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出会い

log12 マスターはまだ危機意識が低い様に思える。すぐに直してもらう必要あり。出会った時と比べて少し余裕が出た様に見える。この変化は好ましいが同時に危険でもある。


「エマ、いつ頃また出発する?」

休憩中、少し静かにしているエマに問いかけた。


主人(マスター)の指示に従います」


じゃあ早く行くべきか?いや、期限があるわけでも無いし食料も余裕がある。車で長時間寝るのは体が痛くなるからな。


「今日はここで一泊休むか」


「分かりました。ただ、さっきの集落で一泊してから出発する方が安全だった可能性があります」


「宿屋も無かったし、泊めてもらうにも金が必要だと思ってな」


「理解しました」


そう決めて、俺は止めている車の近くにある民家へ向かった。もう電気は通っていないようで、懐中電灯を装備して侵入を試みる。

日が落ち始めていることもあり、玄関の中でさえ薄暗い。さらに、屋内には砂が大量に入り込んでいた。


「流石にここで寝るのは無理か?」


少し奥の方に進もうとした、その瞬間に壁が崩れる。

その影響で、天井も目の前に迫ってくる。


「あ」


終わった。死なないにしても、このまま天井が落ちてきたら間違いなく――


「大丈夫ですか?」


俺に瓦礫が落ちてくることはなかった。エマが守ってくれたのだ。


「あ…あぁ 大丈夫だ」


「それなら早い方がいいと判断したので今言わせてもらいます。…行人(ゆきと)は危険な行動をしすぎです。今回に関しても危ない建物を見分けろとまでは言いませんがせめて、私と一緒に行動するか。一言、声をかけてください」


俺は今度はエマと共にショッピングセンターに寄ることにした。


「特に食料とかは残って…ないか」


少しぐらい残っていればよかったんだが。


「この付近に住んでいた人たちがまずここの食料を優先してとったはずです」


「それなら他に目ぼしいものも無くなっているだろうし引き上げるか」


ここに何もないなら早く休んで明日に備えるべきだしな。


「いえ、そうとも限りません」


エマは黙々と歩き出しウェットティッシュを取る。確かに生活必需品の一つだ。だがーー


「なんでそれは余ってたんだ?」


「食料と違って直接生きるのに必要なものではない。そして店で食料を取り合っていた事で盲点になっていた可能性も考えられます」


それから車に戻り手を拭き夕飯を済ませる。もうあたりは完全に暗くなっている。


「明日には目的地に着く予定です。今日はもう休んでください」


「わかった」


車からクッションを出し枕がわりにして目を閉じる。

俺はすぐに意識を手放してしまった。

目を閉じる直前、フロントガラス越しにエマの背中が見えた気がした。

次の瞬間、景色が崩れた。


これがなんの夢か、すぐに…わかった。

潰れている。原型がほとんど残っていない。けれど“それ”が何かわかるんだ。


これは世界が崩壊して全てを失った日だ。俺の前に潰れているそれは、俺の家だった。家族を失った最悪の日の俺がそこには佇んでいた。変な汗が首筋を通り、声にならない嗚咽だけが漏れて涙が流れる。大きな声で泣かなくことはなかった。というかまだ現実を受けいられていなかった。弟がまだ微かに動いている。走りながら近づくーー


情景が変わる。


俺は一人で歩いている。その目には生気が無くまるで眠る場所を探す屍のように。ただ歩いていく感覚だけを頼りに。死にたい。生きたい。そんな考えは最初から無く目的も無く自分が喪失していく。


何かが捨てられた様に置かれている。人一人が入りそうな容器。いや、カプセルか。近づいてみると少女が眠っている。何を考えたかわからない。ただおもむろにカプセルを開ける。


少女が目を覚ます。そして周囲を見渡す。


「半径約15mの安全を確認。目の前に私を起こしたと思われる人を確認。 初めまして実験用機巧人(ユニット)のエマです」


なんだこいつは。

……もう、どうでもいい。


また歩き始めようとするが何もないところでつまづく。


「大丈夫ですか?」


エマに支えられ、転ぶことはなかった。

なんで……。「なんで助けてくれたんだ?」


「そう命令されているからです」


だろうな。こんなロボットに人を思うことなんてできるわけがない。


「じゃあ俺のことは放っておいてくれ」もう俺は一人でいたい。一人で家族のところに逝きたい。

もう休みたーー


「できません」


手を掴まれ止められる。何も感じない自分で考えることすら出来ないただの機械が何で邪魔をするんだよ。「何も知らないくせになんで俺を止めるんだよ。放っておいて欲しいって言ってるだろ…」


「…私は、」


……。

「起きてください」


エマの声で意識が覚醒する。そうだ、今日は次の目的地に到着するんだったな。


「あぁ…おはよう」

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