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今更

謹慎期間3日目。リューノと賀露島はホテルの一室で向かい合わせになっていた。

体は見つめ合っているものの目はお互いが別々の方向を向いている。


マチの一件をリューノに話した事で場の空気が重くなっている。リューノにとっては昨日良い1日だったのだが、それを素直に喜べる雰囲気では無かった。



「ごめんリューノ君...彼女が出来たばかりなのに.....」



「いえ...仕方がないですよ。賀露島さんが止められない相手なのであれば私が勝てる訳がないですから.....それに私達は武器を持っていませんでしたので..」



暗い顔で謝ってくる賀露島にリューノは首と手を横に振りながら謝罪が不要であることを伝える。


確かにあの時は武器を所持して居なかった。謹慎期間という事で彼らに武器の所持は許されていなかった。

だが武器を持っていた所で賀露島にあの男を倒せただろうか?


異様な死のオーラを纏っていた男はヤンデレ達と言ったら言い過ぎだが、巫女達と同様の威圧感はあったと思う。

そんな相手に武器があるから、どうこう出来るとは思わない。


そう単純に自分が弱かっただけだ。




「マチは迎えが来ると言っていた時の顔が少し歪んでいたんだ。きっとマチはあの男に付いて行きたくは無かったんだ....」



「それでどうしてもマチちゃんを連れ戻したいわけなんですね。」



「....うん...そうなんだ.....」



リューノは揺らいでいる。1人では絶対に見つけられる訳がない。

だから1人でも多く協力者が必要なのだが、あの男の存在を知った今、捜索にはかなりの危険がある。

それにリューノを巻き込んでもいいのか揺らいでいた。


例え裏方に転じても、探られたくない敵が彼の所に来るかもしれない。だからリューノには協力してくれとは、どうしても言えなかった。

だが勿論リューノがそんな事で賀露島を見捨てる訳がなかった。



「...賀露島さん!顔を上げてください!困った時はお互い様じゃないですか!!」



そう言ってリューノは僕の手を握ってくれた。どうやらリューノは捜索に協力してくれるらしい。

リューノの気持ちが嬉しかった。だがそれと同時に自分が情けなかった。



リューノの性格上、困っている顔をすれば、彼はどんな事だろうと助けてくれるだろう。

そう僕は彼の身が危険になる事を恐れて敢えて声を掛けなかったのに、リューノに事の全てを説明して困った顔をし、自分からで無くリューノの方から協力してくるように仕向けたようなものだ。



結果として僕はリューノに自分から協力を仰ぐ事無く協力させたのだ。単なる責任逃れ。

ハッキリとは言えないから遠回しに助けて欲しいとお願いしている自分が情けなかった。




「そう言えば最近ナルタリカさんを見かけませんけど、彼女なら強い協力者になるのではないでしょうか?」



ナルタリカ?そう言えば僕も最近ナルタリカを見ていなかった。

透明化で、ずっと姿が見えないだけなのかと思ったが、それにしては全く見かけない。



「ナルタリカって伝説の剣が近くに無いと駄目なんですよね?賀露島さん..もしかして剣を駐屯地の部屋に置いてきたのでは?」



「....ハハハ!そんなわけ無いじゃんリューノ君!それだと僕が3日間もナルタリカを放置してきたみたいじゃないか?」



賀露島は先程とは雰囲気を変えて笑いながら目の前に表示されるストレージの枠にあるバッグ機能にある筈の伝説の剣【鈍器】を探す。


1ページ、2ページと探っていく僕だったが、段々ページ数が無くなっていくにつれて、中々見つからない伝説の剣【鈍器】に顔が青ざめていく。


いよいよ最後のページになり、全ての望みを賭けて最後のページを開いた。

そしてそのページには何一つとして物が無い状態。つまり最後のページは空のボックスになっていた。



そしてここに来て初めて結論が出た。




「リューノ君.....」



「.....はい....」



「...終わった.....」



リューノは両手を静かに合わせて軽く一礼した。簡単に言えばご愁傷様ですって意味だろう。



僕は今更になって思い出した。確かにナルタリカは透明化をしていて姿は、いつも見えないようにしている。それ故に僕はナルタリカがずっと近くにいるものだと思った。

しかし僕はベイロットに再教育実習という事でこってり搾られたのだが、その2日間ナルタリカを僕の元で張り付ける訳にもいかないので、伝説の剣【鈍器】は部屋に置いていた。


