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ベレンとキラナは<チラヴェーク>に乗って南東へ移動を続けていた。
徒歩移動と低空飛行を状況に応じて繰り返す移動は、かなりの時間を要した。
この移動方法で出せる平均速度は、航空機はもちろん自動車や列車を用いた移動よりも劣る程度になってしまう。
あくまで<チラヴェーク>は人型航宙機であるから仕方がないのだ。
そのため、二人は<チラヴェーク>の狭いコックピットシートに長時間座って移動することになった。
ある意味でキエフまで行く時よりも過酷な旅で、不便なことも多かった。
途中途中で<チラヴェーク>をこっそり駐機させては休憩を取ったり物資の調達に行ったりした。
何かと不便なことも多い旅だったが、しかし不思議とキラナはどこか生き生きとしていた。
あるいは不便だからかもしれないな、とベレンは心の片隅で考えていた。
不便さこそ旅の醍醐味である。ベレンはそういう考え方も持っていたし、キラナも実はそう感じているのではないかと思った。
<チラヴェーク>の操縦は、最初はキラナがほとんど担当していた。
ベレンは人型航宙機など操縦したことがないのだから、これは仕方のないことだ。
しかし、旅の途中でベレンは思った。
――これなら自分でも扱えるのではないか、と。