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神に選ばれた俺は  作者: 瀬田 冬夏
第1章 ギルド
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第11話 始まらない会議


 『朝一に会議を行いたいです』と連絡を送ったら、本当に朝一になった。

「朝食を食べてからの時間帯で全然良かったんですけどね……」

 本来なら会議室でしなきゃいけない会議も、『朝一会議は朝食を食べながらするぞ!』という意見は圧倒的な支持のもと可決され、キリュー教内にあるブッフェレストラン内にて行われる事になった。

 別にいいんだけどさ。良いんだけど。

 

「目的が分かりやすすぎる……」

「いいじゃないか。たまには」


 俺の呟きを聞いて、鍛冶の神が笑いながら皿いっぱいに料理を乗せ、戻ってきた。

 他の神々も、教祖もここぞとばかりに皿に肉を盛り付けている。

 良いんだけど……。

 

「大丈夫ですか? 俺のおごりじゃないですよ?」


 俺のこの一言にみんなの動きが止まって驚愕した顔を向けてきた。

 うん。これぐらいのいたずらは許してもらおう。

 

「冗談ですよ。俺のおごりです」


「お、驚かすんじゃねぇ!!」

「びっくりしたー! びっくりしたー! びっくりしたー!!」


 そんな声があちこちから上がって、結局みんなの心は料理に向かって、会議どころではない。

 これ、みんなが朝ごはん食べるまで無理じゃね?

 ずっと思っていた事をまた思い始める。

 

「あー……桐生。ちょっといいか?」


 俺が頬杖付きながらみんなの様子を見守っているとザクラさまが気まずそうに声をかけてきた。

 

「どうしました?」


 相手は主神なので、席を立ち、ザクラさまの元に向かい、気づく。

 

「……その、とてつもなーく、懐のひろーい、ザクラさまの後ろにいらっしゃる、見慣れぬ子供神はどちらの神々でしょうか?」


 とてもつもなく嫌な予感がして、俺は笑顔という凄みをきかせて尋ねる。ザクラさまの表情が怯んだってことは、まさか、またか!?

 

「あー……そのな。その、もちろん桐生との約束は覚えているわけだが。あー……この子たちは別に騙されたわけじゃなくてだな」

「ザクラさま?」


 セリフにかぶせるように名前を呼ぶと、ザクラさまの顔が明後日を向いた。

 まさか、やはりか!? と思った時、 ザクラさまの顔が俺に向き直った。

 

「桐生! 頼む!! この子たちを引き受けてくれないか!? 間違いなく、この子たち、今のまんまじゃ二百年後天界に帰らなくてはならなくなってしまうんだ!!」

「ザクラさま。今、キリュー教には何柱いましたっけ?」

「大丈夫だ! この子たちは二人で一柱。まだ三十! イケる!!」

「イケルじゃないですよ!!」


 なに親指立てて白い歯が光るような笑顔を見せてるんだよ!

 俺に見せたってなんの意味もねーよ!

 見せるのならそのままこの子たちを引き取ってくれそうな女の人にしろよ!!

 っていうか本当に光ったぞ!? どんな魔法だ!?

 

「だ、だってな! この子たち、昨日下界にきたばっかりなんだが、もうお先真っ暗だとずっと泣きっぱなしのようなんだ。ビャクコの時も思ったが、オレっちはそういうのは見逃せない!」

「見逃せないと言われましても」

「桐生待て! 待て! まずは聞いてくれ!!」

「……」

「この子たち、魔法薬学の神なんだが」


 魔法薬学の神ってことは、ポーション系か。無いな。さらに無い。そっち方面まで手を出すと、自給自足出来すぎて軋轢を生むのが目に見えている。

 

「『魔法薬の成分情報のみ分かる』なんだ」

「……は? つまり?」

「ポーションの中に入っているのは水が何パーセントとか、癒し草が何パーセントとかそういうのしか分からないらしい」

「えーっと……」

「違い……ます……」

「あ、違うの?」


 あ、ちょっと安心した。

 

「水が何パーセント入ってるとか、それすら分かりません……」


 ……さらに悪化した。

 


「「……」」


 俺もザクラさまもしばし無言だったが、ザクラさまの目が俺を見た。


「分かるだろ?」

「……まあ、確かに、難しいでしょうね」

「でもここなら、入れば四人はゲットできるよな?」

「……まあ、救済っていう意味ではうちが一番ですが……」


 ただなぁ……。

 

「お願い……します」

「……お願い、します……」


 双子だと思われる男女の子供神はすっとお金を差し出してきた。

 舐められてるなぁ。準備金なんていらんって。

 ため息を一つ付き、金を受け取らず、ザクラさまを見る。

 

「他の神々には許可はとったんですか?」

「まだ」

「……ザクラさま?」

「いや、桐生が先に相談しろと言っただろう?」

「連れてきてたら意味無いでしょうが!!」


 思わず俺は怒鳴る。

 

「ともかく、まずは他の方々の許可を取る。それが最優先です。あと、許可が出たと仮定の話をしますが。俺は、貴方方にも働いてもらいますよ? いいですか?」

「良い……。働く」

「……良いよ、働く……」

「あとザクラさま。このお二方を迎い入れる入れないに関係なしに、ペナルティーを課します」

「うっ!」

「それでもいいですか?」

「……もちろんだ。この子たちを守れる手段があるのなら、オレっちは頑張るぜ。泣く子供を放置はできないからな!

