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Come back to the moon water  作者: 白古賀
Chapter2 <Running out from home>
18/45

2-6

「……ち!」


 暗闇の中で、ルークは即座に一発だけ発砲。しかし銃弾は虚しく壁に当たる。

 部下の男が即座にマグライトを取り出し、部屋を照らすが、ベレンの姿はない。

 部屋には誰も居ない――ように見える。


「……お前は部屋の電源を復旧しろ」


 ルークは部下の男に声をかけた。


「コンセントをショートさせただけだ。さっき微かに電気火花の音がした」

「はい」


 部下の男は頷くと、すぐにブレーカーを操作し、部屋は灯りを取り戻す。

 だが、依然としてベレンの姿はない。もちろん同じ部屋にいるであろう、少女の姿も。


「お前は隠れられそうな場所を調べろ」


 ルークは部下に指示を下し、同時に周囲を警戒しながら通信端末でホテル外のチームに連絡する。


「こちらベータワン。対象者一名を部屋で発見したが、姿を見失った。そちらに異常はないか?」

『こちらガンマワン。ホテル外周部、部屋外部に異常なし』

「了解。引き続き捜索を行う」


 ルークは通信を切り、考える。


(部屋の外には出ていないはずだ。ベレン……どこに行った? まだ隠れているのか? それとも……)

「ルークさん」


 部屋の各所を調べていた部下の男が、突然言った。


「ベッドをどかします、手伝ってください」


 なぜだ? とは訊かない。ルークは部下とベッドに手をかけると素早くそれをひっくり返した。


「……!」

 そのベッドの裏にあったのは、穴。

 床板が四角く切り取られ、その奥には狭い暗闇の空洞が続いている。

 頑張れば、人間が一人這って移動できないこともない。


「よくやった。お前はここに残れ。私は下の部屋から確認する」


 ルークはそう言い残すと即座に部屋を飛び出す。

 だが一方で、既に自分たちが出し抜かれたであろうことも確信していた。


(単純に下の部屋に抜ける……その程度ならアルファチームの捜索網に引っかかる。だが……奴はその程度の男ではない)


 直下の部屋の扉を同様に壊し、躊躇いなく中に侵入するルーク。

 案の定部屋は空だった。だが……


「……手紙?」


 机の上に、一枚の手紙が置いてあった。

 差出人はベレン・バーゼン。宛先は、ルーク。


 ――我が友人、ルーク・ハイネマンへ。

 ――この手紙をお前が見つけ、読んだのなら、我々は賭けに勝ったということだろう。捜査局は今後も我々を追跡するだろうが、私はそれらが無駄に終わることを確信している。

 ――だが、我々の無事は私自身の力ではなく、私が友人に恵まれたからに他ならない。ゆえに私は、この巡り合わせを与えてくださった神に感謝する。

 ――我々は真実を求めて月に行く。お互いの行く道に幸運を。

 ――ベレン・バーゼン

 

「……」


 ルークは手紙をスーツの内側に仕舞うと、溜息をついて通信機を取り出した。

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