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Come back to the moon water  作者: 白古賀
Chapter3 <Fly to the Moon>
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24/45

3-2

「こうやってレバーを同時に倒すと、歩行します。歩行のスピードは概ね倒す角度に連動します」

「なるほど……想像以上にシンプルだ」


 <チラヴェーク>は誰もいない平原をゆっくりと歩いていた。

 その操縦を行っているのはもちろんキラナ――ではなくベレンだ。


 <チラヴェーク>の操縦系統には二種類ある。単一操縦(シングル)モードと複列操縦(デュアル)モードだ。

 単一操縦(シングル)モードが、二つある操縦席のどちらか一方のみの操作を受け付けるのに対し、複列操縦デュアルモードは両方の操作を同時に受け付ける。

 操縦が混乱する可能性があるが、うまく連携できれば便利だ。


 今は念の為複列操縦デュアルモードにした上で、ベレンが動かしている。

 <チラヴェーク>はゆっくりと大地を踏みしめながら、まっすぐ歩いていく。


「止まるときはレバーを戻せばいいのか?」

「はい」


 ベレンがレバーを中立の位置に戻すと<チラヴェーク>はゆっくりと停止する。


「それから、レバーをこのように前後逆方向に倒すと……」

「身体を捻る、か。では、片方だけ倒すと?」

「やってみてください」


 言われた通り、ベレンが右側のレバーだけ前に倒すと、右脚だけ一歩踏み出し、身体の向きが変わる。

 さらにレバーを倒すと、左足を軸に機体が回転を続ける。


「ふむ……レバーの動きに連動して移動方向を決める、か? しかしこれは……」

「厳密にはこれは、移動方向をしていしているわけではないんです」


 キラナは言った。


「レバーによって動かしているのは、機体の重心です。レバーを前に倒せば機体の重心が前に倒れる――そしてオートバランサーがはたらき、自動的に足を前に踏み出す、というプロセスです」

「重心が崩れることでそれを補正するよう、自動的に歩行を行う、ということか」

「はい。逐一四肢の動きを入力するよりも効率的だと思いまして。実際この操作方法は実績もありますから」

「なるほどな……言われてみると、確かに簡単に操縦できる」


 ベレンは頷いた。


「では次に重力制御装置の操作について教えてもらおうか」

「はい。こちらは左側の出力調整スライダーとベクター・ホイールを使います。出力調整スライダーは名前の通り発生させる重力――正確には機体にかける斥力――の強さを調整します。一方でベクター・ホイールは斥力の作用方向を操作するための――」


 キラナの説明はしばらく続く。


「……なるほどな。重力下の操作は一通り理解できた。ありがとう」


 しばらくしてキラナから一通りレクチャーを受けたベレンはそう言った。


「いえ、こちらこそ。私の負担を減らそうとしてくれてるんですよね」

「ああ。自動操縦装置があるみたいだが、二人とも操縦できるにこしたことはない。何があるかわからないしな」

「はい。正直に言うと助かります」


 キラナは息を吐いて、コックピットシートに背中を預けた。


「では操縦を預けても?」

「ああ、任せてもらおう」


 ベレンは操縦系統を単一操縦(シングル)モードに切り替え、重力制御装置のスライダーをゆっくりと動かした。

 <チラヴェーク>はふわりと浮き上がり、そのままゆっくりと高度を上げていく。


「さて、現在の位置は……」


 ベレンはナビゲーションシステムを確認する。


「このままイランを横断してインドを目指す、でいいな?」

「はい、インドに到達したら、西の海岸沿いに南端まで行きましょう。補給の問題もあるので、あまり遠い洋上飛行はなるべく避ける形で」


 キラナは頷いた。


「インド南端からは、洋上を飛んでまっすぐに目指します。――<モノケロス>を」

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