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世界で一番格好良い男

「はいはい、なに二人でいい感じになってんのよ」


静まり返った教室に、冷ややかな声が響いた。


教室の入り口には、またしてもあの陰湿女子グループが立っていた。


俺に相手にされず、カレンちゃんがどんどん可愛くなり、二人の絆が深まっていくのが面白くなかったのだろう。


グループのリーダー格が、不快そうに舌打ちをしながらカレンを指さした。


「ユウくん、騙されないでよ!そいつ、本当はアンタのこと好きでも何でもないんだから!」


「…なんだと?」


俺が眉をひそめると、女子グループは勝ち誇ったような笑みを浮かべ、教室中に響く大声で叫んだ。


「思い出してちょうだい!カレンはね、アンタに『顔も見たくない、大嫌い!』って言ったのよ!最初からアンタのことなんて傷つけるためのターゲットにしてたんだよ!勘違いして自分磨きとか、超ウケるんだけど!!」


「っ!!」


その言葉が響いた瞬間、カレンちゃんの身体が大きく跳ねた。


血の気が引き、紙のように真っ白になる顔。


ポロポロと大きな涙が溢れ出し、彼女は絶望に打ちひしがれて固まってしまう。


(終わった…そうよね、言ってしまった事実は変えられない。ユウくん…ごめんなさい…私…)


クラス中に気まずい沈沈黙が流れる。


女子グループが「どう?騙されてた感想は?」と嘲笑を深めた、その時だった。


「ふざけんじゃないわよ!!」


バンッ!

と机を叩く大きな音が響いた。


声を上げたのは、いつも俺に絡んでいたクラスのギャルだった。


「な、なによ急に!」


「あんたたち、いい加減にしなさいよ!騙してたのはどっちよ!」


ギャルは涙ぐむカレンの前に立ち、女子グループを強い眼差しで睨みつけた。


「カレンはね!あんたたちがユウくんに構ってもらいたくて酷い嫌がらせ…股間に水をかけてお漏らし扱いしようとしてたのを、代わりに一人で庇ったのよ!!『彼に手をださないで、私が代わりに罰を受けるから』って、そしたらあんたたちがユウくにさっきの言葉を言えって理不尽な要求を出したんじゃない!!」


「「「なっ!!??」」」


教室中に激震が走った。


「ユウくんを守るために、カレンは『男子を傷つけた悪魔』って周囲から責められるリスクを一人で背負ったの!カレンがどれだけユウくんのことを想って自分を犠牲にしたか、あんたたちに分かってたまるか!!」


ギャルの叫びによって明かされた、衝撃の真実。


クラスの女子たちが。

「そんな…」

「ユウくんを守るために…」

「最低なのはあいつらじゃん!」

と女子グループに軽蔑の視線を向ける。




罪悪感で押し潰されそうなカレンは、顔を覆って泣きじゃくっていた。


(言わないで…お願いだから言わないで…ユウくに知られたくなかった…)


だが…


静かな足音が、カレンのもとへと近づいてくる。


カレンの目の前で止まった足音。


ゆっくりと顔を上げると、そこには…今までで一番優しく、澄み切った瞳で自分を見つめるユウの姿があった。


「やっぱり…俺の思った通りだった」


「え?」


涙目でぽかんとするカレン。


ユウは愛おしそうに目を細め、彼女の小さな手を両手で包み込んだ。


「カレンちゃんは最初から、俺のために自分を犠牲にしてくれてたんだね。俺を信じて守ってくれて、ありがとう」


「あ…う、え?」


思考がフリーズするカレン。


ユウは『自分磨きの発破をかけてくれた』とポジティブに勘違いしていた。しかし、カレンが『自分を殺してまでユウを守ろうとしてくれた』という愛の深さにおいては、彼の直感は最初から何も間違っていなかったのだ!


「ユウ、くん…嫌じゃないの?私、君に酷い言葉をっ」


「嫌なわけないだろ」


ユウはカレンを引き寄せ、クラス全員の前で、堂々とその名を叫んだ。


「自分を犠牲にしてまで俺を守ってくれて、俺をここまで引き上げてくれたカレンちゃんを、俺が嫌いになるわけがない!」


ユウの背後で、女子グループが自分たちの悪行を暴露され、逃げるように教室を飛び出していく。

だが、誰もそんな奴らのことなど見ていなかった。


「カレンちゃん」


ユウは彼女の目を見つめ、太陽のように眩しく、世界で一番格好良いド直球の笑顔を向けた。


「今度は俺が、一生カレンちゃんを守る番だ。もう一度言う、俺と…付き合ってください!」


「っ!!!!」


クラス中から「「「きゃああああぁぁぁぁ!!♡♡」」」と割れんばかりの歓声と拍手が巻き起こる。


あまりの格好よさ。


あまりの愛の深さ。


そして、報われた巨大な恋心。


カレンの脳内の許容量は完全に限界を突破し、嬉し涙をボロポロとこぼしながら、ユウの胸へと飛び込んだ。


「すき…大好きっ!大好きですユウくんっ!一生…一生離さないからねぇぇぇ!!♡」


「はは、もちろんさ!」


抱き合い、幸せそうに微笑み合う二人。


こうして、ひとつの巨大な勘違いから始まった物語は、世界で一番一途で、世界で一番重い、最高のハッピーエンドを迎えたのだった。


…なお、この日を境に完全にヤンデレ覚醒したカレンの甘すぎる重愛に、ユウが『これぞ高嶺の花の愛!』と毎日幸せそうに翻弄されることになるのは、また別の話である。


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