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神に選ばれた俺は  作者: 瀬田 冬夏
第1章 ギルド
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第8話 祭りの始まり_8

もうストックがないので、出来上がり次第の更新となってます。


「あのなぁ、ナデシコ嬢ちゃん。普通に考えて遠く離れた信徒の居場所が分かるなんて、そんな事、神でもなきゃ出来るわけないだろ?」

「えー!」

 アフゥロゥの言葉にナデシコは不服そうに見上げる。

「そうですよ撫子さん、教会内ならともかく、こんなところで出来るはずないじゃないですか」

 ラックがみんなの意見を後押しするように言うが、ラックの言葉に一部引っかかりを覚えた面々がラックを見た。その視線に気づかない二人は会話を繰り広げる。

「なんでー? 教会内で出来るのなら、外で出来ても可笑しくないじゃん」

「教会内なら神の力が満ちているから出来るだけで、外ではできませんって」

「出来るって! あたしそれでこっちにきたもの!」

「……そうなんですか?」

「そうだよ! じゃなきゃ、こんなすぐにここに来られるわけないじゃん!」

「それは……そうですが……」

 言葉に力がなくなっていく。視線が落ち、頭を落とす。

 力で言えば自分の方が強いのに、使いこなせていなくて才能の差を感じる。

 悔しさよりも情けなさの方が強い。

 そのラックの両肩を、リラーマが捕まえた。

「ラックくんや」

「はい?」

 振り返るといささか難しい顔があった。

「ラックくんは教会内だったら、同じ信徒の人がどこにいるのか分かるのかな?」

 どこか諭すように尋ねてくるリラーマに首を傾げながらラックは頷いた。

「はい、分かります」

「……あのな、普通、自分の教会内でも、信徒同士って分からないんだよ」

「そうなんですか?」

「そうだよ。安心しろお前もばっちり、キリュー教徒だ」

「はぁ……」

 キリュー教徒という言葉の使い方がおかしい気がするが、その反面正しい気もする。

 そんな折り、階段の方から声がかかる。

「あれ? ナデコじゃん。もう帰ってきたのか?」

 桐生だった。



 *  *


 俺がランタン販売もそこそこに戻ってくると、ナデコが居た。どうやら噂に聞く『トレイン』を体験しにきたのだろう。

 教会大丈夫かな。って思ったが、何かあったらトキアカさま辺りが知らせにきてくれるだろう。ティナさんはいるだろうし。

「あ、先輩こんばんはー。帰ってきましたよー。ご飯もばっちり食べてきました! 宿題も終わらせてきましたから土日はばっちりここに居られます!」

「そうか。そいつは丁度良かった」

「何かあったんですか?」

「いやな、上でランタン売ってきたら、これって、何階層まで大丈夫なんだ? って言われてさ。そういやチェックしてなかったなって思って。今から性能チェックしに行こうかと」

「いまからかよ!?」

 アフゥロゥが呆れと驚きを交えて声を上げる。

「おう。今からだよ。ってなわけで、アフゥロゥとリラーマとレイカさんとブラッキーとホワイトさんには指名で緊急クエスト出すんで受けてくれない?」

 特殊な紙とペンを取り出し、手書きだが、依頼書を書いていく。

「構わねぇが……、選考基準はなんだ?」

「戦闘技術がどれだけあるか俺が把握してる人。あとは戦闘スタイルをバラバラにしつつ、かつパーティーとして組ませた時にまとまってる事、かな?」

 前衛・中衛・後衛と程よいバランスだろう。それになにより。

「あとはお得意様って事も加味してる」

「あら、それは嬉しいわ」

 レイカさんが笑う。俺、レイカさんの事あんまり知らなかったんだけど、ラックはきちんと知ってた。っていうか後で聞いて知ったが、俺も後ろ姿ならよく見たことあった。ビオルマンさまのところでいつも熱心に化粧講座を聴いてるお姉さんだった。後ろ姿はよく見てた。毎回、髪型とか洋服とか違うからおしゃれな人なんだなぁとは思ってたけど、顔きちんとチェックしてなかったから全然気づかなかったよ。

 ラック曰く、アリスティーさまとも良く話をしているらしい。

間違いなく、ビオルマンさまとアリスティーさまのお気に入りの冒険者だろう。

 今日見ていた限り戦闘にも問題なさそうなので、指名入り。

「クエスト的にはとりあえず、最速で最下層に向かう感じで。で、そこでランタンを試してみようかと」

「お前、それで壊れたらどうする気だ?」

「即転移貴石で逃げる!」

「……あのな、キリュー。そういうのは、無謀っつーんだよ」

 ブラッキーが俺のこめかみをギリギリと押し込んでいく。

「ブラッキー! それなりに痛い!」

「なんでそれなりなんだよ! 本気でやってんのに!」

「本気なのかよっ!」

 酷くね!?

