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神に選ばれた俺は  作者: 瀬田 冬夏
第2章 人の想いと神の想い
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台風の目は静かなんです

今回は短い……。いや、今回も?

「よいザマスか、みなさん」


 ナデコは自作のザマス眼鏡をくぃっと上げて真剣な表情で見ている生徒一同を見た。

 ……いや、みんな。そこは笑うとか失笑とかいろいろあるだろ? なんでそんな真剣なんだよ……。


「ワタクシ達とみなさんとの差は、ズバリ! 想像力の差であるとワタクシは思うザマス!」

「なぁ、ナデコ」

「つっこみは不要ザマス!!」


 いたたまれなくなった俺が声をかけるがナデコが先にぴしゃりと言ってくる。

 つっこみは不要と言われても……突っ込みたくなるに決まってるだろ、おいー……。


「ワタクシ達の想像力はずばり、アニメやゲーム、マンガなどが大きな理由であるとワタクシは考えるでザマス!」


 「でざます」って、「で」は要らなくね?

ああ、うん。俺も現実逃避し始めてきたな。

 中二病だなんだと言われてもだ。実際魔法は出るんだし、その気持ちで威力が上がるんだから、呪文を唱えようが唱えなかろうが関係ないんだろうけど。

 まぁ、唱えるヤツは自分で口にした方がそれを想像しやすいって事なんだろう。

 その程度の差なのだ。

 だからアニメのセリフをまんま使っても別に問題はないのだ。ここでは。

 だってマジで魔法が出るのだから。きっとアニメ通りに……。


「来る大戦において勝利は当然ザマス。圧倒的なる、力の差を見せつけるのがむしろワタクシ達の勝利条件ザマス!」


 しかし、だからといって別にザマスになる必要はこれっぽっちもないんだけどなぁ。どっから持ってきた? そのいかにもなドレス。

 ……まぁ、自作だろうけど……。


「よって、ここで、みなさんにワタクシ達の秘策を授けるザマス! VTRスタート!」


 いや、そこはきちんと「ザマス」を付けろよ。


 そんな心の中でツッコミをしていると大画面のテレビがアニメを流し始めた。

 うわぁ。これ、セル画か?

 よくそんな古いのを知ってたな。もしかして俺が生まれる前のやつとかも入ってないか、これ!?

 古今を混ぜ込み、いかにもな魔法をぶっ放すシーンが連続して映し出される、って!


「魔法少女も入ってるのかよ!?」

「勇者物も入ってるザマス」

「勇者物? 勇者系ゲームのアニメ化?」

「変身合体ザマス」

「そっち関係なくね!?」


 突っ込まずにはいられなかった。そして、ゲームのプロモみたいなものあり、実写物もあった。戦隊物も入ってた。なんか関係ありそうなものを何でも混ぜ込んだっていう感じで、結果。生徒の皆さん、大混乱中。


「……変身シーンは……、破廉恥だと思うのですが……」

「あれは亜空間に言って着替えてこいという意味でしょうか?」

「よく分からない乗り物がゴーレムになるのは面白いと思いました」


 そんな感想がぽつりぽつりと出てくる。


「で、どう? 何か使えそうか?」


 とりあえず聞いてみるとみんな一瞬固まって、首を横に振った。


「あれー?」

「一度にいろんなのを見せすぎだって。そりゃ混乱もするっての」

「上手くいくと思ったんですけどねぇ」


 腕を組み、唇をアヒルの様にしてナデコは残念そうに唸っていた。

 たぶんやりたい事は間違ってはないとは思う。ただやり方が問題だったのだろう。


「あのな。『お約束』ってのは大事なんだよ。特に時間が無いんだったら、その呪文と結果を覚えさせた方が絶対に良いって。ゲームのレベリングでもしてもらえ。で、ゲームの魔法に慣れてきたら、自分で使えるか試してみる事。いいな?」


「「「「「「はい」」」」」」


 元気があってよろしい。って事でこっちは任せて、兄貴と千影の所に行ってくるか。

 あっちはあっちで、宝珠を渡した後からこそこそと何かやってるっぽいんだよなぁ。

 なんでか知らないけどオリハルコンをくれとか言われたし。

 兄貴達はえーっと……。ラデンさまの所か。

 二人の気配とラデンさまの気配を感じてまずは屋上に飛ぶ。

 屋上には小さな社がある。そしてそれより少し下がった所が屋上庭園になっていて、絶景を眺める事が出来る。

 屋上は人が多い。ここがギルド内の一番の観光スポットだろう。

 イスも設置してあるしテーブルもあるので、店で買った物を食べるという事も出来る。

 もちろんゴミ箱も用意してある。神の社がある場所なので、マナーは良い。

 この辺は日本よりも徹底してるんじゃ無いだろうかって思おう。

 ……実際に祟る神がいたらマナーも良くなるか。

 そんな展望フロアで、いつもニコニコとしながら感動している人間を見ている神がいる。

 キリュー教の神だったり風系や空の神がやってくることもある。

 キリュー教では、トエルさまがとってもお気に入りらしく、ここで良く湯飲みを持って幸せそうにひなたぼっこしながらお客さんを見ている。

 そんなトエルさまを見ると俺の心が和む。

 密かな野望としては猫の信者をゲットして、その膝に丸ませてみたいとか考える。

 いや、膝だと流石に不味いか。横ならOKだろうか?

