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本性

「えっと..コウノキ少尉?拠点基地から出てきちゃってますけど、これからすぐに森に入りますか?」

勢いよく出てきた手前、今さら基地に引き返す事もできないだろう。


「うん。とりあえず行きますか...」


拠点基地に入って何か準備行い万全の状態にしようと思ったが、何もすることなく出ることになった。

それでも、そもそもお金がないからアイテム買えないことに気づいたので仕方がない。そう言いながら自身を慰めた。



拠点基地での準備を諦め、早速森の中へ行こうとそんな時に僕の背中で何かがトントンと肩を叩く。

誰かに叩かれたのかと後ろを振り向くが誰も居なかった。


(あっ!ナルタリカか..)



そういえばずっとナルタリカの姿は見ないままだった。

ナルタリカはまだリタカートを信用していないのかまだ姿は隠したままだ。

まあ出てこないのであればしょうがない。理由は分からないけど聞かないでおこう。


リタカートの居ないところで何か話したいことでもあるから肩を叩いたんだろうから、とりあえずリタカートから離れなければ。



「ゴメン。リタちゃん!少しトイレに行かせて」

僕はリタカートから離れる為に嘘をつく。

トイレと言っておけば何とかなるだろう。



「あっ..そうでしたか。私も一緒についていきましょうか?」


「いやなんで!?女の子と連れションする気ないよ!?」


しまった。

突然恐ろしい事を言われた所為でオブラートに包むのを忘れてしまった。連れションはマズイ。

これは人によってはセクハラ発言になってしまう!



