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上も下もない、広大な宇宙空間。
広がる暗闇の中に無数の星だけが点在している。
そこは自由で、しかしそれゆえに道標のない世界だ。
そんな世界の中を、彼女は漂っていた。
月の外側へ飛び出し、太陽系の公転軌道に乗り、アステロイドベルトを超え、その先へ――音もなく、静かに飛び続ける。
彼女は、そんな宇宙の中で、ふと誰かの声を聞いた気がした。
――キラナ――……
…………
「どうした? かぐや」
『いえ……』
男に呼びかけられた彼女――<かぐや>は答える。
表情が存在しないはずの<かぐや>の声は、どこか穏やかな表情を浮かべる少女を連想させた。
『――少し、懐かしい名前を思い出しただけです』
男と<かぐや>を乗せた人型の白い方舟は、宇宙の彼方へゆっくりと消えていった。
(完)