そして実習が終わった日にすぐ謹慎と言うことだったので浮かれていた僕は伝説の剣【鈍器】の事はスッカリ忘れて部屋を片付けたらスグに外へ飛び出して行ったのだ。

頭の中は1週間という期間をどう楽しむかで一杯だった。



座っていた賀露島は気を引き締めるように両頬を叩き、スッと立ち上がった。



「取り敢えず戻るよ...駐屯地へ」



「え!?」



賀露島はそう言うとリューノの手を引いて走り出した。



ーーーーーーーーーーー




「本当に来ちゃいましたね...」



リューノと賀露島は自分達のいた駐屯地が遠くから見渡せる建物の中にいた。



「なぁ~に大丈夫だよリューノ君。中に入るのは僕だけで十分さ!」



「見つからないで下さいね?」



そう。賀露島達は地方騎士団本部から1週間の謹慎処分を受けていて、その期間内は武器を持つ事や騎士団員としての資格が停止されてしまう。

一言で言えば彼らは一般人になってしまうのだ。


つまり一般人は騎士団駐屯地への侵入は禁じられている。

一般人は敷地からの距離5メートルは四方八方からの監視が入り、敷地内へ踏み込めば即刻取り押さえられ、状況によっては対象者を殺める事も許可されるレベルなのだ。


つまり今の賀露島は自分の部屋がある駐屯地に入る事が許されていない。中に入れば即刻束縛対象になってしまうと言うことだ。



「あ...リューノ君に1つだけ協力して貰いたい事があるんだけど...僕が中に入った時に外の様子を教えて欲しいんだ。」



リューノはその言葉に気持ち良くは答えなかった。



「...賀露島さんが悪い事をする訳ではないので協力しますが、私では観測魔法は使えません。それに魔法を敷地内で使えば即効でブザーが作動しますよ?」



「それが大丈夫なんだよ。これを使えばね?」



賀露島は何もない所で手を宙で開くと掌からポンッ!っと何かが出てきた。

それはあまりにも大きかったので落としそうになったが、〈狂化モード〉で何とか落とさずに済んだ。



「....えっと...賀露島さん?これは一体....?」



リューノは賀露島からその何かを手渡される。大きさとしては人間の子供位はあるのだろうか?重さもそれなりにある。


そんな見た事も何かに例えようもない何か...リューノはそれをチョンチョンとツツいて調べようとしてみたが賀露島以外でこんなものを持っている人が居ないので混乱してきたようだ。



「あぁ。コレはトランシーバーって言うんだよ。」



「トランシーバーですか?」



やはりこの世界にはトランシーバーは存在しないようだ。

トランシーバーと言われても言葉も存在も無い物の名前を言っても、かえって疑問が増えるだけだ。

リューノに使ってもらうなら、その辺の説明はしっかりとしなければならない。



「僕もよく分かんないけど電波を使って離れた所から会話が出来るんだよ。」



「え!?つまりテレパシーが!?」




うん。確かに何かに無線なんて言われてもリューノにはわかる筈もない。それならこの世界なりの例えを入れた方が伝わりやすい。



「ですがテレパシーは少なからず魔力が使用される筈ですよね?そんな事を賀露島が敷地内で行えば、魔力を検知されてしまいます!」



例え無能者である賀露島であろうと魔素を帯びたアイテムを使用すれば駐屯地内にある魔素検知魔法で居場所が特定されてしまう。

しかしそれは本当にテレパシーを使用していればの話だ。




「大丈夫だよリューノ君。これは魔力を使ってテレパシーをしている訳じゃなくて、電波を使って会話をするんだ。」



「...電波って何ですか?」



しっかり説明しようと思ったが、これ以上は恐らく説明すればするほど疑問が増えていくばかりなので、リューノにやって欲しい事だけ説明する事にした。



「ごめんリューノ君。実は僕もどういう原理でこんな事が起きているのかは知らないんだ。だけど魔力は使用していない事は確かだよ。」



魔力を使用していないのであれば、確かに魔素検知魔法にも引っ掛かる事もない。

賀露島には魔力どころか、その元である魔素すら発してしない。


無能者と言われる者達でもこの世界では魔素は全ての生き物に存在する。

つまり魔素はこの世界では生きている証なのだ。なので探知結界の魔法でも魔力では無く魔素を検知するため、無能者でも見つけられる事が出来るので基本は魔素の有無を調べるだけで監視は事足りていたので、魔素の探知結界のみを張っているようだ。



つまりこの世界の生き物に当たり前に存在する魔素を発していない賀露島を探知する事は王国騎士団でも不可能だろう。



「よく分かりませんが大丈夫なのであれば構いません。ですがトランシーバーって言うのは、それみたいな重たい物なんですよね?」



「いや。そんな事はないよ。今は1個しか出してないけどトランシーバーは2個無いと成立しないからね。」



片手だったと言うこともあるが、賀露島が一瞬〈狂化モード〉になる位に大きくて重いもの。

一見トランシーバーは携帯電話のような持ち運びが出来るコンパクトな物を想像しがちだが、特にそういう商品名では無く無線電波を受送信出来る機器であれば、どれ程大きくてもトランシーバーと呼ばれる。



「僕がこれから侵入するのにこんな大きい物は持っては行けないから、僕はコレを使うんだ。」



そう言って賀露島が取り出したのは片耳につけるヘッドホンのような物だった。かなりコンパクトで持ち運びが簡単だ。

よくテレビで捜査官が敵地へ潜り込む時に外部との連絡で使っていそうなアレだ。



「僕もこれを実際に使うのは初めてだけど、ガンフローオンライン産だから使い方は大丈夫だと思う. .」



一応リューノと賀露島は作戦を練り、どのように侵入するのかと、改めてトランシーバーを使うためのレクチャーを行った。


トランシーバーのあまりにも複雑な仕様にかなり手こずってしまったが、何とか一緒に出てきていた説明書で解決出来た。



「よし!これでバッチリだね!...って言っても疲れちゃったから明日にしよう....」



「...え?..あのナルタリカさんを早く助けに行かなくて良いんですか?」



リューノの質問に賀露島はムッとした顔でウ~ンと考える。




「まあ1日ぐらい変わらないでしょ?それに僕達の命が関わってくるからね..捕まってまた、ホモホモしい再教育実習をさせられたら洗脳されそうだし..万全の状態で挑みたい!!」



リューノは賀露島の言葉に呆れたように大きく溜め息を吐いた。



「そうですね...私もこれ以上騎士団員としての価値は下げたく無いですから。」



「本当にごめん...」



取り敢えず賀露島とリューノはトランシーバーを借りたその部屋に置いていき、最初に泊まっていたホテルへ戻っていった。




海老って旨くないですか?

寿司屋行ってもアボカド入ってる海老以外は必ず2週する位好きなんですが、そこで間に挟むウニがまた格別。


...うん..つまりそういうこと...

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