ep-3
<セントラル・ベース>を後にし、メインシャフトを上がったベレンは、そこでツバロフ博士に会った。
彼女は、ベレンが帰ってくるのを待っていたらしい。
「どうだったね? 彼女は承諾してくれたかい?」
「はい。――喜んで、と」
「それは良かった」
ツバロフ博士は笑った。
「では計画通りに。いや――この先は計画なんて無いんだっけか……ふふふ……」
「出発の準備は?」
「もちろん、全て手配済みだ。あとは君達次第ということだな。じゃあ、任せたよ」
「はい。……行ってきます」
ベレンはツバロフ博士に別れを告げ、先に進む。
自らの宇宙服を確かめ、ついに<ドーマ>の出口へと至る。
そこは通称<ターミナル>と呼ばれる場所だった。
<ドーマ>と直結する月面宇宙港――普段は月と地球を繋ぐシャトルが発着する場所。そこに、大きな人型の影――人型航宙機<チラヴェーク>が屹立している。
<チラヴェーク>はベレンの姿を視認した瞬間に動き始める。
膝を突き、ベレンに向けてゆっくりと腕を差し伸べる。ベレンは慣れた様子で腕に取り付き、胸部のコックピットブロックまで歩く。
ベレンはひとりでに開いたコックピットハッチに滑り込む。
もちろんシートは一つだ。それで問題ない。
なぜなら、彼女はもう、ここにいる。
『おかえりなさい、ベレンさん』
<チラヴェーク>のコンソールが光り、聞き慣れた少女の声がする。
「ああ、ただいま」
ベレンは答え、宇宙服のヘルメットを脱ぐ。
既にコックピットは与圧されている。
「どうだい? その身体は」
『上々です』
少女の声――<かぐや>は答えた。
ベレンはメインコンソールに映った宇宙の星空を見ながら<かぐや>に声をかける。
「さぁ行こうか」
『はい、行きましょう』
<かぐや>が返事をする。
ベレンを乗せた<チラヴェーク>はゆっくりと上昇を始める。
(かぐや……君はもう<челове́к>だ)
ベレンは密かに思う。
コンソールの片隅に、彼らに向けた最後のメッセージが届いていた。
――Have a Great Journey, "NEXTSEEDs".




