第10話 ダメ出しされる。
遅くなってすみません。
ブラッキーの剣の整備が終わるとリラーマはレイカさんに向き直り確認を取る。
「火の温度を一定にって出来る?」
「出来ない……って言うわけにはいかないわね……」
リラーマが何をしようとしているか察したのだろう。レイカさんは少し緊張した様子で請け負った。
「キリューさん、これの快適温度ってのは、何度って決まってるのか? それとも任意で変更可能?」
「使用者が汗をかかないくらいってのを自動で認識してる」
「……ランプの光と光の間に空白を作ってそこでなら?」
「……っていうか、今ここで剣を作るの?」
俺、鍛冶の事分かんないけど、そんな事可能なのか?
「そんな上等なものは作れない。ただモンスターの骨を熱すと物によってはモンスターの魔力と混じり合って強く固くなるんだ。ただ、情報がないから作ってみないと分からない。けど、勘から言って、たぶんここのモンスターは作れる」
……このままじゃどのみち攻撃手段がないから、仕方がないかな。
俺もここでリタイアするか聞くつもりだったし、試して貰ってもいいかな?
「炉、作ろうか?」
リラーマにそう声をかけた。
基本的にはレイカさんに温度調節をしてもらうけど、無いよりはあった方がいいだろうって事で炉を作った。
リラーマは温度が分からないっていってランタンを外すというので、俺達はリラーマを守るように位置を移動する。ランタンの光と光の間で、高温の火が揺れ動く。
レイカさんは熱いのは嫌と光の中から杖だけだして温度の調節をしていた。
簡易武器が一つ出来上がる毎に、モンスターを倒す速度が上がる。
それを見て、俺はナデコに指示を出す。
「ナデコ、仮眠取れ。武器が揃ったら出発する。アフゥロゥも眠ってた方がいい。どうせすぐには武器なんて出来上がらないだろうし。あと、移動の時、レイカさん運んでね」
「運ぶ?」
「たぶん、人数分武器作るので一杯一杯だと思う」
「……正解。温度の一定って結構……きつい」
快適な空間に居るがレイカさんの額には汗が浮かんでいた。
それは周りの気温とかではなく、魔力の消費量と精神的な消耗が原因だろう。
たぶん、リラーマも作り終わった時には集中力切れて戦うどころじゃなさげな気がする。
まあ、歩けるだろうし、レイカさんのようにぶっ倒れる事はないだろう。
ひとまずレイカさんの代わりに火炎系魔法で出来る事を探す事にした。
……燃やし尽くすとかだったら簡単なんだろうけどなぁ……。
そんな事を思いながら、俺は思いつく限りの攻撃方法でモンスター達を倒して行く。
口内に火魔法をぶち込むとか、極力損害を無くそうと頭部だけを狙ったりと。試行錯誤を繰り返した。
結論。無理。
いや、ほんと無理。ちょっと難しすぎる。
まず火まみれになったらあいつらのたうち回るし、おかげで周りにまで飛び火する事あるし。いっそ、火災旋風でも作って空気を無くそうって出来ないか? とかも考えたけど、自ら突っ込んできて、丸焼きになるとか……。
一番被害が少なかったのは、口内に火炎を打ち込む事。ただし、絶えず口の中で燃え続けさせる、窒息死を狙ったものだ。
制御が難しい。ぶっちゃけ手練れじゃ無いと無理だ。
うーん。これじゃあ、火炎系魔法使いが厄介者扱いになるなぁ。でも、ただ倒すだけなら火炎系魔法は強力だ。冒険者達のためにも出来ればパーティーに一人は居て欲しい。
……火縄銃みたいな物を作ればいいのかもしれんがあれは危険だよなぁ。なるべくなら作りたくない。
唸りながら悩んでいると最後の武器の作製が終わったらしい。リラーマとレイカさんが地面に倒れ込んだ。
「もう、だめ……」
「はぁ……はぁ……。つ、疲れた……」
そんな言葉と共に二人は意識を手放したらしい。
リラーマは大の字になっていびきまでかいて寝ている。
「お疲れさん」
そう声をかけつつ、預かっていたリラーマのランタンを彼の横に置く。
気づけば、アフゥロゥだけではなく、ホワイトさんも仮眠を取っていたようだ。ブラッキー一人になっていた。
「どんな感じ?」
隣で敵の数を減らしながら俺は尋ねる。
「そうだな。修行にはならんな……」
ん? 何その答え。