「どの道最速ってのが難しいよ。なんせ、トレイン中だから。下はモンスターが溢れかえってるし。限界が来たらその過程で分かるっしょ」

 リラーマがそう言って肩をすくめた。

「それもそうだねぇ。じゃあ、そういう事でいいかな?」

「それで、報酬は?」

「あー……そこなんだよねぇ難しいの。なんせどこまで行くかも分からないし」

 首の後ろをかいてしばし悩む。

「んー……。ゴルドー無しの現物支給でいい?」

「現物支給って、戦ったモンスター達の事か?」

「それはもともと倒した奴のだろ。そうじゃなくて」

 とりあえず俺は伝説級と言われたマントを五枚、取り出すフリして作る。それからバリアブレスレットを十個。安眠・快適ランタンを十個。身代わり人形を十個、飲み水のマジックカードを五十枚。照明魔法のマジックカードも二十枚。よくばりプレート(中身はどちらかというとお子様ランチ)のマジックカードを二十枚。ついでにこんなにマジックカード渡して、ケースを持ってなかったら大変なので、それもおまけにつける。そして緊急脱出用に転移貴石を五十個。それらを均等にわけ、最後にと、五人に冒険者袋を取り出して貰い、そのアイテム枠を二十個増やす。

「これで良し。文句ないだろ?」

 五人は首を何度も縦に振る。それはそうだ。マントはうちの目玉商品だ。

 設定価格は日本円にして、三千五百億円

 一応ポイント交換も出来るが、三億五千万ポイントが必要なので、ぶっちゃけて交換は非現実的。それよりもマジックカードを買い占める勢いでやった方が遙かに早い設定である。

 蛇足ではあるが、俺達が来ている洋服は、あれから改良を加えたおかげで、真面目に神話級。トエルさまも流石にこれは伝説級には無理とある意味諦めて太鼓判を押してくれたもので、値段が付けられないものとなっている。俺達だけでなく、神さま達は今はこの布を使った服を身につけていらっしゃるので、危害を加えるって事はまず無理だろう。なのでキリュー教の神々はかなり自由に歩き回っていると噂があるくらいらしい。本当かどうかは知らないけど。

 さて、後は残ったみんなにもフォローしなきゃな。

「人手減った詫びにみんなのアイテム枠、二枠開けようと思うんだけど、それで許してくれるか?」

 そう尋ねるとみんな勢いよく頷いてくれた。良かった良かった。

 全員のアイテム枠を開け、アフゥロゥ達が他のパーティーメンバーに指示を出し終えるのを待ってから、俺達はみんなと別れてさらなる下層に向けてランタンの光の外から出る。

「んじゃ、これ、一人一個ずつ持って」

 下層への道は俺が分かるので、先導を歩きつつ報酬とは別のランタンを渡す。

「一人一個ずつなのか?」

「複数を同時に使った場合の状況も知りたいからね」

 理由を告げるとみんなも素直に受け取って手に持ったり腰に下げたりしていた。光の範囲はだいたい、両手を伸ばした先よりもちょっと広いくらいの範囲だ。

 光同士が重なっても反発するような感じは無い。

 味方同士だもんな。反発するような事はないか。

「良し、ブラッキー! ちょっと一発、俺の腕を切るつもりで攻撃してみて」

「良し承ろう」

 そこは即答かい! って突っ込む間すらなくブラッキーは体勢を低くし、剣を抜こうとした瞬間、ランタンの光の膜同士がぶつかり合い押し合う。

「なるほど、こうなるのか」

「みたい、だなっ!」

 同意しながらも、ブラッキーは剣を一振り。

 剣はすぐさま弾かれるのではなく、風船を押したような感じでめり込んで弾かれた。

「レイカさん、魔法もお願いしても良いですか?」

「……ああ、なんて気持ちいいのかしら。素敵。滑らかな肌触りといい、美しい光沢と良い」

 あ……、マントにトリップ中だった。

「レ、レイカさーん」

 戻ってきてくださーい。

「うふふふふ。うふふふふ。うふふふふふふふ」

「れ、れいか……さん……?」

「え? 呼んだ?」

「呼びました!」

 良かった戻ってきてくれた!

