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神に選ばれた俺は  作者: 瀬田 冬夏
第2章 人の想いと神の想い
32/36

二度目の大変です!

メインのパソコンがぶっ壊れました。泣きたい……。




「しかし、なんだってここ最近はこんな事になってんだ?」

 天井を眺めながら思わずぽつりと零す。

 どっかの色ぼけ教会との決闘も今からだってのに……。

 しかも、ごたごたのきっかけが『女神』ってるのが、なんだか……とってもウチっぽいよなぁ……。

 けして男神が弱いわけじゃないのに、女神が幅を利かせている気がする……。良い意味でも悪い意味でも。やっぱり女神の数が多いからなのか……。


「そういえば、何か問題が起こったみたいなのですが、そちらは大丈夫でしたか?」


 リストが心配そうに尋ねてくる。確かにあの様子だとなんか起こったって感じだったもんな。


「ん? ああ、ラックが呼びに来た件? そっちは問題ないよ。女神は預かってるから、返してほしかったら、教祖連れてこいやって宣戦布告したから」

「あの……?」


 俺の言葉に途端に周りの人間は、明らかに冷や汗、青ざめといった感じだ。

 なんせうち、今隣国ともドンパチ前ですしねぇ。冗談が冗談に聞こえなかったらしい。


「ま、冗談だけど。どうやら、向こうの教祖が主神の女神に内緒で色々やってたみたいで、女神のために俺達が間に入って色々説明をしようかと。その話し合いのために教祖連れてこいやって、信徒たちを帰した」

