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クミの魔法能力

ドォォォォンと爆発音が廃墟の町ナンヨーンで鳴り響く。大きな爆発はナンヨーン一帯の建物がミシミシと音をたてている。

その爆発音と共にいくつかの建物が一瞬にして瓦礫の山と化す。瓦礫が崩れ落ちて大量の砂煙がナンヨーンの爆発現の一帯に包まれる。

その爆発が引き起こす砂煙の中から1人が出てきた。



クミである。

クミは開いていた左目を閉じて持っていた刀で身を守っていた。



そしてそんな彼女を追いかけるようにもう1人。いやもう1匹が砂煙を払いのけてクミを捕まえんと跳躍力するワキューダスケがいた。


その際に背中に付いている禍々しい大きな羽が1回だけ羽ばたく。

するとその風圧は100メートルも離れた建物の窓ガラスが何枚も割った。




「さあどうしたんだい?あの時みたいに僕を一刀両断してみてよぉぉぉ?」



クミはその質問に答えることは無かった。

彼女はワキューダスケの攻撃も守った事により後方へと飛んでいくその刹那に先の出来事が頭を過っていた。




確かにクミはあの時にワキューダスケの体を真っ二つに切り裂いていた。

しっかりとその感触もあったし、何より切りつけた事による邪気の手応えがあった。


始めに彼女の頭の中で思い描いたワキューダスケの能力は、幻覚魔法による幻覚だと考えた。



しかしそれは無いとすぐに結論付ける。




幻覚魔法にも様々な種類があるが基本的な幻覚魔法としては何らかの発動条件を満たす事で、対象者が見ている映像に上書きで何かを幻覚として反映させるのが多い。



例えるなら写真が1枚あり、その写真には人が誰もいない風景だけが写っている写真とする。

この普通の写真が本来対象者に見えている景色とすると、幻覚魔法はこれに透明なフィルターを被せてる感じだ。



もし写真に貼り付けられた透明なフィルターに人が写っていたら?そこにあるフィルターの貼られた写真には視覚的には人がその風景の中にいるように見える筈だ。


どんな形で、どれぐらいの範囲を幻覚魔法で見せれるのかは使用者の技量に依存する。

他にも様々な方法が幻覚魔法にはあるが、どんな幻覚魔法にも必ず共通点が存在する。


それはあくまでそれは視覚のみである為、その幻覚には誰も触れられないのだ。

例え幻覚魔法の使用者であろうと、その幻覚には触れられない。無いものは触れられる筈がないのだから。



なのでクミは幻覚魔法が使われた事はすぐに否定できた。

クミは確かに握っていた刀でワキューダスケを両断した感触が残っているのだから。



幻覚魔法で無いことは分かったが、謎は解決出来ていない。

ワキューダスケは確かに触れられたし、この手で殺した筈だ。

しかし何故か真っ二つにした彼の体は血と共に消え、別の場所から何も無かったかの様に無傷で現れた。


まるで死ぬ事がリセットされているような感覚だ。



そしてクミは1つの答えを導きだす。




(何らかの魔法能力(ユニークマジック)...でありますか.....中々に厄介な魔法能力であります...)



そう魔法能力であれば、このあり得ない出来事が少しだけ説明がつく。

能力は分からないが勝つには、この能力の正体を見破るしかない。




だがこんな状況だがクミは諦めてはいない。

ワキューダスケの能力が何なのかは分からないままだが、それは向こうとて同じこと。

バカの1つ覚えのように同じ感じで攻めてくるのであれば、その対策はとって行くつもりだし、何より魔族であろうワキューダスケには(がく)がない。


力のみの強さに依存する(まぞく)等にクミは一番の勝機を狙っていた。




しかし、だからこそ怖くもあるのだ。ワキューダスケの能力が。


殺した筈なのにやり直しをするように生き返る。この時にクミは一度ワキューダスケに能力を見られている。


これにより失敗を経験したワキューダスケは次に活かすようになる。

つまり殺し合いの闘いの中で、学んでしまうからだ。




(こっから先は下手に魔法能力は使えないであります....。)




クミは刀を構え戦闘体勢に入る。そして距離があった間合いを少し詰め寄る。


するとクミはワキューダスケのある行動が目に付いた。



ワキューダスケはクミが近づくと足を一本引いたのだ。これは予想外の動きであった。

性格、動き、技選び。今までの全ての行動を見てワキューダスケが後ろに引くと言う判断を取るなんて思わない。


気性が荒く、好戦的、力のみの技。

これら全てのデータを見るとワキューダスケが一歩足を引いて相手の様子を確認すると誰が分かるだろうか?