「「ザクラさん!!」」


 おーおー、キラキラとした目で見つめてるよ。

 

「では。冒険者たちを率いて、隣町に道を作ってきてください。もちろん、依頼料はザクラさまからのポケットマネーでお願いします。あ、もちろん両方の隣町ですからね」

「ちょっ!? 道!? 家じゃないのか!?」

「司るものをさせたら罰則にならないでようが! 大丈夫です。家の壁作るように、道に作ればいいんです」

「全然違うと思うんだが……。オレっちこれで建築と街道の神なんてならないよな……」

「そうですね。そんな噂がたったらそうしましょうか」

「……洒落に聞こえないんだゼ」

「洒落じゃないですから」

「知ってるぜ、もちろん………………」


 そんな事を言って、俺に弱り切った顔をみせていたが、双子神に顔を向けた時にはいつもの元気な顔をさせていた。


「よし! じゃあ、許可を取りにいくぞ! 行くぜ!」

「……おーッ」

「おー……ッ」


 双子神を両腕に座らせるように抱え上げると、他の神々の所へと向かった。

 でもたぶん、誰も反対しないだろうな。また増える事になるのか。

 頭をかいて俺は先ほど席に戻ろうと振り返るとみんなの視線が集まっていた。


「……何か?」

「いや、……許可が下りたら、受け入れるのか?」

「ええ、そうなりますね」

「……お前さんいつもこんな感じで引き受けとるのか?」

「ええ、まあ」

「……人が良いのか、間抜けなのか」

「……人が良いでとどめてください。じゃないと、朝ごはん代払ってもらいますよ」

「分かった分かった。……わしらのような者達だけでなく、あのような子達の面倒をみてくれて深く感謝する」

「……辞めてください。それに今回は仕方がなかったから引き受けましたが、次回似たようなことがありましたら同ジャンルであれば皆様方に割り振るので」

「自分の教会を多神教にっていうところはまだそう多くないぞ?」

「ですが、後輩の神が居なくては、神は大神に至れないというのが俺の推測です」


 神が大事にしている教祖達がそれ阻止する。

 その仮説を俺はここにいる面々にはしている。


「分かっておる」

「キリューの言う事は理解している。そしてそれはきっと正しい。しかし、神々よりも人の子の方が慣れない。時間をかけてゆっくりやっていくしかないよ」

「……それって何年先です?」

「うーむ……一世代は変わらねば無理かもしれぬの」

「…………」


 その間俺がずっと引き受けるとか、ほんと嫌なんですけど……。

 

「そう悲観することもあるまい。『ギルド』がある。冒険者であれ、商人であれ、恩恵を受ければ考えを変えるかもしれぬ。故に、キリューにはギルドを頑張ってもらわねばならぬ」

「商品を回収したと聞く。その行為もまた、冒険者たちに利があるようにという処置なのだろう?」

「補償を手厚くしたのだろう? 今の所それについて悪態をつくものはおらん」


 あちらこちらからそんな声が聞こえた。

 回収し忘れないよう、ギルド内のあちこちにポスター貼ったもんな、関係のないみんなの目にも入ったか。


「ええ、そうです。それらを踏まえた事で今日は皆さんに緊急会議って事で集まってもらったのですが、会議を始めても?」


 喜々として尋ねたら。


『それはご飯を食べてから』

 

 鉄壁とも言えるような拒絶。

 もはや俺を見ようともしない。

 見たらこのままの流れて会議が始まると思っているのかもしれない。

 ……誰も本当にこっちを見ようとしないな……。

 …………俺も朝飯食べよ。

 全員食べ終わるまで絶対に会議が進まないことだけは確信できたので、俺も席を立って朝食を取りに行くことにした。

 

 

 その後。食べ終わる頃にザクラさまがやってきて、みんなからの許可を得たとサインを差し出してきたので、本日めでたく三十柱目になるお二人をキリュー教へと向かい入れる事になった。

 男児神はマジク。女児神はアテム。

 このクジ運の悪すぎるお二人には、第一信徒の権限を使い、魔法薬学だけではなく、普通の薬学の方にも手を伸ばしてもらい、街に売ってる全ての薬を購入、その中身を調査し、記入して貰う事にした。

 割合が分からなくても、もしかしたら特別な何かが入ってて、効果が変わる、なんて事があるかもしれないし。

 そのうち、二人が育ちポーションを作れるようになったらきっとどこかで役に立つはずだ。

 そう説明したのだが、二人はどこか捨てられる子犬のような顔で俺を見上げたあと、何か言いたそうにしていたが、結局何も言わず、買い出しに行った。

 その後ろ姿はやはりなんだか捨てられた子犬のようだった。

 いったいなんだというのか。


「……もしかして、俺が嫌がらせでやらせてると思っているか?」

「と、いうよりも、最終的には重くなるであろう荷物に途方に暮れたのではなくて?」


 だとしたら酷い誤解だと思ったところでかけられたアリスティーさまのお言葉。

 荷物? え、でも荷物って………………って…………。

 ぎぎぎぎぎ、と古いゼンマイ仕掛けのように俺はゆっくりと振り返った。

 

「……」

「持ってないわよ。あの子達。アイテム袋」


 それはそうだろう。

 だって……、主神達へののアイテム袋は、俺がしか作れない。

 でも俺はもちろん作ってないのだから、持ってるはずがないのだ。


「ザクラは早速冒険者たちを募集して道を通すといって出て行ったわ」

「……あ、アリスティーさま……」

「貸し一つでいいかしら?」

「はい……」

「まったく貴男は変な所で抜けているのだから」


 アリスティーさまはため息一つついて立ち去って行った。

 

「ビオルマン、次の講座代わってもらってもいいかしら?」

「いいけど、どうしたの?」

「桐生に用事を頼まれたわ」

「あら、じゃあ、貸し一つね。何を頼もうかしら」


 お、おおう。気づけばビオルマンさまにまで貸しがある状況に……。

 ……うん。ザクラさまが帰ってきたら、もう一仕事してもらおう。

 八つ当たり? 俺にはそんな言葉聞こえない。

 

 


いつもありがとうございます。


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