「……内緒でっていうのは、何か不味い事なんですか?」

「女神にとっては裏切りじゃないか?」


 俺の言葉に三人は息を飲んだ。


「不思議だろ? なんで教祖がそんな事するのかって」

「え、ええ。自分の神に対してそんな事をするなっとは思います」


 メアは意外そうに、本当に意外そうに口にした。


「そうなんだよな。俺達からしたら、なんでそんな事してるんだ? って思うんだよな。でも、たぶんそこが多神教と一神教の違いなんじゃないかって思う」

「……神さまを裏切る事がですか?」


 うん。と、頷くとどうやら聞き捨てならなかった人もいたようだ。


「失礼、キリュー殿。私も武神の信徒ですが、それは違うと思います。我々は主神を裏切るという意思はありません!」


 騎士サンが不愉快そうに話しに割り込んできた。

 俺は首を横に振って否定してやる。騎士サンは不愉快から少しばかり険しい顔になった。


「うちにも武神はいます。もし、そちらの神とうちの神とがそれぞれの教えをすてて、新しい教えのために新しい宗教を作るとしたらどうします?」

「ついていくだけです」

「では、ついていけない場所だったら?」

「ついていけない場所?」

「それが答えですよ」


 俺はそう答えて立ち上がる。

 騎士サンにこれ以上詳しく言うのもなんなので、あやふやにしたままで話を切る。


「アリスティーさまの講義が終わるようなので、迎えに行ってきます。貴方がたも戻ってください」


 俺はそう言って転移を使って部屋から移動する。

 ……俺もリストの事言えないくらい転移使いまくってるなぁ。でも、キリュー教専用フロアって転移使わないと中に入れないし出られないんだけどね。


「では、以上よ。貴方たちの美しさがより輝くことを私は楽しみに待っているわ」


 アリスティーさまはそう締めくくられて、会議室から出てくる。

 俺は執事の様に礼を取った。アリスティーさまの顔がむっちゃ不審顔になった! 笑える。


「……何事?」

「いやぁ、美の女神の説法を一時的とはいえ邪魔しちゃいましたし」

「ああ……。あの子が来ているそうね。今更わたくしになんの用なのかしら?」


 優雅な歩調で歩き出したアリスティーさまの隣を俺も歩く。

 一歩後ろに下がれって? やんないよ、そんな事。一応俺らはある意味対等だもん。


「アリスティー教を復活させるそうですよ」

「………………幻聴?」


 足が止まって、しばし考えたようだったがそう尋ねて来た。


「御冗談を。いつもお美しい貴女さまらしくない切り返しですね」

「……桐生? さっきから貴方らしくないけどどうしたの?」

「ただでさえこのクソ忙しい時に、問題が同時多発してくれちゃったんですよね!」

「ちょっと、わたくしに八つ当たりは止めてくれる?」

「八つ当たりしないように、気を付けてるのが真相です」

「……そう。悪かったわね」

「いえ、対処しきれない俺が未熟なんでしょう」

「嫌だわ。殊勝すぎてちょっと怖いのだけど……」

「そうっすか?」

「ええ、問題が同時多発といったわね? ほかに何があったの?」

「大地の女神の処で、人員調整が行われていたようで。もちろん水面下で。それが女神の心労になってたらしく、メリーマムルさまが気晴らしにと連れて来たんですけどね。たぶん、教祖辺りに妨害されたのでしょうね。転移で連れて帰ってこられたので、ちょっと騒ぎになってたんですよね」

「ああ、なんか殺気立ってたのはそれ?」

「あ、気づきました?」

「神域の外だったから一応無視したのだけど」

「ええ、とりあえず、女神と話がしたいのなら、教祖を連れてこいと」

「教祖が来ていなかったの?」

「来てなかったです」

「あらあら……。本当に攫われたって思っているのなら、随分と悠長な事」

「ですよねぇ。でも、まぁ、そっちは話が通じそうなんでいいですけど。もう一方の、アリスティーさまをお待ちの方は、なんというか、話が通じなさそうなんですよね……」

「エリザティアが?」

「ええ、そのエリザティアさんです」

「あの子は思慮の浅い子ではなかったはずだけど?」

「あー……やっぱりそうなんですね。リスト達もおかしくなったのはここ数年だって話をしてました」

「……何かあったのかしら?」


 首を傾げるが、俺には肩をすくめるしか出来なかった。




 応接間につくと、俺が扉を開けて、先に入る。どうやら他の面々はすでにそろっていたようで、扉を開けたままアリスティーさまを室内へと促す。中に入ってきた女神を見て、見た目少女、中身話の通じないばーさんは、満面の笑顔で立ち上がった。


「アリスティーさま! ああ、ご無事でございましたか!」

「無事?」

「幽閉されていると思っていたそうです」


 俺が答えるとアリスティーさまはちょっと呆れた視線を俺に向けて、ばーさんの方を見て、笑みを浮かべようとして、何故か眉を寄せて顔をしかめた。


「アリスティーさま?」

「……そういう事……」


 ため息をついて、ばーさんを見た。


「外見を若返らせる前にすることがあったでしょうに……」


 憐れむ様に言って、ばーさんを座るように促し、自分も座る。


「それで、エリザティア、なんの用かしら?」

「アリスティーさま。愚かなわたくしをお許しください。ですがわたくしはやっと間違いに気づきました。わたくしはやはり、アリスティーさまこそがこの国一の美の女神として、君臨すべきだと思いまして」

「……そう。それでアリスティー教を復活させようと」

「はい。そうでございます。今度はわたくしがしっかりとアリスティー教を管理していきたいと思います」


 管理……。運営でもなく、管理ねぇ……。

 思わず俺は冷たい眼差しを向けてしまった。


「……エリザティア。神に対して随分と分りやすいウソをつくのね」

「嘘だなんて、わたくし」

「まるで、わたくしのために、アリスティー教を復活させると言っているけど、違うでしょう?」

「わたくしはアリスティーさまのためにっ」

「エリザティア。貴方のソレはね、もうわたくしにはどうしようもないわ」


 突然アリスティーさまが話をぶった切って、別の話を放り投げた。とたんにばーさんの顔が凍りつく。

 それから、段々と……般若のような顔になっていく。あのな、ばーさん、一応、目の前にいるの女神だからな? あんたが睨み付けているの女神だからな?


 流石にこの光景には周りも驚いたようにばーさんを見ている。


「嘘ですわ」

「……いいえ、あなたがわたくしの教徒のままであったのなら、その症状に侵される事無く歳を取る事も出来たでしょう」


 症状?


「でも、貴方はもうキスティ教の人間なのよ。エリザティア。キスティはまずは外見ではなく、体内を若返らせる事を提案したのではないのかしら?」


 体内を若返らせる?


 繰り返して気づいた。

 この人、身体全てが若返ったわけじゃなく、外見だけが若返ったって事!?

 内臓とか脳とか……。それは相応に歳を取ってるって事か?