だがこの行為でワキューダスケ考えが推測される。「先と同じ動きでは勝てない」と判断し、クミの能力を探ろうとしている事が考えられる。


そう彼は学んでいる。勝つために必要な事を。




「どうしたでありますか?まさか怖じけ付いたでありますか?」



敢えてこの時、クミはワキューダスケに質問をした。

彼の逆上を狙う算段だ。そうなれば動きが単調化するのでクミ自身、戦いやすくなる。




「...そうだね...仮にも君は僕を殺しかけたからね?そんな相手に警戒しないほど僕はバカじゃないかな?」



しかしワキューダスケは冷静だった。彼は認めていたのだ。クミを自分を殺す事の出来る強者であるという事を。




「う~ん...多分僕の予想では君が僕の邪気で固められた体を両断出来たのは、今は閉じてる左目だと思うんだけど...?」




なるほど。正解である。

やはり彼は学んでいる。あの時に起きた事を思考し、クミの能力を模索している。




「つまり君はその左目を開いていなければ、僕には傷1つ付けられない訳だね?」



これまた正解である。

そうクミ自身もこの事は嫌でも分かっている。

彼女が練る事の出来る魔力では決してワキューダスケの邪気を超える事は出来ない為、傷付ける事の出来ない。

ワキューダスケを斬るのに一番決定打と成りえたのがクミの左目に込められた魔法能力(ユニークマジック)である。




「どんな能力なのか教えてくれない?」



「...教えるわけなんて無いでありますよ。」



「....なら無理矢理にでも教えて貰うしかないよね?」



邪気を拳に込め、クミの元へ詰め寄るワキューダスケ。

クミはこれを向かえ打つため、赤く染まる左目を開き刀を振るった。



しかしその瞬間であった。

ワキューダスケは地面を蹴りあげクミが振るった刀を紙一重でかわす。


クミもこれはあらゆる予測内の出来事なので、飛び上がった頭上にいるワキューダスケの攻撃を何とか避ける。



だが1つだけ予想外な事があった。



クミはワキューダスケを斬るために左目を開けたまま刀を振った。その一振りでクミはある感触に気づいた。



邪気だ。

クミの一太刀を避けたワキューダスケは避ける際に邪気で固められたオーラを敢えて、クミに斬らせた。




(くっ...かなり厄介な存在に成りつつあります.....。)




そうクミが一番の勝算であったワキューダスケの魔法に対しての無知と言う弱点が無くなりつつある。



彼は学んでいる。確実に。

魔法能力を使用する敵への正しい戦法を、探りを確実に行っている。




「僕の邪気は例え体から離れても、人間には簡単には切れないんだよね?つまりあの時に君はその左目の能力を確実に発動していたと思うんだけど?」



クミは左目を閉じる。

あまりこの魔法能力を使っていると負担が大きい。それにこの魔法能力は左目を開くことが発動条件であるため、左目を開いているときは常時能力を使用している事になるのだ。




「う~ん。僕の邪気が斬られた感覚的になんだけどね?まるで君が水を斬るような感じで切り裂かれた気がするんだよね?」




「...スゴいでありますね...この短時間でかなりの上達であります。魔族にしておくには勿体ない人材でありますな?」



「まあ君達人間とは格が違うからね?それより君の能力は他人を水に変える能力だろう?」



凄い。竜人であるワキューダスケは圧倒的力ゆえに魔法能力を使用する人間と戦ったことが無かったのだろう。

それが始めの頃にはそれが伝わってきた。



だが彼等とて経験してしまえば学習し、それに備える才能はあるのだ。




「ハハハ...魔族を成長させてしまったでありますか....これで人間族が滅びたらクミの戦犯でありますね.....。」



「まあ落ち込まないでよね...?魔族によって支配された世界になったら君は僕達魔族に知識をくれた恩人だって未来永劫に伝えていくからねぇぇぇぇ?」



ワキューダスケが拳を振るう。クミはこれを魔力全開で刀に注いだ。

これを受けて拳を防ぐクミであったが、勿論彼の圧倒的パワーを受けて踏み止まる事が出来ないクミは再び後ろへと飛ばされていく。



何とか飛ばされる中、地面に足を付けて50メートル付近で踏み止まる。




「果たしてその左目の能力があって何故に能力を使用せずに僕の拳を受ける必要があるのかな?」



刀を構えたままフラフラと立っているクミにワキューダスケは問う。

クミは彼の拳を防御してはいるが、勿論ダメージが無いわけではない。


彼女が体感する衝撃は普通の人間が三階から飛び降りる位のダメージを受けている。


そのダメージは確実にクミの体に蓄積しつつあった。

クミがワキューダスケの攻撃を防ぐのにも限界が近づいて来ている。



だがそれはクミがワキューダスケの攻撃避けられないと判断した時のみである。

余裕があるならクミとて避けている。


だがワキューダスケのスピードは、あのパワーに見合わない程に速い。竜人という生き物との種族的な差を感じざるを得ない。


しかし諦めてはいない。まだ勝機はちゃんとある。




「君の能力で僕の拳を切り裂けば少しでも勝算が上がるんじゃないかな?」



またあのムカつき顔だ。

他の者から見れば、はらわたが煮えくり返るウザさだ。



そんな彼にクミもクスッと笑う。




「クミの能力じゃ攻撃を防げないって事に貴方も気づいてるんでありますよね?クミの能力は、ただ刀に触れた所を水に変えるだけでありますから。」




そうクミの魔法能力はワキューダスケの体を斬る際に彼を液状に変えている訳だが、その水に変化させている部分は刀が触れた部分のみなのだ。


クミが魔法能力を発動し彼の腕を切り裂いたとして、彼の攻撃を防げるのか?



答えは否である。


例えば刀を持って飛んでくる水を斬ったとする。果たしてその飛んできた水を防げているだろうか?



不可能なのである。

刀で水を斬ったとしても切れたのはその部分だけ。その他の部分は当然、体に掛かる。


そうワキューダスケの体を水に変えて斬っても拳は、そのまま貫通してクミの体に直接当たってしまうのだ。

彼女にとって彼の一撃は致命傷に成りかねない。だからクミは水に変える能力を発動は出来ず、純粋な魔力のみで守るしかない。



ワキューダスケにはクミの魔法能力は大体見破られており、更にもう守る事も限界に近い。

そんな絶望的は中、クミも負けじと余裕の表情を見せる。




「...へぇ...まだそんな顔ができるんだね....?」



絶望的である筈のクミの余裕な表情に少しムッとなるワキューダスケ。その余裕が彼には不気味かつ不愉快に感じた。


 

実際はかなり不利である。クミとて笑っていられる場合ではない。しかしクミは知っている。

こういう状況だからこそ余裕を見せつける必要があるのだ。




「それが貴方とクミの経験の差でありますよ。」





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