「そうですか...分かりました私はここで待ってます!」

何とか彼女と離れる事に成功しそうだ。

どうやらセクハラについては一先ず大丈夫だろうか。


了承を得てトイレのある方向へ走り出す。

しかしこの時、僕は彼女に背を向けた時、彼女がどんな顔をしていたかは見ていなかった。



「ごめんナルタリカもういいよ?」

リタカートから姿を隠した僕はナルタリカに声をかけ出てくるように伝える。

すると肩のところからナルタリカが姿を現した。


そして第一声。



「ちょっと!?アンタってあの女とどんな関係なわけ?」


突然姿を出したナルタリカに耳元で叫ばれた僕は少しビックリした。



「どうしたんだい?そんなに大声で?」


「どうしたも何もあの女はヤバイわよ!!」



ナルタリカは隠れているから周りの現状を把握出来てないと思うかも知れないが実は彼女が一番周りを把握していた。

ナルタリカは隠れていたといっても姿を透明にしているだけで僕の肩で、ずっと全てを見ていたらしい。

そしてそんな彼女がリタカートの事をヤバイ女呼ばわりしていた。



「本当にどうしたんだい?口の悪いナルタリカとはいえ随分と言うね。」


「だってアンタあれは、どう見てもヤバイわよ!」

さっきからヤバイヤバイと言っているがリタカートはとてもいい娘だと思う。

そう伝えるが納得しないナルタリカに僕は苛つきを覚える。



「もういい!行くからね?」


「ちょっとアンタ待ちなさい!..もうっ!知らないからね!」


リタカートの居たところに戻り、僕たちは森の中へ入っていった。

その時も優しく迎えてくれたリタカートをヤバイ呼ばわりするのは、やはりおかしいと思う。



「コウノキ少尉。この森は道がガタガタですので足下に気をつけて下さい。」


「そうだね。気を付けなきゃ」


早速任務遂行のため、森を進む僕とリタカート。

森の奥に進むに連れて草木は段々大きくなって進みづらくなっていた。

辺りに沢山の虫達がウジャウジャといて、石と大きな根っこで出来ているデコボコの道は下を向かずに歩くのが難しくなっていた。



「でもあの時のトモ山戦の時よりは幾分マシですよね」

リタカートは、かつてイベント企画でトモ山での戦闘について話していた。


話はわかる。

でもすまないリタカート。

僕は確かにその戦場での戦いにはイベントで参加したけど現地には居なかったんだ。

だってゲームだもん。



「コウノキ少尉!あれですね!!」

リタカートは標的を見つけたのか僕の手を引っ張って茂みに隠れる。

やはり戦場を駆け巡って来ているだけあって女性であろうとかなりの力がある。


いきなり引っ張られて倒れそうになるが咄嗟で受け身をとった。

不思議な感覚に陥る。

でも何故だろう。こんな力で引っ張られたのに何の問題もなく受け身が取れるなんて。



「...コウノキ少尉。いつもと違って注意が散漫してますよ?」


「えっ!?あっゴメン...」



リタカートは常に命をかけた戦闘をしてきた軍人として色々な事に警戒して生きてきた。

命のやり取りをしようとしている以上そういう動きになるのは、彼女がそういう職業だからだろう。



それはゲーム内での僕だって同じだった。

殺されず、いかに敵を殺すかをひたすらあらゆる角度で警戒していたと思うしゲーム内ではそういう風にになっていたと思う。


だが今の僕とは正反対だ。当然だ。

いざ現実になると警戒して物事を行うなんて無理だ。



「...」


黙り混むリタカート。

僕は彼女の顔を見るとその顔は可愛い顔に変わりは無いがその目は黒く濁っていた。


先程までの彼女との変わりようと、その目を見た僕は体の隅から隅まで凍りつく。

なんて黒い目をしているんだ。

こんなの見たこと無い!



そんなとき予期せぬ事が起こる。



グオオおおお!!


体が5メートルはあろうかという巨体の怪物が僕たちに気付き大きな咆哮が僕の鼓膜に響く。


僕たちの任務対象のババパンダだ。別名廃猫なんて呼ばれているらしい。

名前にパンダが付いているが、僕の知る白と黒の可愛い感じではなく赤と焦げ茶色が混ざった熊らしいが熊ではなく最早怪物です。




「ウルサイ!!!!!」



ドーン。


リタカートの持っていたマグナムが火を噴く。

ものすごい轟音と共にマグナムの弾は巨大な怪物の頭を粉砕した。



「えええええええええ!?」



トマトが破裂したように爆発する怪物の顔が消える瞬間を見てしまった僕は悲鳴に近い声が出る。



「アハッ?やっぱ威力抜群デスネ~?ハンドガン持つならマグナムにカギリマス!」



ババパンダを一撃で倒した彼女の持つマグナムは僕の知るマグナムよりかなり長く、彼女の長い腕半分ぐらいあり、いかにも威力が出そうな形をしていた。


だが先の一発で耐えられなかったのか壊れてしまったようだ。



「...ウ~ン。火薬詰めスギダッタヨウデス。」


「色々改造しちゃたから耐えられなかったミタイデスヨ?コウノキ少尉。」



壊れたのならもうマグナムは恐れる必要は無い。

どちらかと言えば壊れたリタカートの頭をどうにかして欲しい。


まあそう嘆くな僕よ。こっちには伝説の剣【鈍器】があるじゃないか。



伝説の剣【鈍器】を取り出そうとする僕にリタカートは呟く。



「コウノキ少尉?壊れたからって安心してナイデスカ?もう一個アルンデスヨ?」


何この子?怖い。僕の考えてること分かってるみたいじゃん。

そう言うとリタカートは壊れたマグナムを捨て、そこには新たな銃が出てくる。



うん。

知ってた。

バック機能があるもんね。

銃仕舞いたい放題だもんね。



そして新たに出てきた銃はハンドガンと呼ぶには長すぎる。

あれはショットガンの類いだな?



「コウノキ少尉?どうですかこのハンドガン。スゴくないデスカ?」



わお。 

ハンドガンって..長さが...おかしすぎますよリタちゃん。


全長にして彼女の腕位の長さはある。

その銃に弾を込めるためリタカートは弾を取り出した。


その弾がまたスゴく大きい。

20センチ近くはあるだろうか。そんな弾をリボルバー式のシリンダーに詰め込む。


こんな銃見たこと無い。

ガンフローオンラインにだって出てくるわけがない。

こんな異質な銃があるなら僕は迷わず課金するだろう。



「これなら正国軍の戦車の装甲だって余裕で貫通出来そうダケドナ..」



先のマグナムであの威力なのに、それよりもさらに強そうな銃をこちらに構えるリタカート。


あの改造された弾を見るに相当の破壊力だと誰でも分かってしまう。

あんなの喰らったら、ひとたまりもない。

というか何も残らない。



「コウノキ少尉..私は悲しイデス...向こうの世界に居るときは、あれほど勇まシカッタノニ...」


「それが今では歩く時ですら必要以上に音をたてるし注意力も散漫しテマス。」



ヤバイ。本当にリタカートが怖くなってきた。

さっきまでのリタカートは何処に行ったのやら。



「でもしょうがないって知ってマスヨ?...」



ん?なんだ?許してくれるのかな?

しかし話は続いていた。



「肩にいるメスがコウノキ少尉の事をタブらかしたからデスヨネ?」



僕は彼女の一言に戦慄が走る。

しかしそれ以上にナルタリカの方が驚いている事は僕の肩で何かがビクンッ!となったからそれで分かる。



ナルタリカが見えている!?


