお会計。
「ちょっと、金額間違ってるわよ」
「間違ってません」
「個別会計ですか?それにしても金額が……」
「個別会計でもありません」
「「「はぁ?!」」」
「税込み合計金額です」
「待ちなさい!貴女どういう経営してるのよ?」
「迷惑料込みで50倍ぐらいとっちゃえば?」
「ぼったくりにも程があるのではっっ?!!」
「この金額ならまだその額の方が適正価格に近いかと」
「50倍がっ?!」
ご新規のお客さんにも料金設定にケチつけられました。
とりあえず一区切りで第一部的なのは完結になります。
お読みいただきありがとうございました!