「ちょっとランタンの性能を調べたいので、炎の魔法を放って貰ってもいいですか?」

「ええ、分かったわ」

 うっとりとした顔で放ってきた火炎魔法は、極悪な炎の塊だった!

「ちょっ!」

 我先にとみんなは俺の周りから飛び退く。俺自身も一瞬逃げたくなったがそこは必死に堪えた。

 炎は互いのランタンの光の中で放たれた。

 轟音と共に熱風が通路を焼く。周りの土がガラス片になってキラキラとしていた。

「…………びっくりしました」

「「「「「それはこっちのセリフだ!」」」」」

 レイカさんの言葉に俺達は思い思いの言葉でそう叫んだ。

「まさか、最大級魔法を使うなんて思ってませんでしたけど、俺の事恨んでます!?」

「まさか! とんでもない! 感謝してます!」

「その結果があれか~」

 リラーマの言葉に俺はうんうん頷く。

「ごめんなさい。ちょっと、うっとりしすぎてて、つい力が入ってしまって」

 恥ずかしそうにレイカさんは言う。

「……面白い結果にはなったがな」

 アフゥロゥの言葉に俺も頷く。

 ランタンは瞬時に結界の範囲を狭めて炎を逃してた。

 言っては何だが、俺の想像以上の高性能である。

「あれだけの魔法だったら熱風も凄いけど、それも感じなのね、これ」

 ホワイトさんの言葉に俺も頷く。

「快適でしょ?」

「……快適過ぎて怖いんだけど……」

 ホワイトさんが何故か頭を振りながらそんな事を言ってたよ。

「夏場とか売れそうですよね、これ」

「ああ、いいな。クーラー代わりに売るか」

 ナデコの言葉に俺も頷く。

「クーラー代わりなら結界要らないですよ。その系統を無くして安くで売りません?」

「結界によって周りの空気を遮断して熱がこないって構造だからな。結界自体は必要」

「あー。そうなんですね。でもここまでの防御力は必要ないですよね?」

「一般家庭で使うなら必要ないな」

「無いですよねー」

「ホッカイロみたいに貼るか? 洋服とか肌とかに」

 あ、あれは直接肌に貼っちゃ駄目だったか?

「その部分だけ冷たくなりそうで嫌ですよ」

「そこはあれだよ、体にうすーい結界を張るとか色々あるだろ? あと、家庭用ってーなら、使い捨てってわけにもいかないからそこも手直しだな。これは一度起動すると十二時間使いっぱなしだ」

「オンオフの切り替えですか~。……あ、先輩。まんま室内照明に切り替えるのはどうです?」

「室内照明? 蛍光灯みたいなやつか?」

「天井にペタって張るような感じの、上からぶら下がってないタイプの照明」

「……いや、別にそれはぶら下がっててもいいんじゃないか? まあ、それなら形を変えて、防御結界の魔力式をスイッチ切り替えと温度設定にすれば……やれるかなぁ」

 そんな会話をしながら歩いているといると、後ろから静かに声がかかった。

「なぁ、キリューさんよ。お前達っていつもそんなノリで魔道具作ってるのか?」

「そうだけど」

 アフゥロゥの言葉に頷く。

「言葉の一部は意味が分からなかったが、一つだけ理解したこともあった」

 何? と俺は視線で続きを問いかける。

「キリュー教がやたらめったら新商品を作り続ける事と、大々的に宣伝しない理由だ」

「……宣伝してないっけ?」

 ギルドでは一応、新商品ですって言ってポップ作ってあるけどな。

「ああ、お前らって、子供が遊び道具作る感覚で、商品作ってるんだな……」

 そう疲れ切ったようにいって盛大にため息をつかれた。

「あれ? 俺ら、そんなノリで作ってる?」

 そんなつもり全然無いんだけど。

「自前で出来るからって、お前ら、予算とか費用とか全然考えてないだろ」

「……考えてないね」

 あー……、それ、そういや、駿兄貴からも言われたなぁ。

 性能と販売価格を釣り合うようにきちんと考えろって……。

 ……学生には難しいって。特に自前で全部揃うってなるとさ……。





いつもありがとうございます。これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします。

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