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Come back to the moon water  作者: 白古賀
Chapter2 <Running out from home>
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20/45

2-8

 結局、ベレンとキラナは同じベッドで寝ることになった。

 ベレンにとっては久々のベッドでの睡眠で、逆に違和感があるくらいだ。 


「……眠れませんか?」


 そんなベレンの様子を察してか、キラナが声をかけてくる。


「眠れないわけではない。……ただ正直、不安はあるな」


 ベレンは答える。


「こんな呑気に二人で寝て大丈夫だろうか、とな。確かに追っ手は撒いたが、我々を追っているのが彼らだけとも限らない……」


 平時ならともかく、今の状況でこのような睡眠をするのは、とても無防備なように思えてしまう。しかし、


「大丈夫です」

「どうしてそう言える?」


 ベレンの問いに、


「――分岐点を、超えたからです」


 キラナはそう答えた。


「……分岐点?」


 脈絡のない言葉に困惑するベレンに、キラナは説明する。


「未来の確率は事象に対して一定ではないんです。そして必ず、その確率が変動するポイントが存在します。それが分岐点です」

「ふむ……」


 ベレンはキラナの言葉を咀嚼する。

 キラナは時折、ベレンにとって不可解なことを言う。

 しかし彼女は賢い。ベレンが理解できないと思ったのなら、それは単純にベレンの理解力が追いついていないだけなのだ――そう思うことにしている。


 ベレンは一通りキラナの言葉を頭の中で、整理し、要約する。


「我々は逃げ切れるルートに入ったと、そう解釈していいのか?」

「はい。少なくとも、<チラヴェーク>を受け取るまでは」


 キラナはベッドの中で頷いた。


「私たちはこのまま寝て、明日のモーニングコールが鳴る前に普通に起きて、普通に朝食を食べて、普通に出発すればいいんです。旅行客みたいに」

「そうか……」


 キラナの言葉は、根拠が無いはずなのになぜか不思議な説得力と安心感があった。

 しばらく沈黙が続く。

 その後、キラナはぽつりと呟いた。


「家族なら……」

「――うん?」

「家族ならこうして同じベッドで寝たりするものでしょうか」

「どうかな……そうかもしれない」


 ベレンは答える。


「子供を持ったことはないから、わからないが」

「子供……」


 キラナは繰り返す。


「じゃあ奥さんは? 恋人は?」

「結婚はしたことがない。恋人は……昔に何人か」

「今は?」

「今は、見ての通りさ」

「見ての通り……」


 キラナはベレンの言葉を繰り返し、


「じゃあ、今は幸せかもしれませんね」

「幸せか。どうして?」

「だって――私がいる」


 キラナの意外な言葉にベレンは少し笑い、


「そうか……はは、確かに」

(聡い子だ。わざわざリラックスさせてくれようとしてるんだな)


 ベレンはそう言って笑ったが、キラナは答えず、寝返りをうった。


「どうした?」

「別に。まだ早かったかなって、そう思っただけです」

(早かった……?)

「おやすみなさい、ベレンさん」

「ああ……おやすみ」

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