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潜入1

「せっ~のっ!!」



小さい掛け声と共に地面を強く蹴り出す賀露島。5メートルを越えるだろうかの壁を自分のステータスのみで飛び越える。

もし万が一賀露島の持つスキルが変に発動して魔素検知魔法に引っ掛かってしまっては今までの作戦は台無しだ。


一度失敗すれば必ず次は面倒な位に監視が厳しくなるだろう。だから危険が一番少なく、成功率が高い今回で成功させなければならない。



「....よっと!」



なるべく音が出ないように綺麗に流れるように受け身を取る賀露島。作戦通り賀露島が飛び越えた見えない壁の向こう側に監視は居なかった。


何故賀露島が壁で隔たれ見えない向こう側に敵が居ないことが分かったか。

それは賀露島がトランシーバーでやり取りをしているリューノだった。



リューノは双眼鏡を使っていた。覗きこめば遠くの者が近くに見えるというアレだ。

しかしそれでは壁に隔たれた死角がリューノにだってある。しかしリューノが持っていたのは普通の双眼鏡ではなかった。

視界に入る物体の温度を色で見る事が出来るサーモグラフィー搭載型だ。


これにより遠くから賀露島が警備の騎士団員に出会わぬように指示を出していた。



『2時の方向に2名の人を確認。すぐに引いて物陰に隠れて下さい。』



その指示で咄嗟に近くに置いてあった馬車の影に身を潜める。するとリューノが言った通り2人の騎士団員が現れた。

見回りをしている彼等はライトを持って笑いながら歩いていた。そんなんで本当に敵が来た時に大丈夫なのかと心配になってきた。



何とかやり過ごした賀露島は何とか自分の部屋がある第六棟に侵入した。

騎士団寮には第七棟まである。その中の第六棟が賀露島が泊めてもらっている寮だ。



『あれ?もしかして賀露島さんすんなり入れました?』



「うん。実は第六棟の裏口は鍵が壊れててまだ直されてないんだよ。」



『それってセキュリティー的にアウトじゃないですか...』



「ハハハ.....まあ結果オーライ...」



第六棟のことであれば大体知り尽くしている賀露島。基本自分の寮棟でない所には滅多な事でない限り行く事が無いため、第三棟のリューノには分からない事だ。



なにがともあれ無事に寮棟への侵入に成功した賀露島は3階にある部屋を目指す。しかしここからはリューノからの正しい指示は貰えないだろう。


遠くから双眼鏡で見てるリューノはサーモグラフィーで賀露島の行動を見ている。

その賀露島がどれだけ動こうと見ている視点は借りた部屋から変える事が出来ない。

彼から見えている景色は2次元の世界。つまり平面でしか分からないのだ。


寮棟の中には勿論非番の騎士団員が部屋にいる。そんな彼等に賀露島が重なってしまうと、賀露島が一体何処に居るのか分からなくなる。

遠近法で何となく分からなくも無いが確信が無いのでヘタな事は言えない。


だが正直ここまで来ればもうすぐそこだ。

不幸にも真ん中らへんにある賀露島の部屋。見回りは居なさそうなので、気を付けるのは突然部屋から出てくる者だ。


部屋にトイレが無いため各フロアにある部屋の外のトイレを使用しなければならない。なので外に出てくる確率としては低くはない。



賀露島は音を立てず、なるべく早歩きでスタスタと部屋へ向かう。ゆっくりしていたら見つかる確率は上がる。

なるべく早く済ませる必要がある。


そんな時に賀露島はフッと何かを察したかのようにピタッと止まり壁側に身を寄せる。

すると目の前の部屋の扉がギイッと音を出して開いた。


賀露島はこれを微かに聞こえた音で予測した。



部屋の中から騎士団員がトイレに行くため出てきたのだろう。だが運良く扉の構造上、開いた時の扉は賀露島の死角となっていた。

トイレは賀露島がいる反対方向であるのでココは何とか乗り切った。



フーっと一息吐く賀露島。

何とも言いがたい幸運に助けられた。それにしても心臓に悪すぎる。

心ドクドクと激しく揺れ動く心臓が痙攣してしまうのではと思う賀露島。今まで生きてきてここまでヒヤッとしたのもそう無いだろう。

まあヤンデレ達の殺気には到底足下にも届かないが。



そんな安心仕切った賀露島に後ろからドアの開く音が聞こえていた。



「え?」


後ろを振り返り間抜けな声を漏らす。



「ヤバイぞ。はやくトイレトイレ!」



そこから出てきたのは股間を抑えながら部屋から出てきた非番の騎士団員キタユーラという男だった。


そして扉から顔を出したキタユーラは全身真っ黒の覆面賀露島と目が合った。



「「...あ....」」



目が合った2人に奇妙な沈黙が出来ていた。全く動かない2人だったが先に動いたのは、この状況になる事を理解していた賀露島からだった。