そんな筈はない。何故ならナルタリカが透明化を解いたのは誰もいない拠点基地近くのトイレの裏だけだ。


そこに彼女は近づいては居なかった筈だ。



何がともあれ、とりあえずこの雰囲気はヤバそうだ。

リタカートの瞳の色が今の状況が異常であることを物語っている。



「何を言ってるんだリタちゃん?どこに誰がいるって言うんだい?」



その言葉を聞いたリタカートは首を傾ける。


コキッと不気味な音をたててこちらをジッと見つめる黒い目は最早人間ではないと言っているようなものだった。



「へぇ?コウノキ少尉は私が嘘をついてるってイッテルンデスネ?」



ヤバイ。もうかなりヤバイ...


リタカートが一歩一歩と僕に近づく度に僕の心臓とナルタリカがピクッ飛び上がるのが感じ取れる。

ひとまず作戦タイムだ。



「ねぇナルタリカどうする?正直に言おうか?」


「バカっ!そんな殺される事するわけないでしょ!!」



小声でナルタリカに質問する僕にナルタリカは反対をする。

確かに彼女の気持ちは分かる。あれは明らかに殺しに来るってね。



「フフフ。大丈夫ですよコウノキ少尉。貴方だけは生かしてあげますから。」



うわあお。これは参った。

また僕の思考が読まれたような解答が帰ってきた。

と言うか僕だけって...



「コソコソと小声で肩にいるメスとイチャイチャしているのは分かっテルンデス!!」



急な大声に心臓が今日一番の跳躍を見せる。

心臓が止まるのを覚悟してました。

しかしここは一か八か!身の安全の為に彼女を納得させるしかない。



「何言ってるんだいリタちゃん?ホラ!どこ見ても何も居ないでしょ?」



勿論嘘。

だけど見えないのは確かな筈だ。

リタカートはどうやってナルタリカの事を知ったのか分からないが、今分かるのはリタカートはナルタリカの存在に気づきつつある。



「大体考えてくれよリタちゃん!この肩にいるってのはおかしいよね?」


「だってリタちゃんの言い方だと、まるで僕の肩に乗るぐらいの小さい奴がいるみたいじゃないか」



僕の問い掛けにリタカートは「確かに..」と納得してくれて落ち着きを取り戻す。


よしっ!もう一押しだ!



「それにそんな喋る小さい生物が肩にいたってハエみたい五月蝿いだけじゃないか。」



決まった。もし仮に僕の肩に何がいることをバレてしまっても対象を貶してしまえば許してくれるだろう。

しかしこれが逆効果となる。




「なんですってぇぇぇぇ!!!」




僕の耳元から大きな声が響く。



耳の奥からキーーンと音がする感覚がした。

今さら僕は耳を塞ぐが普通に遅すぎる。


そんな僕の前にナルタリカは怒った表情を見せ姿を見せる。



「ちょっとアンタ!!今のどういう事なのよ!!」

しばらく聞いていなかった耳の奥に響く声だ。



「アンタ私に向かってハエって言ったわよね?」

この状況で怒るのはどうかと思うのだが、とりあえずここは1つ1つ問題を解決していこう。



「何を言ってるんだい。ただの例え話じゃないか。」


「ちょっと待ちなさいよ!例えでハエになる理由は?つまり私はハエに例えられる存在なの?」



ナルタリカの憤りを鎮めるには少しだけ時間がかかりそうだ。

とりあえず彼女は後だ。


後回しにされた事に気付きさらに騒ぐナルタリカ。

でも僕は知っている。

今一番なんとか鎮めなければいけないのはナルタリカではない。




「とりあえずナルタリカ?」


「は?何?まだ説教は終わっ...んぐ!?」



僕はナルタリカの体を両手で優しく包み込み腰を下げる。


〈狂化モードへ移行しますか?〉

イエス。



「にっげぇろォォォォォォォ!!」



狂化モードで強化した体で横へ飛び込む。

その瞬間。ドコーーーンとナルタリカが叫んだ時よりも何十倍の爆発音が森に響き渡り、立ち上る硝煙と砂煙で一帯は覆われた。


その煙が晴れるころには誰もそこには居なかったが、代わりに別の場所で同じ現象が起きていた。


「虫歯が4つありますね」って言われた+

「親知らず取った方がいいよ」って言われた=

Σ( ̄ロ ̄|||)

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