「でもあなたはそれを拒んで、外見を最優先にさせたのではなくて?」

「……つまり、痴呆症……?」


 俺の言葉に、アリスティーさまは頷いた。

 他のみんなは言葉自体が意味がわからないっていった感じだが。


「貴方のそれはね、わたくしの加護では治らないのよ」


 納得した。

 年取ったばーさんが癇癪起こしてたって事か。


「外見が若返ったせいで、あなたのその症状はさらに悪化したと思われるわ。貴方今、とても精神年齢が幼くなっている。我慢が出来ない子供と一緒」

「アリスティーさま、嫌ですわ。わたくしをいじめるのは止めてください」

「いじめていないわ。本当のことよ。エリザティア。本当にわたくしにはどうしようもないの。わたくしの名に誓ってもいいわ」


 それは自分という存在を消し去ってもいいというほどの誓いだ。

 神からすればこれ以上誓いようのない言葉。

 もっとも人間の多くはそれを知らないが。


「嘘です! 嘘です!」

「貴女がどう思おうとかまわないわ。それにね。もしできたとしても、どうしてわたくしが貴女を助けなきゃいけないの? 先にわたくしを捨てたのは貴女の方じゃない」


 言葉だけ聞いているととても冷たいようだが、アリスティーさまの表情はどこか寂しげだ。


「貴女はわたくしの名において、今後教会内に立ち入りを禁止します」

「そ、そんな……」


 これで今後このばーさんはキリュー教の神域には絶対に入れないということになる。

 

「彼女が乗ってきた輿が裏庭にある」


 ばーさんの孫三人に後をお任せするためにそう告げる。三人は頷いてやっぱり転移でばーさん達をこの場から連れ去った。


 俺はアリスティーさまと対面するソファーに座りティーセットを取り出し紅茶を作り始める。


「あんな子じゃなかったのに……」

「歳をとると穏やかになるか、よりいっそう苛烈になるかって聞いたことありますよ」

「苛烈ね……。あの子はもはやキスティ教にはいられないわ」

「ですよね」


 アリスティー教を復活させるって言っちゃってるし。

 聞かれてないから大丈夫なんてことはない。

 こういう裏切りは神は離れていてもわかるんだと。


「治癒神の教会に入った方がいいでしょう」

「だから突き放したんですか?」

「……あの子達の階級の女性はどういうわけか、美の神の元に居たがるの。キスティ教もだめでここもだめってなると、たぶんあの子が満足するような美の女神はいないわ。喜んで治癒神のところにいくでしょう」


 お湯を注ぎ、蓋をして蒸らし時間のためにと隣に砂時計を置く。


「恋をするな。とは言わないわ。恋は人を輝かせることもできる。精神的にも若返る。でも、あそこまでして、する必要のあるものなのかしら?」

「さぁ、俺は男なのでなんとも」

「男がより若い方がいいと言って、ああなっているのだけど?」

「俺からしたら守備範囲外ですよ」

「そうだったわね……」


 アリスティーさまは少し楽しげに笑った。


「今の話、ローズベリーには秘密ね」

「言ってもたぶん問題はないと思いますよ。ローズベリーさまだったらすべて外見で決めるってのを良しとしないでしょうし」

「……それもそうね。ふふ、でもやっぱり秘密にしてもらえる? だって愛とは何かって、説法が始まってしまいそうだもの」

「あ、それは嬉々としてするでしょうね」

「でしょう? 彼女は情熱家だから」


 そこで言葉を切ったが、俺には何を言いたいのかわかる。


 聞いている方も大変なのよ。


 と、言いたかったに違いない。俺たちはちょっと笑いあって紅茶を楽しんだ。


 あとは大地の女神さまのところとの会談か~。と思ってたところで、ティナさんがやってきた。


「桐生さん! 大変です!」


 またこのフレーズですか。今度はなんでしょう。


「フトクリムの国教がサロネ教に変わったと布告されました」


 ティナさんの言葉に俺たちは言葉もなく目を見開いた。


「……冗談……だろ?」


 この一瞬で俺の舌や喉はどれだけ渇いてしまったのか。

 その一言を口にするのが、どれだけ気力のいったことか。むしろ冗談であってほしいという願いを絞り出したのかもしれない。


 神が神との約束を違えた。


 これがどういう事態になるのか、俺には予想も想像もつかなかった。

 






短いかもしれませんが、パソコンが壊れちゃった影響で、半分以上書き直しになっちゃったので、気力が持ちませんでした……。

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