俺が訝しんでいるとブラッキーはため息とともにモンスターを一撃で仕留める。
「キリュー。この商品、売るのは止めろ」
「はい!? なんでいきなりそんな答えになるの!?」
「まず第一に。人が育たない。第二に。実力をはき違える危険性が高い。第三に。運悪く奥まで来て、同様の状況下になった場合、時間切れで死ぬ確率が高い」
「……確かに、今回のように鍛冶士と火炎魔術師が同じパーティーに居るって確率は低いとは思うけど」
「……なんでこの商品を作ったんだ?」
「ダンジョンで寝泊まりしてるパーティーが多いって聞いて。三時間くらいを無理矢理眠るならって思ってさ。起きた時に周りがモンスターだらけだと危険だからこちらから倒せるようにした」
「……これを持って移動出来るようにしたのは?」
「安全のために十二時間設定にしたんだけど、使い切りタイプだし、残りの時間がもったいないなって思ったから」
「……お前が俺達のためにこれを作ったのは認める。安全に眠れるのはありがたい。トレインの時にこれがあったら便利だろう。でもこの状況下はやばい」
「……うん」
怒るでもなく、淡々と言うその言葉がかえって染みる。
ブラッキーはブラッキーで、俺の考えを理解した上で、冒険者達の安全のためにそう言っているのだ。
「完全に固定式か、もしくはトイレキーの様に、宿泊施設に跳ぶようにしろ」
「……うん。ごめん。ありがとう」
「……チッ。簡単に謝るな。嘗められるぞ」
「その場合はそいつが偉い目に遭うと思うよ」
「…………それはそうだな」
軽口を返すと、なんだか凄く納得したようだ。
「とりあえず、ランタンの販売は今すぐ中止する」
回収する事も視野に入れた方がいいかもな。
そう思いながらメールを打ち、スタッフ達に送る。
「はー……なんかへこたれる」
「……お前が落ち込む基準が毎回のことだが、よく分からん」
俺は苦笑を返した後、空を見上げる。
「トレインの時はやっぱりこういうのあった方がいい?」
「それはあった方がいいが……。こんだけ楽だと、普段からダンジョンに潜るのがばからしくなるな」
「でもトレインの後ってかなり安くで買いたたかれるって聞いたけど?」
「狩人ならな」
「……でした」
冒険者はアイテム袋があるから腐る心配とかないもんな……。
「冒険者の多くは値段が正常値に戻った後に売り出すと思うぞ」
「だよね……」
「あー……でもそうすると、固定式のやつでも駄目か。って事は宿泊施設考えるしかないかな」
モンスターの値段が安くなりすぎるのも困るのだ。
命かかってるんだし。
「……でもうちの宿泊施設、人気が無いのか、誰も使おうとしないんだよね……」
「五ポイントや十ポイント消費して泊まろうって言う気はないな」
「……一応、ゴルドーでも泊めれるようにしてるんだけど……」
「阿呆か。一泊二千七百ゴルドーもするようなもん、誰が泊まるか」
「そっちはご飯ついてないからオススメはもう一個上のランクだよ」
「ぼったくりだろ。そんなトコに泊まるなら他の所に泊まるに決まってるだろ」
「……まあそうなんだけどね」
「そもそも、みんな住んでる所があるんだ。宿泊なんてそうそうしないに決まってるだろ」
「デートとか、お泊まりとか、色々あるじゃない!?」
「……余計にないな。そんなのにそれだけ金を払うのなら、装飾品に金を払った方が機嫌が取れるだろ」
「おふっ……」
やべぇ、反論の余地がねぇ……。
「でも、流れるプールとか、フィットネスとか、大浴場とか色々あるんだぜ」
フィットネスと大浴場は職員にも開放してるのでわりと好評だ。なんせうちの賄い、ブッフェだからな。太る言うて、みんな自主的に運動し始めてるんだ。その後のお風呂はサイコーっと……と好評はあるんだが、中々冒険者には広まらない。流れるプールに関しては、今、誰も使ってないので、時間魔法で凍結中……。
人手が足りないのでしばらくは凍結中でも構わないのだが……。
「大浴場って、今でも冒険者は無料で使えるだろ」
「え? いや、使えないよ。冒険者が使えるのは岩盤浴とシャワーのみだろ?」
「……それが大浴場じゃ無いのか?」
驚いた様に顔を向けてまで尋ね返してきたブラッキーに俺の方が驚く。
