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紅炎戦記  作者: えみり


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氷、暴走

空が割れる。


王の雷が収束する。


終焉級の一撃。


避け場はない。


セラフィナが立とうとする。


足が震える。


間に合わない。


グレイスの視界に映る。


倒れたリシェル。


血。


動かない。


そして――


レオルの笑顔。


「お前と出会えて良かった」


脳裏に焼き付く。


守れなかった。


また守れないのか。


胸が軋む。


何かが切れる。


「……違う」


王の雷が落ちる直前。


空気が凍る。


音が消える。


時間が遅くなる。


グレイスの氷輪が異常回転を始める。


青を超え、


白へ。


白を超え、


透明へ。


「グレイス……?」


セラフィナが息を呑む。


王――

テンペスト・グラード

が、初めて目を細める。


「これは……」


雷が落ちる。


だが、届かない。


落下途中で停止する。


凍結。


空中静止。


王の雷そのものが凍りつく。


重力が逆転する。


地面から氷柱が噴き上がる。


王を囲む。


空気中の水分が瞬時に氷刃へ変換される。


無数。


嵐のように王へ殺到。


王が雷鎧を展開。


弾く。


だが完全には弾けない。


頬が裂ける。


血。


王が初めて後退する。


「……面白い」


グレイスは俯いたまま。


瞳が光っていない。


感情が削ぎ落ちている。


冷たい。


凍てつく殺意。


セラフィナが気づく。


「違う……これ、共鳴じゃない」


制御がない。


暴走。


氷が地面を覆い尽くす。


兵士たちが凍りつく寸前でセラフィナが炎で守る。


「止まって、グレイス!」


届かない。


王が踏み込む。


雷と植物が同時に展開。


だが足元が瞬時に凍結。


動きが鈍る。


氷が王の腕を拘束。


雷で破壊。


だが次の瞬間、再生成。


速度が異常。


王が紫雷を一点集中。


超高熱放電。


氷が蒸発。


だが蒸気さえ凍る。


王が笑う。


「これが第三覚醒の先か」


グレイスが顔を上げる。


瞳は虚無。


王へ一歩。


その一歩で地面が完全凍結。


王の足元が凍る。


氷の槍が胸を狙う。


王が避ける。


頬に傷。


「良い」


だが。


氷が広がりすぎる。


王都の外壁まで凍り始める。


兵士が凍傷を負う。


セラフィナが叫ぶ。


「やめて!!」


炎で溶かす。


だが追いつかない。


グレイスは止まらない。


王を殺すまで。


世界が壊れても。


王が腕を振る。


超高密度雷撃。


真正面から激突。


氷と雷が拮抗。


爆発。


視界が白に染まる。


土煙。


氷霧。


静寂。


王は立っている。


鎧がひび割れている。


だが立っている。


グレイスも立っている。


だが。


氷輪が不安定に歪む。


制御不能。


セラフィナが走る。


抱き締める。


「戻ってきて!!」


その瞬間。


氷が揺らぐ。


王が静かに構える。


「次で終わらせる」


雷が収束する。


暴走は強い。


だが不安定。


このままでは――


次で潰される。

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