王都とカワモラ国
派遣騎士となって1週間が経ち大分騎士団の仕事にも慣れが出てきた。
騎士団員として厳しく接してくる一面もあり、辛いこともあったがそれ以上に良くして貰ったと思う。
若干ホモ疑惑のある事をされたが、とても分かりやすく丁寧に色々と教えて貰い、間違えた時は何が駄目で何をするべきだったのかを事細かく教わりフォローもしてもらえた。
逆に予想以上の良い仕事っぷりをした時は、盛大に褒めてくれた。
また前の世界で仕事に就くなら、こういう所に入りたいと単純に思った。
「おいお前さん!交代の時間だぞ。しっかり体休ませて来い!!」
その日駐屯地の門番の仕事をしていた僕は団員のナギーさんと門番を交代する事になった。
駐屯地内に入ろうとする僕にナギーさんは声をかけてきた。
「なあ賀露島?お前さんも大分此処にも慣れて来ただろ?」
「ええ。お陰様で何とか冒険者昇格試験までやっていけそうです。」
「なら良かったぜ。」
ベイロット程では無いが彼も中々ゴッツイ体をしているオッサンのナギー。
歳はベイロットよりは、かなり高めのようだ。
「そう言えばナギーさん!1つ聞きたいことがあるんですけど?他の人に聞きづらいんで貴方に聞いても良いですか?」
「ん?何だ?」
突然の僕の告白に一瞬にボーとするナギー。まだ知り合って1週間だがナギーさんとはかなり仲良くなっていた。
だがらそんなナギーさんに僕は質問をした。
「王都メイシコと王国カワモラってどういう違いなんですか?」
騎士団に入り他の団員達がメイシコだのカワモラなどと愚痴を言っていたのをフト疑問に思っていた。
どっちもかなりの権力を持っているらしいが、詳しい事情は知らない。異世界人なので。
しかしこの質問は恐らくこの世界では常識なのだろうから誰にも聞けないでいた。頼みの綱であるナルタリカもカワモラ国は知っていたが王都メイシコについては詳しくは知らなかったようだ。
「ハハハ!お前さんはそんな事も分からずに生きてたのか!何とも世間知らずな奴だ!!」
ナギーは口を開けて笑い出す。かなり面白おかしい話だったようだ。
まあそれもそうなんだろう覚悟はしていたさ。
「..おっと!悪い悪い。あまりにもオカシな話だったから笑っちまったよ。」
フーと深呼吸して落ち着くナギー。だが直ぐに思いだし笑いでクススと小声で笑い出す。
あまりにもシツコイので僕はわざと不貞腐れた態度をとる。
「まあそう怒るな。まず王都って言うのは、この人間社会を束ね政治をする国の事だ。そして王国カワモラは帝様がいる所だ。」
どうやらこういう事らしい。
我々ヒューマン属には政治に実権を持ってしまった王都とヒューマン属の象徴である帝がいるカワモラの2つがある。
2つの勢力は今は相対する存在だったらしいが、ある事件により帝勢力のカワモラ国は王都側のメイシコに吸収されてしまったが、名前と帝だけは今も残っている。
理由は帝を失ってしまうと長く存在し続け人々の希望の象徴を失ってしまうことになり、ヒューマンの存続に関わってくるからだ。
その為、カワモラ国とその帝は今も存在しているのだ。しかも表向きには帝が政治をしている事にして王都は責任を全て帝に被るようにしているのだ。
まるで朝廷と幕府だ。昔の日本の歴史にもそんなのがあったなと思う。
「そしてカワモラ国を潰し帝様を殺そうとするのが反国軍だ。民を使って勢力を拡大する組織さ。」
しかしナギーのこの言葉で1つ疑問が生まれる。
「あれ?でも帝は民の希望なんですよね?何でそんな民が帝の事を敵対をするんですか?」
王都は民が帝の存続を望むから殺さず残しているのに、民が自ら帝を殺すような真似をするのは明らかに矛盾がある。
そんな質問に少し間をあけるナギー。どうやら難しい話のようだ。
「そこなんだが俺もどうもおかしいと思ったんだよ..。本当は正しく言うと反国軍に協力する民は帝様では無く王都の方を批判してるんだよ。」
なんて事だ。
恐らく反国軍に味方する民達は、この世界の腐敗は帝では無く王都だと知っているので、メイシコに対して猛烈に敵対しているのだ。
しかもそれが自分達の守ろうとしている帝を危険に晒している事を知らないのだ。
つまり帝を殺そうとする組織の仲間に利用されているのだ。
「皮肉ですね..」
「彼らは皆、反国軍の言葉しかもう聞く気は無いのさ。帝様自らの言葉も洗脳だとか言って聞く耳を持たない。だから反国軍は厄介なんだよ。」
「まあ王都側も厄介ですけどね..」
賀露島は少し反国軍の事を調べていた。通っていた魔法学校でも反国軍には触れられていた。
反国軍はカワモラ国の帝に戦線布告したと授業で聞かされた。実際にそれはどうなのか分からないが、反国軍は敵だと子供の頃から植え付けようとする王都側の洗脳教育に僕は少し疑問に思ったので調べていた。
教科書である魔導書には王都の見事なまでの功績しか載っていなかったからである。
そして反国軍には負の歴史ばかり貶すように書かれてある。
前いた世界の日本では敗戦国として自ら自分達の過ちを戒めるように子供の頃から日本の功績と失態の両方が教えられ、様々な観点での考えが出来る教育だった。
だがこの王都は完全好都合な事ばかり子供に教え王都中心の教育方針。僕は色々な人から王都の失態の話を聞いたから分かっていたが、それが子供の学ぶべき歴史として載っていないのだ。
「王都側もバカですよ..だから反感を民の人達から買ってしまうのに...。」
「ハハハ。今の時代はそう言うもんだ。それにあまり王都の事を人前で悪く言ったらイカンぞ?」
そう言ってナギーは門番の仕事にもついた。
僕も「ありがとうございました。」と頭を下げ、部屋へと向かっていった。
カワモラ国
王都メイシコに吸収された小さな町。
現在は帝の17代カワモラとその護衛達のみが住んでいる小さな町でメイシコの中に存在する。
基本一般人は侵入禁止で侵入した際は、かなり重い罪がかせられる。
謎はかなり多く、王都の王族と王都上層部しか知らない事が沢山あるみたいだ。