「げっ! もしかしてみんなあれが大浴場だと思ってたのかよ!?」
「……たぶん、そうだと思うぞ」
驚きおののく俺にブラッキーは小さく頷き、またモンスターを倒し始める。
「違うのか?」
「全然違う。一番違うのは浴槽がある。お湯をためてその中に体をいれてつかるんだ」
「……それはシャワーよりも贅沢なのか?」
「贅沢じゃないか? 大浴場のお湯は真水もあるが、温泉水だっていっぱいあるぞ」
なんせ、地熱の女神ツチノさまがいらっしゃるからな。複合したら欲しかった温泉水がゲット出来た。
「オンセンスイ?」
「体に良いお湯だよ。地面の熱で暖められた水だと思ってくればいいかな」
「ああ……お前の所、そういう女神居たな」
「おう。居るよ」
「たしか、ツチノだったか?」
「そ。覚えててくれて嬉しいよ」
「……ポイントは欲しいからな。毎日、ポイントが入るクイズゲームはする」
「そかそか」
おかげで神さま達の力も少しずつ上がってきてるらしくてありがたいよ。
……それに関しては冒険者だけじゃないとはみんな思ってるみたいだけど……。
「じゃあ、さ。トイレキーみたいに、宿泊施設に跳べて、そこで武器の整備やアイテムなどの購入が出来、ご飯も食べれるってなったらブラッキーはいくらだす?」
「あー……それだったらお前の所のあの値段でも納得出来るな」
「そっか」
その時点でやっとか……。でもこれってあれだよな、ダンジョンの上り下りの時間の短縮と、待っている間の時間が無いって言う事を踏まえて、だよな。って、事はヘタにセーブポイントを作ってダンジョンの出入りが自由になるとこの商品も売れなくなる。むしろ、ダンジョン価格で設定して、新しい施設を作った方がいいな。
スタッフもこの街の人間じゃなくて他の村の人間やいっそ他の国の人間の方がいいのかもしれない。
武器の整備だけが素人ってわけにはいかないか。
いや、受付だけを行って整備はギルド登録の教会にやって貰えればいいのか。
そうすると鍛冶の人手が足りないよな……。
いっそ派遣社員の様にやってみるか? 十人とか二十人とか雇って、あわなかったら辞めて貰って、合うようだったらそのまま、教会に入るかどうかは本人に決めて貰って……。
あ、酒作りでもそれはやってもいいかもしれないな。
果実の神ん所も今の人数じゃ、出せる果実にも限界はあるだろうし。
「うん、分かったありがとう」
よし、これで行ってみよう。そうしよう。
「……なんかお前また非常識なこと考えてたりしてないか?」
「してないよ。何でもかんでもそう決めつけるのは止めろよな」
「なら良いんだが」
信じてない様子だが、そこから先は教会の経営にかかわる事だからか、聞いてこなかった。
「とりあえず、下層へ向かうクエストはこの階で終わりって事にする」
「……ああ」
「一応、上まで送る。で、俺の代わりにナデコ置いていくから俺いったんパーティー抜ける」
「ああ、分かった」
一応、今は緊急、指定クエの関係で俺がリーダーやってるけど、それが終わったらブラッキーがリーダーだからな。
あーあ……。なんか、へこむなぁ。一生懸命頑張って作ったのに……。
粗悪品だっていうわけじゃないからいいけどさ……。
その後、ランタンを回収するために俺はダンジョン内を歩くことに。
今回のトレイン中は仕方が無いので必要数は残していく事にし、残った場合はギルドに持ってきて貰う事にする。
補填としてゴルドーかギルドポイントを支払う。どちらも若干高めに設定し、回収し損ねることを無くすようにした。
現時点ではみんなポイントだった。
これで何名かはアイテム袋の枠を開けることも出来た。そのせいか文句も無かった。むしろ、ウハウハだ。と笑っていたぐらいだ。実際、俺がさっきランタンを売りつけたやつらなんて、ほんの数時間で倍の価値になって返ってきたわけだからな。
笑いも止まらないだろう。
アイテム枠なんて百個あろうが二百個あろうが足りなくなるわけだから、一つ二つ枠が開いたって問題ないっちゃー、問題ないのだが。
「大損だったな~」
そう唸りたくなる気持ちだけは抑えきれなかった。
評価ブクマありがとうございます。
これからも頑張っていきますのでどうぞよろしくお願いします。