まだ状況を読み込めなかったキタユーラだったが向かってくる賀露島に何とか把握した。

コイツは敵だ。


全身真っ黒覆面の賀露島をそのように認識した時には、もう遅かった。



声を張る間もなく賀露島の手刀がキタユーラの溝を突く。

これにより声が出せないどころか呼吸すら出来なくなったキタユーラ。


突かれた溝を抑えながら両膝を地面に着けるキタユーラ。

それを見た賀露島は直ぐ様キタユーラの額にデコピンを食らわせた。



「.....あにゃ!!」



キタユーラはデコピンを食らうと気を失うように後ろへ倒れた。

気絶したキタユーラを室内の玄関へ戻した賀露島は額から少しだけ血が出ている彼に申し訳ない瞳で一礼した。



その頭を下げた際に気づいたのだがキタユーラの股間が湿ってきていた。

そう言えば彼はトイレに行きたそうにしていた。

恐らく気を失った事で起こったのだろう。これ以上は賀露島は何も考えなかった。

そんなキタユーラに賀露島は暖かい瞳で一礼した。




何やかんやで予想外な事は起こったが誰にも正体は気づかれずに部屋の前まで来た賀露島。

予め持っていた部屋の鍵をポケットから取り出してガチャっと扉を開く。


扉を開くと明かりが付いていない真っ暗な世界が広がっていた。近くに置いてあった魔法具のランプを灯すと部屋中がランプの光に包まれた。

部屋の中はマチと共に綺麗にした状態のままで何かが動かされた痕跡はない。


僕はそんな自分の部屋を捜索すると毛布の上に普通に伝説の剣【鈍器】が置いてあった。

賀露島はこんなに分かりやすく置いてあるのによく気づかずにいたなぁと思う。



そして当初の目的であるナルタリカだが4メートル近くには居る筈なのだが、姿が見当たらない。透明化を使って姿を見えなくしているのであろう。



「リューノ君...双眼鏡で探せる?」



『..あっ...ハイ!ちょっと待って下さい....』



電波越しでリューノにサーモグラフィーでナルタリカの温度を認知出来るか探すように頼む。

頼みを受けたリューノは手元にある双眼鏡のピントを合わせるようにナルタリカの温度を探す。



この双眼鏡の利点は離れていてもその場所にピントを合わせる事で近くで見ているように見える機能で、見る物の手前の温度が一定値低ければ5キロ先のネズミの体温まで事細かく見ることが出来る。



つまり5キロ圏内であれば温度が高い物がなければ5キロ先でも小さな物までサーモグラフィーの機能を使ってこの双眼鏡は見る事が出来る。

しかし一定値の温度を超える人間や物がいた場合、その後ろにいる一定値の温度を超える人や生き物は認識する事が出来なくなってしまう。色で識別しているため、それが重なってしまうとどっちの色なのか分からなくなってしまうからだ。


それでもこの性能は普通に凄いと思う。こんな技術は前の世界には無かったからだ。



まあ欠点があるとすれば近くを見れないって所だろう。


この双眼鏡は遠くを見るための双眼鏡らしく、50メートルは離れた場所でないとピントが全く合わない仕様になっていた。

恐らくガンフローオンラインのゲーム仕様上近くにいる敵の位置をその双眼鏡で確認できてしまうと、面白味が無くなるっといた事があるらしく遠くにいる敵しか見えないようになっていた。

なので賀露島がこれを持っていった所で宝の持ち腐れであるので、離れた所からリューノに見て貰う必要があった。



『あ~有りました。ナルタリカさんらしい形を見つけました!』



リューノは何とかピントを合わしてナルタリカの形をした小さな何かを見つけた。

どうやらナルタリカは視覚的かつ魔素的に隠れているが、自分の体温までは隠せなかったようだ。

リューノの指示に従い、手探りでナルタリカを探す。すると何も無い所で暖かく柔らかい感触がした。



見えない物体をゆっくりと持ち上げる賀露島。ナルタリカは眠っているようなので丁寧に扱う賀露島。

基本妖精族は朝日と共に起床して日が沈むと共に眠りに就くらしく、妖精族は夜に弱いという事がナルタリカによって分かった。


しかし見えないナルタリカを持ったまま歩くのは少しだけ怖い。

なので賀露島はナルタリカをバック機能で仕舞うことにした。



「上手くいくかな?」



リューノは目の前に表示されるストレージを触りながらナルタリカを仕舞う方法を模索した。するとすんなりと仕舞えた。


生き物は仕舞う事が出来ないと思っていたが、植物は自由に抜き出しする事が出来たので場合によっては生き物もバックに仕舞えるのだろう。


だがその際に〈透明なハエ〉と表示されていた事は言わないでおこう。





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