 あそこだけ日本の縁側にしてみたくなるんだよなぁ。


 さて。野望を新たに心に刻んだ事だし。ラデンさまの所にいくか。

 社の扉をノックし、小さな扉を開けるとラデンさまのために作った亜空間へと飛ぶ。

 スタート地点はラデンさまの教会の入り口。

 兄貴達は……中か。

 中に入ると人影は四つ。


「おう、桐生。来たか。出来上がった所だぞ」


 出来上がった所だぞと言われても、俺は何を作っているか知らないのですが……。

 ラデンさまが嬉しそうに示したのは、少女だった。

 少女の人形……、いや、等身大フィギアか?


「……っていうか、この忙しい時に何やってんの?」


 受付とか売り子とか色々みんな頑張ってるんですけど……。


「忙しいのは分かってたんだけどな。だからこそやってみたかったというか。そのヘルプ要員っていうか。まぁ、実際にすぐには使えないけど。千影、スタートするぞ」

「はい」


 駿兄貴の言葉に千影は肯いて、二人は同時に魔法を発動させた。

 共鳴現象だ。

 そこまで出来るようになってるのか。やっぱりここの世界の人間よりも、日本人の方が適応能力高いな。ナデコの言うように映像での差なのかもしれん。って思っていると少女の指がぴくりと動いた。そして瞼が上がる。


「あ、アンドロイド!?」

「そう」

「イエス。良い出来だろ?」


 イエスじゃないよ兄貴。何を作っちゃってるの、この二人。


「初め、マシテ。キリュー教、アイドル。音葉 セイです」


 おぉお。たどたどしいが、動いた。喋った。ポーズも取った。


「って、セイ?」

「桐生の生まれるを取ってセイ」

「何でだよ……」

「キリュー教で育てるアイドルだからさ」

「ふーん……。ところでこの声って……某ボーカロイド?」

「おう。流石にそこまで時間が無かったからな。外見もそれに合わせようかと思ったんだが、止めた」

「うん。ありがとう」

「外見をあれにしちまうとついついネギを持たせちまいそうになるからな」

「はは……」

「それにしても凄いな。顔とかどうしたの?」

「特殊メイクだな。ビオルマン様に手伝って貰った。細かな動きとかはラデン様に手伝って貰ったりして、実際に泣けるよう作ってある」

「マジで!? すげぇ」

「ただ、感情に関してはなぁ……。ローズベリーさまの手を借りたいのだが……。昨日からあれだし」

「ああ、うん。今は落ち着いてるけど、終わってからが良いと思う」

「俺達もそう思った」


 うんうんとここに居る全員で納得をしあう。

 はっきり言って何で着火するか分かんない。今のローズベリーさまは……。


「さて、これをギルド受付に連れて行って色々情報を蓄積させてみるか」

「スムーズに動けるようになったらヘルプ要員に出来る。あ、職員を減らそうっていうわけではなく、職員の負担を減らそうっていう意味でのヘルプ要員だ」

「ああ、そこらへんは誤解してない大丈夫だ。ところで情報を蓄積って」

「言葉を繰り返したりとかそういうヤツだな」

「……絶対変な言葉教えてきそうな気がするんだがな……」


 冒険者ってやっぱりどうしても男が多いんだけど……。


「素面で、この見た目のやつに、そんな事させてるやつがいるんだったら白い目で見られること間違いなしだな」

「まあそうだろうけど」


 一抹の不安を感じるんだがなぁ……。

 

「桐生居る?」


 止めようかどうしようか迷っているとメリーマムルさまが来た。


「はい。居ますけど?」

「ああ、良かった。あのね、修業時代のお友達がね、久しぶりに会いたいって言ってて、会いに行ってもいいかしら?」

「構いませんが、わざわざ聞きに来るって事は何か問題でも?」

「大手さんなのよぉ~。この国でも割と有名な大地神でね。あ、女神なんだけど。桐生最初大手さんには声をかけなかったでしょ? もうグランドオープン? してるからいいのかなっとは思ったのだけど……」

「あ、はい。構いませんよ。どうぞ。護衛は必要ですか?」

「あら、大丈夫よ。そういう女神じゃないわ。心配しないで。もしかしたらお夕飯は要らないかも知れないのだけど」

「分かりました。ティナには伝えておきます」

「一応連絡した方がいいかしら?」

「そうですね。向こうで食べると分かった時点で知らせて貰えるとありがたいです」

「ええ、分かったわ。ごめんなさいね。こんな忙しい時に」

「大丈夫です、問題ありません」

「……ありがとう」


 お礼と共に、頭を撫でられた。

 子供扱いだ。なのに嬉しいってのはちょっと悲しいような照れくさいような。

 メリーマムルさまが去って行くのを見送ってから、振り返る。


「って、居ないし!」

「ん? 駿達か? あいつらならセイを連れてとっくに受付の方にいったぞ」

「……はぁ……」


 仕方ないか。


「なんかもっと忙しくなりそうな気がしてならないんですがね……」

「暇よりはいいだろう」

「……良いですかね?」

「良いことじゃよ。友達の所に嬉々として遊びに行けるのも、信徒のお願いを聞けるのも」

「……なんか、初孫が出来たじっちゃんばっちゃんみたいですね」

「かっかっかっか。似たようなものかもしれんな」


 俺はのんびりとラデンさまと話をしていた。

 この時、嵐が複数発生し、キリュー教に接近していると知らずに。




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