第0056撃「彼女らは自転車であらわれる!!」の巻
平成3年1991年、9月、中学3年の2学期。
夏休みが明けて、新学期が始まりました。
長年、連れ立って登校していた多坂(仮名)とは絶交状態が続いていたので、
小生は無心で一人、あるいは日によっては甲村(仮名)と共に学校へ向かっていました。
仲間たちと笑いながら歩く生徒、うつむいて歩いている生徒、
それぞれの在校生らがぞろぞろと同じ方向へ歩いてゆく朝。
小生にとって通学するのは憂鬱でした。
おとなになったらなったで、虚ろな顔をして会社へ向かうのだろうか。
通学も通勤も、結局は生き地獄だな――と、小生は思いました。
そんなとき。
背後からベルを鳴らして、車道側をすいすいと走ってくる自転車が現れました。
女子が二人乗りをしていました。
木原綾菜(仮名)と、瀬田清子(仮名)です。
芝中では、自転車通学は禁止されていました。
しかし、彼女らは指折りのヤンキーとして名を馳せており、
教師から常に叱られていましたが、どこ吹く風。
お構いなしの、へっちゃらです。
小生が心配するのは、むしろ別のことにありました。
小生だって自転車を持っています。
自宅そばの階段を降りてすぐの駐輪場に停めてあります。
けれども、もし登校のために乗って行ったら――
授業中、その自転車をどこに置けばよいのでしょうか。
学校の外壁に立て掛けておく?
誰かに盗まれたり、ぐしゃぐしゃに潰されたりはしまいか。
近くのマンションの狭い駐輪場に、
黙ってそっと停めておく?
だが、管理人に見つかって撤去され、
わけのわからぬ場所へ移動されるのではないか。
――自転車通学とは、あまりにリスクが高いものだ。
「夢野ー!」
追い抜きざまに声をかけてくる彼女らは、
小生の細やかな心配など、どこ吹く風。
甲村は瀬田のことが好きと言っておりました。
初秋のまだ強い朝の陽射しを浴びながら、
颯爽と自転車を漕いで、校舎の方へ消えてゆくのでした。
その頃、街で流れていたのは、
大事MANブラザーズバンドの『それが大事』でありました。
その歌声を耳にすると、不思議と胸の底から元氣が湧いてくるものです。
いても立ってもいられず、
小生は泡嶋商店街のレコード店『エコーズ』へ、
小走りに駆けてゆきました。
店頭に並ぶシングルCDを手にとれば、赤色のパッケージがひときわ鮮やかで、
その右下に控えめに写る、キーボード担当の吉田理恵の姿に目が留まりました。
涼やかな笑顔に、妙に心をさらわれたのであります。
縦長のシングルCDを守るために、
その場で透明のプラスチックケースも買い求めました。
帰宅すると、小生はそのCDをそっとケースに収め、
まるで大切な宝物でも扱うかのように指先で撫でてみたりしたものです。
ラジカセにかけ、リピート再生を繰り返しながら、
ケース越しに赤いパッケージを眺めては、
ひとりでうっとりと心を遊ばせておりました。
音楽と映像とが、胸の奥で密やかに溶け合う――
そんな贅沢な時間でありました。
大事MANブラザーズバンド「それが大事」(1991年)
YouTubeで視聴する https://youtu.be/i-4in14x5y0?si=klYERZR8TC2XQVGR
Spotifyで聴く https://open.spotify.com/track/7Lm5hfy1qm0pZRVfViAjKE?si=48Nc5fb-TFCQ3gJ3UbUxWg
続く。果てしなく続く……。
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